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「はっ……はいっ」
怜から目力の強い眼差しを向けられた美花は、身体をビクッと震わせる。
「もしかして、美花ちゃん…………大分前に……うちのDTM事業部に訪問した?」
「…………え? あっ…………えっとぉ……」
怜の質問に、美花が思わず口元に手を当てて目を見開かせる。
「あ! やっぱりそうだったか」
美花のリアクションを見た怜が、クシャリと表情を崩す。
「え? 怜さん、どういう事?」
美花と怜のやり取りに、奏が話の輪に混ざってきた。
「四月に入ったばかりだったかな。外回りを終えて会社に戻った時、美花ちゃんにすげぇ似た女性が、社屋から出てくるところをチラッと見た事があったんだよな。あれ? って思ったんだよ」
怜は腕組みをしながら、当時の事を考えているようだ。
「それに、俺は細かい事はよく分かんねぇんだけどさ、今DTM事業部は、部内でいろいろ動きがあるらしい」
双子の弟は、人差し指を口元に当てながら『ここだけの話だぞ?』と言わんばかりにウィンクする。
「え!? 美花、ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツに行ったんだ!?」
「そっかぁ。美花ちゃんが今日、俺たちに結婚祝いの楽曲をパソコンで作ってくれて、実際に聴かせてもらったけど、何で美花ちゃんがハヤマに来ていたのか、謎が解けたよ」
怜は、納得したのか、大きく頷き、ニヤリと笑みを深めた。
「ねぇ怜さん。美花が作ってくれた曲、披露宴の入場曲に使わせてもらおうよ!」
「おっ! いいアイデアだな。美花ちゃん、俺たちの結婚披露宴の入場曲に、美花ちゃんの曲、使ってもいいかな?」
「もっ……もちろんです! そこまで言ってくれるとは思わなかったので、すごく嬉しいです!」
いつもネットで自作曲を発表している美花だけど、奏と怜の結婚披露宴で、結婚祝いとして作曲した楽曲が会場内に流れると思うと、嬉しいような、恥ずかしいような、くすぐったさを感じてしまった。
「ありがとう美花! この曲も、作曲者の美花の事も、司会の方に紹介してもらうように、打ち合わせで言っておくからね!」
「やだぁ〜! 恥ずかしいよぉ」
そんな事を言いつつも、美花の胸中には、温かな風に包まれていた。
親友カップルの幸せいっぱいの笑顔に、音楽には人を喜ばせる力があるんだ、と実感する彼女。
改めて、奏と怜の結婚祝いに曲を作って良かった、と心底思う美花だった。