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第12話「謝れなかった夢」/料金:1000円



二ノ宮ユウタ(にのみや・ゆうた)、17歳。

制服のYシャツはしっかりボタンを閉め、黒髪は真っ直ぐ下ろされ、無口で感情の起伏が少ない。

「真面目」「無害」とよく言われるが、彼の中には誰にも言えない後悔があった。


それは、中学の時に喧嘩別れした親友――ハルキのこと。


高校が分かれたあとも、LINEの未送信ボックスに謝罪の文章を保存し続けたまま、

結局、一言も送らずに時が過ぎた。


そして、ハルキが交通事故で亡くなったという知らせが届いたのは、3日前だった。





明晰夢サービス《メイセキム。》には、“一方的に話すための夢”がある。


**【夢名:一言だけ、伝える夢】/価格:1000円/仕様:対象一名・片方向会話型】


夢の中で、あなたは“伝えられなかった言葉”を話すことができます。

相手は自動再現AIで再構築され、過去の感情記録に基づいて反応します。

言葉は、記録されません。自分のためだけに届けてください。







夜。

ユウタはいつものベッドに横たわり、ヘッドセットを装着する。

呼吸は浅く、鼓動は少し速い。

それでも、夢の波に身体を任せるように目を閉じた。





気づけば、そこは中学の校舎裏だった。

夕焼けが差し込み、網フェンスの前に、ハルキがいた。


あの頃と同じジャージ、癖のある髪、少しだけ人懐っこい笑顔。


「おう、ユウタじゃん」


その瞬間、息が止まるほどの罪悪感が込み上げてきた。


夢だとわかっていても、言葉が出てこない。





「なあ、なんか言いたいことあんの? ってか、だんまりってお前らしいけど」


ユウタはようやく、震える声で口を開いた。


「……ごめん。

……あの時、ひどいこと言った。なのに、なんにも言わないまま……」


ハルキはふっと目を細めて笑った。


「お前が黙ってるとき、俺がうるさいくらい喋るの、好きだったけどな」


それは、AIによる再現かもしれない。

けど、それでも。


ユウタは最後に、深く頭を下げた。


「ありがとう。話せて、よかった」





目覚めたのは朝6時。

いつもより呼吸が深く、頭は少しぼんやりしていた。


机の上に置かれていた、未送信のスマホ通知に

“保存期間が過ぎたため、下書きは削除されました”と表示されていた。


ユウタはスマホを閉じ、

「おはよう」とつぶやきながら、少しだけ背筋を伸ばして制服に袖を通した。





《メイセキム。》注釈:


【一言だけ、伝える夢】は自己再構築型の感情処理サポート夢です


再現AIの反応は実在人物の情報から構成されるため、100%一致ではありません


本商品は“相手の言葉を聞くため”ではなく、“自分が言うため”の夢です

《ゆめレンタル -明晰夢お貸しします-》 「1泊1500円〜 あなたの願い、夢で叶えます」

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