TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

第四章『謎廻と転変』


〈同日、夕方 6時30分〉


山田宅の中には15名ほどの検視官がおり、状況を調べるために担当している刑事も中にはいた。だがその中には金山と新次郎の姿はなく外で吐き気を催していて、一方、爛はというとケロッとした表情で家の中を鼻歌をしながらトコトコと歩いて証拠を探していた。人の死をなんとも思ってはおらず、逆に厄介払いが出来て良かったと思っていることがわかるように感じられる。


金山班以外の2班も山田宅へ集合し様々な場面で出た話を一班づつ話して言った。

「ひとみさんの死亡推定時刻は今日の深夜3時だそうだ。」

「やっぱり爛の犯行と同じですね。」

「あぁ、そういうことになる。」

「爛はどこにいる?」金山は爛が居ないことに気づくと焦りがでてきた。

「爛は家の中にいますよ。」

「何?やはりアイツは人の死をバカにしよって。」花辺は怒りを表す。

「でもおかしいとは思いませんか?」

「何がだ?」新一郎は美咲の質問に疑問を持った。

「何がって、一般人がこんなに細かい所までやれるってことっす。」

「仕方がねぇよ。今の世の中、情報漏洩の可能性もない訳では無い。世の中簡単に調べることが出来る。」花辺は渋そうな顔をして言葉を吐く。

「おっ、みんな揃ってんじゃん!」

「犯人はお前なのか?」

「俺はどう考えても違うだろう。俺は今日の朝まで牢屋にいたんだぞ。それに、 」爛はポケットの中から角が血汚れた手紙を取りだし金山に手渡しをする。

「犯人《にせもの》は俺に殺されたいと思う人間。理由は分からないがね。」

「つまり犯人は、爛に殺害予定欄に書かれていた人物ですね。 」

「そうすると、かなり犯人の候補は絞られるな。まぁ、今回のところはこれで終わりにしよう。明日は、監視カメラのチェック等だ。」


今日はここで終わりということにした。


〈1982年6月12日 朝〉

あの日の後、爛は自分のおりへと返されたが眠ることは一切できやしなかった。

爛の脳の中には謎と疑問という文字の塊が沢山回っていた。ネット、マスコミに流れている殺害方法、殺害予定欄、この問題に果ては見当たらない。可能性は無限大過ぎる。

色々考え深くなっていく中、警備員が爛のことを呼びに来て外に出される。


〈1時間後 署内の会議にて〉

中には刑事が大勢椅子に座っている。威圧感漂う部屋に爛はノコノコと入っていった。

「爛。待っていたぞ。」金山は家族同然のように爛のことを待っていた。

「今日のチームを発表する。俺は今回初めて参加する渡辺 かなえ(わたなべ かなえ)と組み被害者になるであろう人物の生存確認へ向かう。」

「よろしくお願いします!」渡辺は大きな声でみんなに挨拶する。

「よろしい、伊集院新次郎、お前は弟と組んでもらう。お前は容疑者に当たるであろう人物を監視カメラの映像を調べてくれ。」

「「はい!」」

「よろしい。次に、良太と美咲は山田さんの家をもう一度捜査してくれ。」

「「はい!」」

みんなが部屋から一斉に出ていくが爛は金山の方へと歩いていきとある質問をした。

「おい、俺は一体何をすればいいんだよ。」

「お前は取調室でお留守番だ。」

「はぁ?お留守番!?それじゃぁ、俺が来た意味ねぇじゃねぇか!?」

「お前はいるだけでいい。お前が外に出ると誰に危害を加えるかわかったもんじゃないからな。何かあった時は俺が固定電話で連絡するよ。」

「へいへい。」爛はやる気を失いそそくさと取調室へと歩いていった。爛が会議室を出ると同時に花辺が部屋へと入ってくる。

「すみません。寝坊しました。」

「勉、お前はこの事件から外れろ。」この言葉を聞くと花辺は驚いた顔を隠せない。

「はぁ?なんでですか!俺だってしっかり貢献できますよ。」

「できる、できないって言われたってお前は、犯人や爛に狙われているじゃないか。最終結果、犯人に殺されたって元も子もないだろうが。」

「でも、」

「でもじゃない。寝坊をし目の下にクマのある刑事に成功という言葉は存在しない。お前はここで大人しくしていろ。これは上からの命令だ。」花辺は何も言うことが出来ず部屋を後にした。怨念という気分を残して。


