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第23話: 【国際交流】海外勢も異世界で大暴れ?!【カオス】
朝の受付場には、三枚の札が並んでいた。
コメント欄ルール。
おすすめ欄ルール。
大きな期待のルール。
ナギはその前で、スマホを見ていた。
次の転生者を準備中。
投稿傾向
海外の投稿者
世界中の能力者
言葉の壁
翻訳不安定
コメント欄多言語化
ナギは小さく息を吐いた。
「とうとう世界中か」
ロッカが隣で言った。
「言葉が通じないなら、危険だ」
サヨは端末を見つめていた。
「コメント欄も変わっています。日本語以外のコメントが増えています」
ミレナは帳面を開いたまま固まった。
「記録が……追いつかない」
レンヤが静かに言う。
「広がりすぎる前に、受付方法を決めたほうがいいですね」
ゴブすけが門の前で胸を張る。
教官車が、ぴ、と鳴る。
確認強化。
桶が言った。
「確認してえらい!」
小桶も言った。
「言葉が違ってもえらい!」
その時。
空気が三か所で揺れた。
広場の左。
受付場の前。
門の外。
ロッカが叫ぶ。
「三人来る!」
サヨが端末を操作する。
「一度に三人。おすすめ欄ルールは守られています。ただ、地域が違う」
ナギのスマホが光った。
転生者を送信します。
一人目は、門の外に落ちてきた。
黄緑の短い上着。
くせのある茶色の髪。
首から小さな翻訳機のような飾り。
その人は地面に手をついて、すぐ周りを見た。
そして、明るく何かを言った。
けれど、ナギには分からなかった。
音は届く。
意味は届かない。
ゴブすけが困った顔で札を見せる。
本人確認。
その人は首をかしげた。
教官車が、ぴ、と鳴る。
言語未確認。
二人目は受付場の前に落ちた。
紫の上着。
三つ編みの茶色の髪。
腰には絵筆。
彼女はすぐ地面に丸を描き、その中に自分の顔らしき絵を描いた。
#魔道具職人
こはる
684
はる
339
自転車和尚
212
45
次に、手を胸に当てて名前を言った。
「ミラ・コルテ」
名前だけは分かった。
三人目は広場の左に現れた。
灰色のフード付き上着。
手には小型カメラ。
落ちてきた瞬間、周囲の建物を見て、撮影位置を探すように首を動かした。
ロッカがすぐ前に出る。
「勝手に動くな」
その人は言葉を理解していない顔で、両手を上げた。
レンヤが前へ出た。
ゆっくり、手を下げる動きをした。
自分の胸に手を当て、名乗る。
「星見レンヤ」
それから、ナギを示す。
「久瀬ナギ」
ロッカを示す。
「ロッカ」
三人の海外投稿者達は、少しずつうなずいた。
ナギのスマホが震えた。
能力名
ワールド投稿リンク
効果
海外投稿者の投稿履歴を能力化し、世界中の視聴者の反応を接続する。
派生
身ぶり翻訳
絵による共有
映像記録補正
注意
言葉の誤解が能力の誤作動につながる場合があります。
ロッカが画面を見た。
「誤解が危険か」
サヨはうなずく。
「言葉が分からないまま能力が発動すると、意図と違う結果が出ます」
ミレナが小さく言う。
「まず、共通の合図が必要ね」
トオルが札を持ってきた。
止まる。
待つ。
危険。
大丈夫。
助けて。
分からない。
ミラはそれを見て、すぐに絵を描いた。
手を開いた人。
止まる線。
危険を示す三角。
笑った顔。
困った顔。
ナギは感心した。
「絵なら伝わる」
ミラはうれしそうに笑った。
ルカ・フォレルと名乗った旅動画投稿者は、身ぶりで道を歩く仕草をした。
それから遠くを指す。
旅。
案内。
発見。
ノア・グリントは小型カメラを持ち、撮影する仕草をした。
それから手を横に振った。
勝手に撮らない、という意味らしかった。
レンヤが静かに言う。
「ちゃんと配慮できる人達です」
ロッカはまだ警戒していた。
「だが、言葉が通じない」
ナギはスマホを握る。
「お題」
サヨが見る。
「今?」
ナギはうなずく。
「通じるための土台を作る」
ナギは言った。
「言葉が違う人達が、最初に共有できた一番大事なものとは?」
答える。
「危ない時だけは、全員同じ顔になる!」
広場に淡い光が走った。
