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出店の撤収作業は明日で良いことになっていた。
取りあえず、ボス(祥子姉)に結果報告をしにリヴァ―ジに戻ると、姉貴は労いの言葉のそこそこに怪訝な顔をした。
「あれ、日菜ちゃんは?」
日菜?
「てっきりここで姉貴の手伝いさせられてると思ってたけど?」
と、返すと姉貴の表情は少し不穏になった。
「一度も戻って来てないわよ?美南ちゃんと一緒かと思ったけど」
「いえ、思った以上に忙しくて、実はついてあげられなかったの。それに日菜ちゃんがすごく張り切って『一人でも大丈夫』って言うから…。拓弥は?」
「俺もそんな感じ…。暁兄はどうなんだよ?日菜ちゃん配膳してただろ?」
「途中まではよく取りに来てたけど…考えてみたら途中からばったり来なくなってたな…。悪い、俺も余裕がなくて…」
暁兄までなんだよ…。
って思っても俺だった似たようなもんだった。
みんな有り得ない忙しさに他に目を配る余裕がなかった。
なんだよ…。
日菜のヤツ、どこでサボってんだよ。もうとっくに販売は終わっちまったぞ…。
店の中に不穏な空気が流れ始めたその時、突如店の電話が鳴り響いた。
姉貴が少し苛立った様子でとる。
「もしもし。…え?あ、はぁ、どうも…。カンナ?来てませんけど?」
カンナだって?
どうやらカンナの事務所の人間からみたいだった。
最初は普通に応対していたものの、姉貴の口調はだんだんと荒くなっていった。
「そりゃこの前お忍びで来てましたけど、ちゃんとこちらも諭して帰しましたけど?―――あーはいはい、カンナはそちらの看板タレントですもんね、もし見かけたらちゃんと言い聞かせますよ。というか、そちらこそカンナにハードワークさせ過ぎなんじゃないですかぁ?ちゃんとメンタルも見てあげてくださいよ。いいですか?カンナはああ見えても結構繊細で…」
美南がつぶやいた。
「カンナ、また逃亡したのかしら」
「みたいだなー。ほんと相変わらずなヤツ。どーうしてうちの店の女はみんなお転婆なんだか。とは言っても日菜ちゃんは別だけれど―――って」
拓弥は眉毛を器用にゆがめさせた。
「日菜ちゃん、カンナと一緒にいるんじゃないか?」
俺たちは顔を見合わせた。
「その可能性は大いにあり得るな。カンナちゃん、今日のイベントに出たいって言ってたんだろう?きっと、俺たちが気づかないうちに来てたんだ。それでトラブルが起きて、日菜ちゃんが巻き込まれて…」
暁兄の見解を、誰も否定しなかった。
むしろ、それしかないと思った。
「手分けして二人を捜そう!」
「でも、この人ごみのなかで闇雲に捜すのは無謀よ?」
「じゃあどうすれば…!」
拓弥と美南が交わす中で、ふと俺の頭に案が閃いた。
「ツイッターを開け。『愛本カンナ』で検索したら、目撃ツイートが出てこないか?」
はっ、となり四人で一斉にスマホを開いた。
「…出た!…なんだこれ…ヤバそうだぞ」
拓弥の言う通り、ツイートの内容は予想外に深刻だった。
『〇〇ベイエリアで愛本カンナ見た。変装してたけど多分本人ww』
『なんか逃げてたくさい?まさかのパパラッチ?一緒に女の子もいた。事務所の子かな』
『謎の美少女と逃避行。まさかのレズ疑惑ww』
俺たちの間に緊張が走った。
逃げてた、だと…?
日菜…!
俺はスマホをつかんで駆けだした。
暁兄の指示で、手分けして日菜とカンナの捜索が始まった。