〈伊集院兄弟班〉


パトカーで移動中に新次郎が兄に問いかけをする。

「なぁ、兄さん。今回の事件一番怪しいと思うのって誰ですかね?」

「分からない。証言も何もかも少なすぎる。現場から指紋も何も見つかっていないからな。」

「情報は拡散されすぎている。」

「そういうことだ。」

話をしているとパトカーが現地に到着した。


〈良太、美咲班〉


同時刻、山田ひとみ宅到着。

無線での報告が届く。

「こちら伊集院新一郎。現地に到着。」伊集院班の到着を知らせる報告だった。

「こちら金山、もうすぐ佐々木成人さんの自宅に到着する。」

「こちら鈴木、ただいま山田さんの家に到着。」

それぞれの班が近況を報告する。

「それぞれ役目を果たそう。これ以上、死人を出すことは俺が許さん。」

「「「はい!!」」」金山が全刑事に喝を入れ本気を出させる。


一方、爛はというと暇すぎて飽きが現れていた。爛の目の前に刑事がひとり座っていたが息苦しさが漂っている。爛は暇を持て余さないように脳内で事件の犯行を整理しようとしていた。あまり考え事のしたくないたちだがやること無く仕方がないと感じこういうことに至った。爛のことを見張っている刑事はずっと爛のことを見て変なやつだと思い見つめていた。爛の周りには、本もテレビもなくあるのは爛と刑事が座っている椅子とテーブルそれと固定電話のみだった。


(犯人は、俺が殺そうとした人物。これだけじゃ、ダメだ。まだ足りない。)


「すみません。刑事、資料をお願いします。」

「はい。 」



〈良太、美咲班〉


山田宅に着いていた二人は家の中を捜査していた。

「山田さんの自宅、さすがに見落としていることはないかぁ。でもなんで犯人は指紋を残すことなく家の中に入ることが出来たんだ?」美咲は感を働かせ一つの疑問を問いかけた。

「確かにな。」

「普通の家ならドアスコープだってあってインターフォン押してる相手も見れるはずですよ。黒ずくめの犯人がドアの目の前に立っていたら私なら絶対に開けませんけどね。 普通は除きますよね。だって犯行が深夜帯なんですもん。」


〈前崎 爛、取調室にて〉


(犯人はどうして山田の家に入ることが出来たのか窓に傷もつけずにあの窓の素材はきっと柔らかいものだからすぐ割れるはず。犯人は何の苦労もせずに入ったならそれなりの視力があるな。)


〈金山、渡辺班〉


「こちら金山、佐藤さんの自宅に到着。」

「「了解。」」金山達はパトカーを降り自宅の玄関のインターフォンを鳴らす。だが家の中から物音が一切聞こえない。何回も鳴らすが出てくる気配は感じられない。

「佐藤さん!!佐藤さん!!」渡辺が名前を呼ぶが出てくる気配は感じられない。

「渡辺どいてくれ。」

金山がドアノブを握って開いてみると、鍵が付いていなかった。金山と渡辺は中に入っていくと驚くべき光景が拡がっており、渡辺はそれを見て腰を抜かした。金山は慣れているはずだが今回は別だった。

