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反乱軍は帝国軍に二度も勝利し、浮かれていた。


おそらくは順番がよかったのだろう。


一度目に襲ってきたゼゲルの弟は完全に反乱軍を舐めていたので、比較的倒しやすかったし。


次のゼゲル父との戦闘の前に軍の装備を剥ぎ取り、武装を強化ができたのは大きい。


相手がゼゲルの肉親であり、扱う戦術をゼゲルが理解していたのも無視出来ない要素だろう。


そう考えてみればこの二つの勝利は偶然と幸運によるものであるとわかるのだが、本来勝てるはずのない軍に勝ったという事実は、慢心となった。


主にゼゲルの。


「このまま逃げる? バカなことを言うな。この勢いで帝都に攻め込むべきだ!」


反逆者ルナの本来の目的は不当に虐げられる奴隷達と共に国外に逃亡することだ。


そもそも、何の戦闘訓練も受けていない民間の奴隷が軍と戦って勝てるわけがないからだ。


しかし、実際に勝ってしまうと話は変わってくる。


「これはもしかしたらいけるのでは?」


そう思う奴隷達も現れるのだ。

散々虐げられた手前、復讐したいという気持ちが芽生えるのは仕方の無いことだ。


だが、ルナは冷静だった。


「帝国と全面戦争をして勝てるわけがありません。このまま逃げ切るべきです」


ルナとゼゲルの意見は真っ向からぶつかり合い、亀裂を生んだ。


最終的に逃亡派のルナと帝国打倒派のゼゲルに別れて、別の道を歩むことになった。


ルナは逃亡を続け、ゼゲルは血気盛んな若い奴隷を連れて帝国へと反旗を翻した。


おそらくはこの際に物資や食料の問題が発生したのだろう。


ルナは辺境地帯オルドランドまでに必要な食料を計算し、切り詰めながら移動すればいいが、ゼゲルの場合そうはいかない。


帝国を攻めるということは、帝国を攻め落とすまでゼゲルたちは止まれないのだ。


つまりどこかで物資を補給する必要があるが、反逆者を支援してくれる謎団体など存在しない。


必然、民家を襲って奪うことになる。

これではルナと袂を分かつわけだ。


当時のオレはルナの逃亡を手助けする為、捨て石となった足止め部隊だと思っていたが、そんな事情があったとは。


「ゼゲル坊ちゃんが首都に向かう最中に出会ったのが、帝国軍軍師、デュラ家の子息。ハン・デュラです。そこで坊ちゃん率いる反乱軍は全滅しました」


言葉にするとあっけないが、実際には複雑な問題が絡み合っていた。


二度の戦闘で敗北した帝国には後がなかった。

その為、市井の奴隷商人であるオレを宮廷へ召し上げ。奴隷魔法の力を使うことを決めた。邪法に手を染めても仕方なしというわけだ。


そして、ルナ討伐にはオレの奴隷部隊が。

帝都に襲い来る暴徒鎮圧にはハンが選ばれた。


その際、皇帝の命によりオレはハンに奴隷魔法を教えている。


ハン・デュラが会得したのは鉄の亜種奴隷刻印だった。


奴隷刻印はそのデザインによって、解釈や能力が異なる。


例えばオレが扱う茨の第二魔法、【我に従えアクシル】は奴隷に短時間ながら精緻かつ強力な強制力を働かせ、即座に自殺させることすら可能だ。


ハンの鉄の奴隷刻印の場合、強制力こそ弱いものの効果が長期間に及び、特に武器や防具に強く働く特徴があった。


物である武器や防具を奴隷化し、補助的な動作をさせることで兵士の負担を軽減すると共に、緊急的な集団回避や一斉突撃を言葉なく行える。


ハンは遙か東にある大陸の征服者の血が流れているとのことだったが、実に軍事に向いた性質が発現したものだ。


バルメロイが言うには、それでもゼゲルは善戦したらしい。


具体的には火山から噴き出す毒ガスを利用して、帝国軍の大半を毒殺し、逃げ惑う兵士達に背後から奇襲をかけた。


卑怯なクズというのは、戦場ではこうも輝くのか。

ゼゲルにも使い道があるというのは意外だった。


この世が戦乱の時代に突入した際には一時だけ仲間にし、捨て石に使う程度の価値はありそうだ。


しかし、あくまでゼゲルは善戦しただけで最終的には敗北している。


奴隷魔法を甘く見ていたのだ。

毒に冒され、死の淵にいたハンは最後の強制呪文を唱えた。


第二魔法が指定した行動は【殺せ】だ。


主人の命に兵士の死体が起き上がる。

兵士が着込んだ甲冑や武具が、無理矢理に兵士を動かしたのだ。


不死の軍団の誕生である。


刺そうが突こうが死なず、切り落とすにも甲冑が邪魔で、死んでいるので毒も効かない。その上、休憩や補給を必要としない。とんでもない怪物だ。


これにはゼゲルも勝てるわけがなかった。


主人の命令に従い、不死の軍団はあらゆる殺戮を成した。


死兵はあらゆるものに平等だ。

奴隷に慈悲などかけないし、妊婦にも容赦がない。


あの気丈な女給仕はゼゲルの前で腹を裂かれ。

中にいた胎児は引きずり出され、入念に踏み潰された。


産声が潰される音を聞きながら、ゼゲルはハンに問う。


「なぜこのような非道をする! 我々は人だ! 我々には生まれながらに、人である権利があるのだ!」


毒が回り、目を血走らせたハンが答える。


「なぜかだと!? 下等な奴隷の分際で!! 奴隷とは物だ!! 物を壊して何が悪い!! お前らは人ではない、ただの奴隷だ!! 消費されるだけの消耗品が、幸せになりたいなど、夢にみるな!!」


ゼゲルは口をぱくぱくさせ、嗚咽を漏らした。


奴隷は物?

妻は、俺の子は、共に戦った仲間たちは、消耗品?


「逃げましょう坊ちゃん。ここは危ない」


気が動転したゼゲルを、バルメロイが連れて行く。


「奴隷は、物。奴隷は物……。奴隷は……物」


「そうだ。奴隷は、消耗品だ」


こうして、ゼゲルは狂った。

愛らしいクズから、どうしようもない化物(クズ)へと変貌した。




数年後、ゼゲルは児童売春を繰り返す外道となっていた。

文字通り、奴隷を消耗品として扱ったのだ。


おそらく、最初は適当にさらってきた幼女を奴隷とし、無理矢理売春させたのだろう。


発覚すれば牢獄行きというリスクはあるが、元手ゼロで始められるし、早めに使い潰して埋めればそれで済む。


言ってしまえば、ゼゲルは奴隷を正しく物として扱ったに過ぎない。


現代日本においても、成果を上げない家畜の殺処分は行われているし、動物実験なくして現代医療は目まぐるしい発展を遂げてはいないだろう。


経済動物とはそういうものだ。


奴隷を経済動物以下の物と考えた場合、ゼゲルの行動は至極自然なものと言える。


なるほど。

これは売れる。


確かに記事にすれば売れるが、流石に危険すぎるな。

奴隷商人~今更謝ってももう遅い。お前が虐待していたロリ奴隷はオレが全員買い取った。

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