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「あ、うん。陽向くんがすぐに来てくれたから」
「そうですか。それなら良かったです」
安堵したように息を吐く朝陽だけど、陽向は納得していない様子だった。
「でもさ、おかしくないか?」
「……そうだな」
陽向の言葉に朝陽は考え込む。
「いつも俺が迎えに行く日はそんなことないんだ。それなのに俺が行かない日に限って亜佑美さんに声を掛けるって……偶然にしてはちょっと気になるよな」
「だろ?」
陽向はソファーから身を乗り出した。
「証拠はねぇけどさ、ストーカーって絶対そいつなんじゃねぇの? 何とかならねぇの?」
「うーん……っていうかそもそも俺、その男がどんな人なのか分からないんだよな」
「そういえば、そうだよね」
「名前って分かります?」
「ごめん、私は直接関わりがあるわけじゃないから名前までは知らなくて……」
そう言いかけて亜佑美は少し考え込んだあと、ふと思い出したように顔を上げ、
「あ、でも同期に営業の人がいるから聞けば分かるかも。ちょっと聞いてみるね」
そう言って亜佑美はスマートフォンを手に取った。
その瞬間朝陽の脳裏に一人の男の顔が浮かんだ。
以前亜佑美を迎えに行った際、彼女と並んで職場から出てきた男。
正直なところ朝陽としては、その男と亜佑美がプライベートで連絡を取り合うことなど考えたくもなかったけれど、今はそれよりもストーカーの正体を突き止めることが先だと納得して余計な感情は胸の奥に押し込めた。
暫くすると、
「あ、返信来たよ」
画面を確認した亜佑美がその名前を読み上げる。
「田仲 響さん、だって」
その瞬間、
「田仲、響さん……?」
朝陽が呟くように名前を復唱し、何かに気づいたように眉を寄せる。
「あれ? それって……」
それは朝陽にはその名前に聞き覚えがあったからだった。
「兄ちゃん、知ってるのかよ?」
陽向が驚いたように尋ねると朝陽は少し考えるように眉を寄せた。
「いや、直接会ったことはないんだけど……確か、先輩の知り合いがそんな名前だったような……」
「そうなの?」
亜佑美も思わず聞き返す。
「亜佑美さんと初めて会った、あの日の合コン。本当は、その田仲さんも来る予定だったんです。だけど体調が悪くて参加出来なかったらしくて……」
「でも、参加してないならそいつは亜佑美サンのこと知らねぇんじゃねぇの?」
陽向がもっともな疑問を口にすると朝陽は少し考えてから答えた。
「多分、先輩がみんなで撮った写真を見せたんじゃないかな。その後、俺が亜佑美さんと付き合ってることを先輩が知った時に、『俺の友達がめちゃくちゃ羨ましがってたぞ』って言われたんだよ……」
「……けど、兄ちゃんの先輩のダチなら兄ちゃんが出張に行ってるってことも分かるよな……」
陽向の言葉に朝陽もハッとしたように顔を上げる。
「……確かに」
「もうそいつが犯人じゃん」
陽向は半ば呆れたように言った後で話を続けた。
「っていうか、その先輩に話して止めてもらうように言えばよくね?」
「……そうだよな。それが一番いい方法だよな……」
朝陽はそう呟いたものの、どこか歯切れが悪い。
それを見た亜佑美が気遣うように尋ねた。
「でも、朝陽くん……先輩に聞きにくいよね?」
「それは……そうですけど」
朝陽は一瞬言葉を濁した。
自分の交際相手が先輩の友人らしき人物から執拗に付きまとわれている。
そんな話を先輩本人に直接尋ねるのは確かに気が重かったけれど、いつまでも何もせずにいるわけにもいかない。
「……でも、いつまでもこのままじゃいけないですから。来週、会社で話してみます」
「そっか。ありがとう」
亜佑美がほっとしたように微笑むと、陽向も安心したように頷いた。
「良かったな。これでその先輩から話してもらえりゃストーカー行為も止めるだろうし」
「うん……そうだね」
これで、ようやく解決に向かうかもしれない。
そう思う一方で、亜佑美の胸の奥ではどうしても引っかかるものが残っていた。
(何で、会ったこともないのにここまで執着してくるんだろう……)
そしてその疑問だけが、いつまでも頭から離れなかった。
コメント
1件
読み終えたよ〜!!😭💕 今回もドキドキが止まんなかった!! ストーカーの正体がまさかの合コンに来るはずだった田仲さんって判明してビックリした〜!!朝陽くんの先輩と繋がってたのも偶然じゃない感じがして怖いね😨 でも陽向くんの「もうそいつが犯人じゃん」ってストレートなツッコミにちょっと笑った😂 朝陽くんが先輩に話しにくそうにしてたのも気になるし、亜佑美さんの「会ったこともないのに何でここまで?」って疑問がすごく残る終わり方で続きが気になりすぎるよ〜!!📖✨
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