フェリ菊
ヤンデレ、盗撮描写注意
「フェリシアーノ君…?どうしてここに…」
夜桜がヒラヒラと舞い散る日に俺は1人、どこにでもある一見なんの変わりのない、ある普通の日本の家の前にいた。チャイムを鳴らすと家の住人は駆け足で家の扉を開けてきた。
「Ciao〜!菊!!俺日本に遊びに来たんだ〜!!」
俺がにっこりと微笑んで菊に手を振って挨拶すると、菊は俺がフェリシアーノではない偽物ではないか?と疑いの目を向けたあと、じっと目を凝らして本人でよかった。とでも言いたげな顔をしてほっとしたあとに口を開く。
「こんな遅くにわざわざ来てくれたのは嬉しいのですが、その…色々と平気なんですか?」
「平気!平気!ルートが何とかしてくれるよ〜!」
「嗚呼…ルートさんが慌てふためく姿が目に浮かびますね…」
はは、っと乾いた笑いをしながら空を見上げる菊の手をガシッと急に掴むと菊はビクッと震えた。
「菊〜、俺のこと泊めてくんない?」
「それはまた突然…フェリシアーノ君、どうかなさったんですか?自国に帰りにくい理由でも…」
「俺はただ菊と仲良くなりたくてきただけだよ!ね!お願い菊!泊めて〜!」
上目遣いにおねだりすると菊は困ったように笑って
「仕方ないですね、ささ。あがってください。」
「!! わーい!!ありがとう菊!お邪魔しまーす!」
嬉々として玄関に上がり込み、靴を脱いで部屋に入ろうとした時、菊が声をかける。
「フェリシアーノ君、一応ルートさんに私の家に来ていることを報告したほうが宜しいですよね。他になにか伝えることがあるなら今言ってください」
「ヴェ? なんでルートが出てくるの?」
俺が疑問に思いポツリとつぶやくと菊は硬直した。
「えっと、その…フェリシアーノ君とルートさんは付き合っておいででしょう…?もう、爺にこんな照れくさいこと言わせないでください」
菊は照れくさそうに頬に手を当てながらポツリと呟く。
「ヴェッ!?」
「え?」
「俺ルートと付き合ってないよ?」
「えぇ?!そうだったんですか!てっきりおふたりは仲が大変よろしいので付き合っているのかと勘違いしてました…すみません」
「謝んなくっていいよ、それにルートはルートで好きな人いるみたいだから俺を好きなわけないよ」
「えっ?!ルートさんお慕いしている方がおられたのですか!?初耳です!ぜひ詳しく!」
菊はふふっと楽しそうに笑いながら部屋へと入っていき、話を続ける。器用に俺と話をして俺へのオモテナシを始める。
「そうですか。あのルートさんにお慕いしている方が…なんだか不思議な感覚ですね。」
俺の話を聞いて微笑みながら、俺のために新しく買った珈琲を俺と一緒に買ったマグカップに注いで、自分が食べるように用意してあったであろう手作りクッキーと一緒に出す。
「…菊はルートのこと好きだったの?」
「え?」
突然の問いに菊のポカンとした顔を見て、俺は少し冷や汗が手から出てくる感覚がした。なんで聞いてしまった、これでルートのことを好きだなんて言われたら俺は…
「そうですね…ルートさんのことは友人としては好きです。勿論、恋愛的な意味ではないですが」
ゆらゆらと香りを楽しむように珈琲を揺らし、会話を楽しそうに聞いて珈琲をゆっくりと飲んでいく菊の顔を見て、俺の手から出る嫌な汗は引っ込んでいった。
「さてと、雑談はここまでにして本題に入りましょう。」
「ヴェ?本題って?」
カチャッと珈琲のマグカップをテーブルに置いて、俺を試すような視線で見つめる菊には全て見透かされるような感じがした。
「フェリシアーノ君、ここに来た理由はなんですか?」
「ヴェー、菊と仲良くなるために来たんだよ!俺もっと菊と仲良くなりたくってさ!」
「……」
「菊?」
俺の回答を聞いて黙った菊はなぜか、俺が本当にここにきた理由を知っているような気がした。
「では、これについてはどのように説明してくださるのですか?フェリシアーノくん。」
菊はどこから出したかわからない場所からなぜか家にあるはずの俺のダイアリーが机の上に出される。
「!? なんでここにこれが?!」
「……。実は貴方がここに来ることは数日前から知っていました。」
「…ルートに手伝ってもらったの?」
「はい、勝手に盗んでしまってすみません。」
「中、見た?」
「見ました。」
「…どうだった?」
「貴方らしいな、と。」
菊は静かにダイアリーから数枚の写真を取り出す。
「まさか貴方に慕われているとは爺、全く気が付きませんでした。こんなに沢山愛を囁かれているとは思ってもみませんでしたよ。」
菊は気持ち悪い愛を囁かれているダイアリーを優しく撫でて微笑んでいた。