「これは、」金山は唖然とした。

今回の犯行は7箇所の切り傷に口を裂かれ、目がくりぬかれていた。まるで化け物が人を殺したかのような犯行の仕方をしていた。

「至急、応援を頼む。」金山が応援を要請した。

すると、一通の報告が金山のところへ駆けつける

「金山さん。監視カメラを確認していた新一郎です。」

「どうした?」

「昨日は誰も外に出ていません。」

「なんだと?」


〈前崎 爛 取調室にて 〉


誰かがドアを3回叩き中に入る。

「失礼します。頼まれた資料です。」

「あぁ、あり、」

「ありがとうございます。」爛のことを見ていた刑事よりも先に爛が挨拶をした。爛は立ち、資料を貰う見張っていた刑事はそれを見て驚いていた。まさか、あの爛が礼を言うとは思ってもいなかった。いや、言えることができるとは思わなかったのだ。そのくらい爛という人間は人間性がないと思われているのだ。

爛はファイルを受け取るとすぐ自分の座っていた椅子に座ろうとしていた瞬間、テーブルの上に置いてあった固定電話が鳴りだした。刑事が受話器を取った。

「はい、もしもし。」

「こちらは金山だ。爛に変われ。」

「はい。爛、お前にだ。」爛は待っていましたと言わんばかりに、すぐ受話器を受け取り電話に出た。

「はい。」

「金山だ。応援を頼む。」

「へ?」

「今日もまた死人が出た。今回は目をくり抜かれている。」

「今から行く。」

電話を切り刑事に事情を知らせ二人は動き始める。


〈佐藤やよい宅にて〉


伊集院兄弟がそこに着いた瞬間でやよいさんの家の中には35人程の検査官がいた。死体はまだ現場に残っていた。一方、金山と渡辺はパトカーの中でぐったりしていた。渡辺はビニール袋を両手で持って下を向いていた。きっと死体を見るのは初めてなのだろう。

「金山さんすみません。」検査官の一人が金山に話しかける。

「どうした。」

「ひとつの証拠が。」そのことを聞くと金山はゆっくりと力を入れパトカーから降り手袋見つけた。

「ここに。 」

「ん?」

金山は検査官に言われた通り佐藤の口を開ける。すると口の中には手紙が入っていた。

金山はその手紙を手に取り読んだ。


で紙の表には「爛のことを望むとある名無しのファンより」と書かれており裏には「最後三人の殺害へ」と書かれていた。犯人はきっと今日で三人も殺すつもりだった。これから起こることがあらかたわかってしまう。


〈前崎 爛 パトカーにて〉


爛と刑事はパトカーで金山がいる佐藤宅へ向かっている。爛は助手席で事件のファイルを見ていた。

(犯人は俺の殺害予定欄に記載してた人物で細かいところまで再現出来ている。あれ、でもそういえば、なんで犯人は殺害予定欄に記載されていた人物が分かるんだ?世に出てない情報だろ?ネットの情報だとしてもこんなに完全な犯行にはならないはず。これが全て上手くいってるのならここに証拠がある。)

爛は外を見渡し刑事に話を振る。

「お前って家族はいるのか?」

「なんなんだよ急に。」

「いるのか?」この時の爛は冷静の一言だった。刑事は話の意図があまり分からなかったが話を進めた。

「いるよ。妻と三歳の娘が。」

「よかったじゃん。ここでお前が死ねば葬式に出てくれる人はいるぜ。」

「はぁ?」

爛は刑事が握っていたハンドルを強く握り交差点やや右のコンビニへ突っ込んだ。爛の運動能力を忘れていた刑事はそのまま突っ込んでいくしか無かった。爛は車のドアを開け外に出たが気を失っていたと思っていた刑事が背後から拳銃を爛の方に向けていた。

「もう、こんなことは、やめろ!」

爛はしっかり生きていることを確認するとその答えに応じる。

「殺しの世界に入れば二度と普通には戻れないのさ。」

爛は自分の身体能力を使い素早い速さで刑事のもとへ行き、後ろから重たい一発を刑事に浴びせた。


この時、この時間から爛の内の砕けていたもの全てが再構築され、刑事が持っていた銃を手に取り、爛は高笑いしながら夕焼けの太陽の下へ走り去った。


第四章『謎廻と転変』終わり

loading

この作品はいかがでしたか?

50

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