「はあっ……はぁっ……もうっらめ……」
「一緒にイこ?」
「いやっ……そんなにしたらっ!! あああああーーっ!!!」
より激しくなった腰つきが、意識をどんどん遠くさせる。ひときわ激しく二度突かれて薄膜越しに彼の欲が放たれる。
ふたりでシャワーに入ってもう一回戦。へろへろになった私は、ソファに寝転んでぼーっと身体を休めていた。
そこへ篤人がやってきて、ローテーブルにそっとうどんの入ったどんぶりを置いた。出汁のいい匂いがする。
「食べれそう?」
「ふぁーい……」
「ごめん、無理させたね」
花音が煽るせいだと言われて、ぶうっとほほを膨らませる。どんだけ絶倫なんだ!?
むくむくっと身体を起こしてソファから腰を床に落とす。
美味しそうなきつねうどん。見ただけでお腹がぐーとなった。
「いただきます」
声をそろえてつぶやいて、ずるずるとうどんをすする。つるんとした食感が最高! お揚げもよく味が染みている。
「美味しい……」
「よかった」
「……篤人、これからどうするの?」
元を正せば、会社では今後の詳しい話ができないのでここへやってきたはず。
復讐をどう進めるのだろう。燎子はなかなか手強そうだ。
「思ったより美濃さんの動きが早かった」
「いつ知ったのかな。私たちが付き合ってるって」
「リフレッシュルームに、美濃さんはいなかったと思うけど」
うどんを食べ終え、ふむ。と腕を組む。
みんなで話していたのはお昼時のリフレッシュルーム。入り口に背を向けていたから、人の出入りがわからなかった。
「とりあえず、1週間は様子見よう」
「わかった」
「意外と早く目的達成できるかも」
目的は、燎子を退職させること。
あと3ヶ月以内には結果出せそうだ。
この自信はいったいどこからくるのだろう。
|目的が達成《燎子が退職》したら、この契約も終わり。そう思うと胸がチクチクと痛むような気がした。
それは仕方のないこと。以前の穏やかな日々に戻るだけ。ただ言えるのは、篤人と私は単なる関係をもったことがある他人になるということ。
「……どうかした?」
パッと顔を覗き込まれてドキッとする。
「ううん。なんでもないよ」
へらへらと笑えば、篤人は首を傾げた。
「第二幕は、契約恋愛をとにかくするんだよね?」
「うん」
「デートも行くの?」
「もちろん。花音の行きたいところ、教えて?」
「遠くでもいいの?」
「どこでもいいよ」
な
そう言いながら、篤人がすっと指を絡めてくる。
「行きたいところ、考えといて」
「うん」
「旅行とかでもいいよ」
温泉とか? いいねーとわいわい盛り上がる。もうすぐ桜の季節になるから、花見もいこうと話した。
「言ったでしょ? 花音が幸せになるのが最高の復讐だって」
私が幸せそうにしているだけで、向こうが勝手に怒り出し、荒れるだろう。
そう言い切る篤人の目はきれいだ。
「うん!! 燎子に、幸せいっぱいのとこ見せつけちゃおう」
仕事もプライベートも充実させて、いつもニコニコ笑っている。燎子にとって、これほど恐ろしいことがあるだろうか。
相手をどん底に陥れようとすればするほど、どつぼにはまるような気がするのかもしれない。
燎子の意図はわからないけれど、このまま続けてやっていこうということ話をした。
「ちょっと聞いてもいい?」
「うん」
「花音。美濃さんってどんな人?」
「えっ、どんなって……」
「高校の同級生なんでしょ?」
記憶を呼び起こしてみるけれど、あんまり記憶がない。それでもなんとか絞り出して、篤人の問いに答え始めた。
5.本当の目的
「クラスは別だった?」
「同じクラスになったことはない。燎子に対する記憶は本当に少なくて……」
燎子と同じクラスになったことはない。ますますなぜ自分に執着するのかが不思議で仕方ない。
「覚えてること何かあれば」
「うーん……」
私はそっと目を閉じて、記憶を呼び起こす。あんまり思い出したくないけれど無理矢理引っ張りだしてみる。
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