「気持ち悪い?」
「いえ、優しくて初々《ういうい》しい日記だと思います。」
「俺、菊のこと内緒で何枚も撮ってたんだよ?」
「この写真の量だとそうですね。」
「菊の声録音してたり、会議室にカメラ仕掛けて撮ってたりしたんだよ?」
「お部屋にビデオテープも沢山ありましたね。」
「ルート…怒ってた?」
「それはフェリシアーノくんご自身でルートさんにご確認ください。」
「引いた?」
「愛のカタチは様々なものがありますから引きませんよ。」
「……菊」
「はい」
「怒った?」
「はい」
「ごめんね。」
「……」
ポリポリとクッキーを食べながら話していた菊は、食べる手を止めてじっと俺を見つめた。
「貴方は私をお好きなのですか?」
「…うん。大好き」
「そうですか、ほらお口、開けてください。」
「え、うん…」
俺は菊の視線に耐えきれず、菊の言いなりになり口を開けてクッキーを頬張る。クッキーは少し酸っぱくてほんのり甘くて、柑橘系のいい香りがした。
「美味しいですか?」
「うん。すっごい美味しいよ」
「それは良かったです」
ふふっと嬉しそうに笑う菊は、この先どんな悲惨なことがあるか知らない純粋な小動物のように綺麗な目をしていた。
「フェリシアーノ君。私に何か言うことはないですか?」
「勝手に写真とか動画撮ってごめんね?」
「……」
菊はムスッとした顔をしてズズッと珈琲を飲んでいるのを見て、これは菊の望んでいる答えではないことがわかった。
「…菊」
「はい」
「俺、菊のこと好きだよ 。だから俺と結婚して」
菊はカチャッと珈琲を机に置き、俺の顔を覗き込んで怒っているのかと思っていたら急にクスッと笑った。状況についていけない俺は菊が笑った理由がわからなかった。そして頭がぐるぐると回っている時菊が口を開く。
「ふふっ、愛の国だからと言って結婚は重すぎです。初めは恋人からでしょう?」
「……」
優しく微笑んだと思ったら俺のダイアリーを1枚ビリッと破いて何か書き始める。俺は一瞬で多大な情報を処理できずに固まっていたら菊が破いたダイアリーを俺の目の前に置いてくる。
そこにはたった1文だけ書かれていた。
「Ti amo con tutto il cuore」
「もしもし〜?」
「はい、本田です。」
「菊…!やっと繋がった!ねぇな んで俺の返事も聞かずに夜中に追い出してドイツに送ったの?!」
「おや、その様子ですとたっぷり怒られちゃいましたか?」
「もうルートのお説教は懲り懲りだよ…!」
「怒られないとスッキリしないでしょう?」
「しないけどさぁ〜…」
「それで、お返事は?」
「anch’io ti amo。」
「…ふふふっ、とても綺麗な発音ですね」
「ヴェ!自国の言葉は俺でも使いこなせるようにしてるんだよー!」
「はいはい、わかりました。では今度は盗撮ではなくご一緒に写真でも撮りませんか?」
「ヴェ!遊びに行っていいの?!」
「もちろんですよ、私達恋人でしょう?」
「そうだけどさ〜、今更だけどなんかうまくいきすぎて不安だよ〜」
「…。そうですか?それではまたお待ちしています、今度はルートさんもおよびしますか?」
「それはダメ〜!俺たちの夜を邪魔されたくないからね!」
「おやおや、はりきってますね」
「ヴェ!今度日本に行く時には沢山愛してあげるからね!!」
「はい、待ってます。それではまた…」
「ふんっ…あれ、おかしいですね…確かここに…あ!ありました!」
押し入れをゴソゴソと漁って何かを探していた菊は、押し入れから謎の箱を取り出して蓋を開ける。
「ちゃんと入ってますね…バレたらフェリシアーノ君になんて言われるかわかりませんから、今のうちに処分しちゃいましょう」
菊は箱を持って庭に行き、落ち葉をしいて火を焚く、その上に沢山の紙をバサッと投げ込み燃やす。その紙には菊の恋人であるフェリシアーノが盗撮されたであろう写真が山積みになっていた。
「もう、これがなくても沢山フェリシアーノくんを見れますからね。正規のものの方が価値が高いに決まってます。さて、確かもう1箱あったような気が…」
「き、菊…?」
「え?」
菊の視線の先にはハンバーガーを片手に持ったアルフレッドがいた。
「あ、アルフレッドさん?!な、何故ここに!!!」
「そ、その遊びに来たんだぞ…それよりもその写真…」
「……。アルフレッドさん。ここは超バカ盛りバーガー自由盛りで手を打ちませんか…?」
「…!!もっちろんだぞ!!今見たものは忘れるよ!!菊大好きだぞ!!!」
「やめてください!浮気になります!!」
コメント
2件
えめっちゃ好き!