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楽しい宴の最中、今度は子供達の歌やダンスが始まった。

子供達はグループごとに出し物を披露していく。この日の為に皆一生懸命練習したようだ。


サンタ役の若手三人はすっかり人気者となり、前の方へ引っ張られていき最前列で演目を見ていた。

気付くと一樹とヤスの膝の上には、幼稚園に通う男児と女児がちょこんと座っている。

そのあまりにも意外な組み合わせが可笑しくて、南は笑いながら写真を撮っていた。


楓はチラリと男児を抱えている一樹を盗み見る。すると一樹は膝の上にいる男児と会話をしたり、演目を披露する子供達に拍手を送ったりと忙しそうだ。時折子供に微笑みかける一樹の笑顔は、楓が今までに見た事のない素敵な笑顔だった。

そんな一樹の新しい一面を見た楓は、心の中がじんわりとあたたかくなっていくのを感じていた。



その時、栄子が園に到着した。



「こんばんは! お母さんご無沙汰でーす」

「栄子? うわーなんだか随分綺麗になっちゃって……別人みたいじゃないの」

「アハハ、お母さんそれは言い過ぎ! あ、楓も来てるー」

「栄子さんいらっしゃい」

「栄子の席はそこよ、座って」

「はーい、お邪魔しまーす。あ、楓、こちらが例の?」



そこで楓は皆に栄子を紹介した。



「彼女は立花栄子さんです。で、こちらが今一緒に住んでいる社長の東条さん、その隣が同じ会社のヤスさんと南さんです」

「初めまして、東条です」

「こんばんは、ヤスです」

「初めましてー、南です」

「栄子です。今日は園のお手伝いをありがとうございました。それと東条さんには良の事で色々とご迷惑をおかけして本当にすみません」

「いえ、お気になさらずに。ところで彼は一緒じゃないんですか?」

「はい。実はそこまで一緒に来たんですけど、まだここには来られないって……。だから近くのファミレスで待たせてあります」

「え? 良も来てるの?」



景子が急に反応する。



「うん」

「何で一緒に来ないの? 水臭いわねぇ、近くまで来てるのに?」

「それがちょっと色々あってさ」

「色々って何よ」

「楓とちょっとね。ね? 楓?」

「……うん」

「やぁねぇ、兄弟喧嘩? いい歳して何やってんだか」

「うん……でも今日お兄ちゃんが私に謝りたいんだって。だから後で会ってきちんと話してみる」

「まったく良は何やってんだか……。わかったわ、また落ち着いたら顔を出すように言っといてちょうだい」

「うん、わかった」



その後クリスマスパーティーは無事に終了した。



子供達が部屋へ戻ると、大人達は一斉に片付けを始めた。

人手は充分だったのであっという間に終わった。


そこで今日大活躍したサンタ役の若手三人組が一足先に帰ることにした。

帰り際、景子は綺麗にラッピングされたクリスマスプレゼントを一人一人に手渡す。



「これね、マフラーなんだけどよかったら使って」



その言葉に三人は驚く。



「俺、今までクリスマスプレゼントなんてもらった事ないです」

「俺も」

「超嬉しいっす! 大切にしますっ!!!」



感激した三人は、笑顔で景子に礼を言うと玄関へ向かった。

その後を一樹が追いかける。



「今日はご苦労だったな」



一樹はそう言って一人一人に封筒を渡した。封筒には一万円札が何枚か入っているようだ。



「社長っ! お金はいりませんっ! バイトで来た訳じゃないですから!」

「そうっすよ。俺達もたまには誰かの役に立ちたいって思ったから来ただけです」

「そうです! だから受け取れません」



三人は口を揃えて言う。

しかし一樹は低く落ち着いた声で三人に言った。



「これはバイト代なんかじゃねぇぞ。これは俺からのクリスマスプレゼントだ。だから遠慮しないで受け取れ」



三人はびっくりして顔を見合わせると、急に嬉しそうな表情になる。



「「「あざーっす!!!」」」



そして三人は先に家路についた。




一樹が食堂へ戻ると、残りの四人も景子からのクリスマスプレゼントを受け取っていた。

そして景子は最後に一樹にもプレゼントを渡した。



「私にもですか?」

「ええ。大した物じゃないけどほんの気持ちです。メリークリスマス」



一樹は恐縮しながら景子からのプレゼントを受け取る。



「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」



すると今度は楓と栄子がプレゼントを持って来て景子に渡した。



「メリークリスマス! これは私達からよ」

「お母さんに似合いそうなのを見つけたの」



プレゼントを受け取った景子はかなり驚いていた。まさか自分がプレゼントをもらえるとは思っていなかったのだろう。

心なしか景子の瞳は涙で潤んでいる。



「ああびっくり! サプライズじゃない? でも嬉しいわ、ありがとう」

「お母さん、開けてみて」

「お母さんの好きな色のセーターなの」



景子はすぐに包みを開ける。

すると箱の中には綺麗なラベンダー色のセーターが入っていた。



「まあ素敵!」

「その色好きでしょう?」

「ええ、大好きよ」

「お母さん絶対似合うわ!」

「ありがとう。本当にありがとう。母さん嬉しくて涙が出ちゃうわ」



景子はフフッと笑いながら指で涙を拭った。



その後五人は美空愛育園を後にした。

ヤスと南は先に車で帰って行った。


一樹と楓と栄子は、そのまま良が待っている近くのファミレスへ向かって歩き始めた。

【ショートドラマ原作】心恋 ~uragoi~

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