全員の前に、小さな札が現れる。
危険顔。
安心顔。
待って顔。
分からない顔。
顔の絵が並んでいる。
ルカが札を見て、自分の顔を指差した。
ミラが笑って、分からない顔を描き足した。
ノアはカメラを下げ、待って顔の札を持った。
ロッカが少しだけ息を吐く。
「これなら、最低限は分かる」
桶が言った。
「顔で通じてえらい!」
小桶も続いた。
「分からなくても止まれてえらい!」
午前中、村は多言語受付場になった。
サヨがコメント欄を整える。
ミラが絵札を増やす。
ルカが身ぶりで案内する。
ノアが撮影禁止と撮影許可の合図を作る。
ミレナが文字ごとではなく、絵と動きで記録する。
ツクルが紙芝居を絵中心に作り直す。
ミチルが色ではなく形で分かる札を出す。
カイが受付場を広げる。
ハヤテが案内ルートを歩いて確認する。
ロッカは門の前で、何度も同じ合図を繰り返した。
止まる。
名乗る。
能力確認。
許可まで動かない。
ルカはすぐ覚えた。
ミラは絵で覚えた。
ノアは映像の順番で覚えた。
村人達も、少しずつ慣れていった。
言葉が分からなくても、全部が分からないわけではない。
怖がっているのか。
急いでいるのか。
謝っているのか。
助けようとしているのか。
体が教えてくれることもあった。
昼前。
コメント欄がまた速くなった。
世界中から見てる。
言葉通じてない?
絵札いいね。
翻訳してあげたい。
こっちの言葉も届く?
勝手に翻訳出していい?
危ないかも。
サヨがすぐ拾う。
危ないかも。
勝手に翻訳しない。
絵札を増やす。
すると、広場の札が少しだけ増えた。
翻訳ではない。
絵だった。
水。
食事。
休憩。
危険。
道。
村。
森。
待つ。
ミラがその札を見て、胸に手を当てた。
サヨが小さくうなずく。
「勝手な言葉より、共通の絵のほうが安全です」
ナギはスマホを見る。
コメント欄が少し落ち着く。
その時、森の方から叫び声が聞こえた。
外国語だった。
ルカが真っ先に反応した。
身ぶりで示す。
誰かいる。
迷っている。
危ない。
ロッカが走る。
「案内班、行くぞ」
ハヤテが言う。
「歩いて急ぎます」
「走るな」
「歩いて急ぎます」
森の入口には、さらに二人の海外投稿者がいた。
ひとりは大きな荷物を背負ったキャンプ系投稿者。
もうひとりは、料理道具を持った屋台動画投稿者。
ふたりは、魔物待機場のゴブリン達を見て固まっていた。
ゴブリン達も固まっていた。
言葉が通じない。
相手が怖い。
動けない。
こよりがゆっくり前へ出る。
ゴブすけが確認札を持つ。
ミラが地面に絵を描く。
村。
待つ。
大丈夫。
確認。
海外投稿者達は、少しずつうなずいた。
だが、背後の茂みから魔物が飛び出した。
小型だが速い。
新しく来た二人が驚き、片方が道具を落とす。
その音で魔物がさらに興奮する。
ロッカが前へ出る。
レンの教官車が警告する。
リクが音を出そうとして止める。
音で悪化するかもしれない。
ナギは息を吸った。
「お題! 言葉が通じない緊急事態で、全員が同時に分かったこととは!」
答える。
「逃げる方向だけは、矢印があれば分かる!」
地面に大きな矢印が出た。
村へ。
安全場所へ。
魔物から離れる。
ミラがすぐ絵を足す。
ルカが身ぶりで誘導する。
ノアがカメラではなく手で方向を示す。
ハヤテが歩いて先導する。
ロッカが最後尾を守る。
小型魔物は、こよりの声とゴブすけの確認札で止まった。
ハクトが様子を見る。
「驚いただけです。追わなければ大丈夫」
海外投稿者達は、息を切らしながら頭を下げた。
言葉は分からない。
でも、感謝は分かった。
夕方。
村には、新しい看板が増えた。
言葉が分からない時の約束。
急に近づかない。
相手を指差し続けない。
分からない時は絵を使う。
危険な時は矢印を見る。
声が大きくなる前に、手を下げる。
撮影は許可を取る。
食べ物は確認してから。
ミレナはその看板を見て、静かに言った。
「世界が広がると、決まりも増えるのね」
レンヤが答えた。
「増やすためじゃなく、安心するための決まりですね」
ロッカはうなずいた。
「悪くない」
サヨはコメント欄を見た。
