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──桜が散って4月が終わり、もう5月も中旬に入ろうかというときにそいつは俺の横のベッドにやってきた。
東野 晴(ひがしの はる)だ。中学校は一緒だったが、直接話したのは授業の一環での話し合い活動のみでほとんど面識はない。というか、俺とは真反対の生活をしていて、とてもではないがあの才能まみれの東野と話そうとは思えなかったというのが本音だ。
病室に東野が入ってきた当初は
(いくら才能があっても事故には遭うんだな~まぁ俺とは違って友達もいるだろうし、見舞いにも誰か来るんだろうな〜)
と思うくらいでほぼ気にも止めなかった。当然といえば当然だろう。なんせほぼ面識がないのだから。
しかし、東野が目を覚まして、医者との会話を聞いていると、どうやらただ事ではないようだった。どうやら東野の周りの人に関する記憶が全部ぶっ飛んでるらしい。しかも見つかったのがトイレとかいじめの可能性も無くはないのでは?となると他人事ではなくなってくる。もっとも、あくまで想像の域を出ないのだが……。
しかし、それが合っていたとして、俺が何かできることはあるのだろうか?まぁ無理だろう。なんせ自分のことさえ満足に解決することもできないのだ。おまけに自分の周りにいた人を忘れているときた。俺ならいきなり知らない人に踏み込んだ話を聞かれるのはまっぴらごめんだ。
「どうしたもんかなぁ~」
まともに自分のことさえ考えられない俺は、そうして東野のことを考えていたのだった。