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#恋愛
ばたっちゅ
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モブD
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3
俺は無事、小型龍の爪と鱗を手に入れ、サフランと共に武器屋に帰還した。
「ただいま、お父さん!」
彼女の明るく元気な声が店内に響く。
「約束通りの爪と鱗、採ってきたよ」
俺は爪と鱗の入った袋をドサっと床に置いた。親父は、「ふむ……」と感心したように、顎に手をかけた。
「本当に小型龍を倒してきたんだな……しかし」
親父はサフランの顔を見て難しい顔をした。彼女の鎧はピカピカで、肌もツヤツヤで、見違えるほど健康的になっていた。
「サフラン……お前、本当に小型龍と戦ってきたのか?」
「うん! そうだよ」
そう言って、俺の腕にしがみつく。
「倒した後に、ユウトに中から外まで隅々までお掃除してもらったからねっ♡」
その言葉に俺は青ざめた。
(語弊がある言い方すんな……)
震える体を必死に抑え、親父の方を向く。だが、親父は不思議と怒ってはいなかった。
「……ふっ」
親父は笑みをこぼし、サフランを見つめた。彼女は長年悩まされた瘴気が完全に消えて、瞳がかつてないほどキラキラと輝いていた。
「間違いない……君は神が遣わした勇者だ」
――勇者。
ふとカイザーの姿が頭に浮かぶ。
「……いや、俺はただの便利屋っすよ。溜まった汚れを掃除しただけです」
そう言って、俺は自分の少し荒れた手を見つめた。世界を救う剣ではなく、ハタキを持ち雑巾を握るためにあるこの手を。
「ただの便利屋、か。俺にはそうは見えんがな」
その顔はあの時の怒り狂った表情ではなく、優しい父親の顔だった。
――
俺は奥の部屋に案内された。大きなソファと机のある部屋だ。ソファに座ると埃が舞い上がった。
(ここも後で掃除しないとな)
「ユウト。君が違う世界から来たと言ってたな」
「あぁ……」
俺が頷くと、親父の表情が引き締まった。
「この世界は魔王が支配することになってから、瘴気で溢れるようになった」
(魔王……本当に存在するのか)
カイザーと旅をしていた時に出てきた魔物、先程の小型龍との戦闘を思い出す。
(信じがたい話だが、あの変なスキルを得たことを考えたら納得がいく)
「瘴気は才能がある者ほど影響を受けやすく、体を蝕む……」
俺はあの日別れたカイザーたちのことを思い出していた。
(あぁ……あいつら今頃、どうなってるんだろうな)
――
ユウトが抜けて数日――
カイザーのテント内はゴミが散乱していた。
使いきった傷薬や、空き瓶。食べ物の残りが大量に置いてあった。隅で座っていたローズが金切声をあげる。
「あぁっ、鎧が汚れて、痒いわ。カイザー、何とかしなさいよ!」
「あぁ? 自分で何とかしろよ。」
カイザーは寝転んだまま返事をした。テントの入り口でその様子を見ていたリコリスが言った。
「あのぅ……座る場所がないんですが」
「あぁ?地面に座っていろよ。ったく、どいつもこいつもだらしねーな……」
「地面だとお尻が汚れますし……疲労が取れなくて」
「俺だって疲れてるんだよ! 俺様に逆らうな!」
カイザーが怒鳴り声を上げると、リコリスがビクッとした。彼女は目線を逸らしながら地面に腰を下ろした。カイザーは寝転んだまま目を瞑り考える。
(ったく、あれから調子が悪いぜ……何だってんだよ)
――
親父は静かに続けた。
「俺は……元々大剣を扱う国の傭兵だった。戦果をあげ一時期は有名にもなった」
彼は部屋の隅に立てかけた大剣をチラリと見やる。大剣はかなり大きく、常人では持ち上げることすら難しいだろう。
「が、魔物と戦う度、瘴気を浴び、思うように動けなくなった。いつか現れる勇者と共に魔王を倒すという夢は絶たれたのだ」
親父はサフランの方を向く。サフランはそっと下を向いた。
「……サフランも同じだ。幼い頃から剣を教えてきたが、店内に蔓延る瘴気によって同じ運命を辿りかけていたのだ」
親父はそう言うと、机をバン!と叩き、俺の方を真剣に見据えた。
「……ユウト。君の浄化があればこの子はもう一度夢を追うことができる」
あの大きな体が、深々と折れていく。俺は言葉を失った。
「君は勇者だ。どうか娘を連れて行ってくれ!」
俺は手をぎゅっと握りしめた。
(……待ってくれ。夢を叶えると言うことは魔王を討伐するということ……)
カイザーに追放され、俺は何のしがらみもない自由を手に入れたはずだった。町でのんびりスローライフを送ったり、今までできなかった遊びを楽しんだり。俺の楽しい異世界ライフが脳内でガラガラと崩れ去っていく。
「あ、あの……親父さん、その、旅は……」
言いかける前に親父が口を開く。
「サフラン! ユウトに最高の装備を!」
「はい!」
サフランの声が今までにないくらいに生き生きとしていた。しばらくすると、サフランは倉庫から防具を持ってきた。
冒険者に相応しい服、鎧、丈夫な靴まで……仕方なく着替えると、サフランも親父も目を輝かせていた。
「これは……伝説の勇者だ……!」
「ユウト、かっこいい!!」
二人のキラキラした瞳とは相反して、俺の心は冷静だった。
(この鎧……信じられないほど軽いし、何より撥水加工が完璧だ。返り血も泥汚れも、これなら一拭きで落ちる。……旅の洗濯が捗りそうだな)
鎧の性能を黙々と分析しながら、少し考え込んだ。
(伝説の便利屋か……)
――
気づくと窓の外は暗くなっていた。
親父が俺の背中を叩く。
「今日は泊まっていけ! 部屋はサフランと一緒だ。案内してやれ」
「はい!」
「サフランを任せたぞ」
(……?)
俺はその時、親父の言葉の意味がわからなかった。元気よくサフランが奥の部屋に案内してくれた。俺は黙ってその後に続いた。
しかし、案内された部屋にはベッドが一つしかなかった。
「……え、なんでベッドが一つしかないんすか?」
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