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拓也はこはるを背負いながら、ようやく家の近くまで戻ってきた。

こはるの体は熱く、火傷の痛みで震えていたが、その重み以上に、疲れが全身を襲っていた。


「兄ちゃん…」

かすかな声とともに、こはるは拓也の背中で静かに目を閉じた。

長い戦いと苦しみの中で、ついに彼女は深い眠りに落ちてしまった。


拓也はその小さな背中を感じながら、涙をこらえた。

「休め、こはる。もう少しだけ、頑張ってくれ」


家の扉を開けた瞬間、拓也の胸は締めつけられた。

煙と埃の中に、母と弟・健太の姿があった。


二人は静かに倒れていた。

拓也は足を止め、ゆっくりと近づいた。


「母さん…健太…」


声は震え、目から涙が溢れ出す。

遺体には痛々しい傷跡が刻まれていたが、その表情は安らかだった。


「ごめん、守れなかった」


拓也はこはるを降ろし、膝をついた。

眠るこはるの頬をそっと撫で、声をかけた。


「こはる、俺たちはまだ生きてる。お前がいる限り、家族は終わらない」


揺れる心を抑え、拓也は必死に自分に言い聞かせた。

この悲しみを胸に抱えながらも、こはるを守り抜くと誓った。


夜の広島の空は、静かに沈んでいった。


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