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今夜、自分の知らない見たこともない艶っぽくて魅力的な圭子を見た。
「淳子さんと比べられると思うと、あなたの前で身体を見せられないわ」
そう気弱に言っていた人間と同一人物とは思えないほど遠目ながらもキラキラと
まぶしいくらいのオーラを纏っていた。
この夜、俺は2度目の恋をした。自分の妻に。
今までのように遠慮をして大人しくしていると、きっと妻はそう遠くない
将来、自分を捨てて家を出て行くかもしれない。
多少拒絶されても俺が彼女をどんなに必要としているか意思表示して
振り向いてもらえるように頑張らないと……。
ラウンジで過ごしていた時、俺は圭子に気付かれないようにと顔をなるべく
見られないよう気を付けて過ごした。
美しく着飾り煌びやかさを纏っていた女性が家に帰ると普段自分の側に
いるだなんて、そんなふうに考えてみると不思議な気持ちになるし
奇跡のように思えるのだった。
匠平は、あの日から夫婦の営みを月に一度ほど試みているが、その都度
できないのだと泣かれ……そんなふうに拒否されてもキレたりすることもなく、
妻の拒否反応がなくなるのをじっと待っている状況にある。
そのような中、旧友に会ったことで普段行くことのない夜の店に行くことになり、
そこで働いているはずのない妻、圭子の姿を見ることになった。
圭子と自分が鉢合わせするようなことにでもなったらお互いどんな顔をして
向き合えばいいのか、そんなことを懸念していたのだが、運命の女神が微笑んだのか?
それは果たして自分になのか、圭子になのか?
それこそ、神のみぞ知るところだが、この夜、鉢合わせすることはなかった。
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