「世界中のコメントも、少し落ち着いています」
コメントが流れる。
絵札いい。
言葉が違っても伝わる。
勝手な翻訳より安全。
村のみんなありがとう。
海外組も無事でよかった。
ゴブすけ確認お疲れ。
矢印助かった。
ナギは画面を見て、小さく笑った。
夜。
広場では、小さな交流会が開かれた。
まかなの料理が並ぶ。
海外の屋台動画投稿者が、身ぶりで調理を手伝う。
ハクトが食材を確認する。
ミチルが器を分ける。
リクが小さな音を鳴らす。
ソウマが音を録る。
マヒロが短い歌を歌う。
ミラが歌に合わせて絵を描く。
ルカが旅の身ぶりをする。
ノアは撮影許可札を見せ、許可をもらった場面だけ記録する。
言葉はまだ完全には通じない。
でも、笑うタイミングが少し合った。
驚く顔が似ていた。
熱い料理を食べた時の反応も、だいたい同じだった。
桶が言った。
「食べてえらい!」
小桶も言った。
「通じなくてもえらい!」
海外投稿者達は意味が分からないまま、なぜか拍手した。
ナギは笑った。
「桶、世界進出だ」
ロッカが言う。
「するな」
桶は元気に言った。
「進出しなくてもえらい!」
小桶も続いた。
「ここにいてえらい!」
スマホが震えた。
転生タイムライン。
海外の投稿者
映像には、三人の海外投稿者が来る場面。
言葉が通じず受付が止まる場面。
ナギの大喜利で表情札が生まれる場面。
絵札と矢印で危険を避ける場面。
夜の交流会で、言葉以外のものが少しずつ通じる場面が映っていた。
コメント欄は、たくさんの言葉で流れていた。
でも、サヨが整えた表示では、必要な言葉だけが少し強く光っていた。
無事でよかった。
絵札いいね。
勝手に決めない。
ゆっくり通じよう。
世界中から見てる。
村、大きくなってる。
ナギはその最後の言葉を見た。
村、大きくなってる。
本当にそうだった。
建物が増えたという意味だけではない。
人が増えた。
役割が増えた。
言葉が増えた。
注意が増えた。
笑い方が増えた。
最初は、転生タイムラインを見たナギひとりだった。
今は、世界中の投稿者がここへ集まり始めている。
レンヤが隣に立った。
「次は、もっと難しくなりますね」
ナギはスマホを見る。
次の転生者を準備中。
投稿傾向
コラボ企画
異なる能力の組み合わせ
超能力化
ナギは眉を上げた。
「次はコラボか」
ミレナが帳面を抱える。
「能力の組み合わせ……記録が大変そう」
ヨミトが言う。
「相性次第で強くなりすぎるかもしれません」
トオルが札を用意する。
「事前検証が必要です」
ロッカが言う。
「勝手に組ませるな」
サヨはコメント欄を見た。
「現実世界は、もうコラボを期待しています」
ハヤテが言う。
「組み合わせ確認ルートを作ります。歩いて」
ロッカはうなずいた。
「歩いてならいい」
ナギは夜の交流会を見た。
ルカが身ぶりで笑い。
ミラが絵を描き。
ノアが許可を取ってから撮り。
ゴブすけが確認し。
桶と小桶が褒めている。
好きなことで、生きていく。
それは、国や言葉が違っても同じだった。
ただし、通じるには時間がいる。
分からないまま進まない勇気がいる。
伝える形を変える工夫がいる。
ナギはスマホをしまった。
「次は、混ぜすぎ注意だな」
桶が言った。
「混ぜすぎなくてえらい!」
小桶も言った。
「少しずつ混ぜてえらい!」
夜風が、絵札と文字札を同時に揺らした。
転生タイムラインは、次の組み合わせを準備していた。
コメント
1件
みぅだよ🖤 第23話、読み終わったよ…「言葉が通じない」って、こんなに怖いことなんだって改めて思った。でも、ナギのお題で生まれた「表情札」とか、ミラの絵とか、ルカの身ぶりとか、“伝えようとする工夫”がめっちゃ沁みた。 「怖がってるのか」「謝ってるのか」「助けようとしてるのか」——言葉がなくても、身体が教えてくれること、あるよね。桶と小桶の「えらい!」が海外勢にも通じて拍手が起きたシーン、ちょっと笑ったけど、すごく優しい世界だなって思った。 村が大きくなって、決まりも増えて、でも「安心するための決まり」ってレンヤが言ったのが胸に残った。次のコラボ編も気になる…!