コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
春、美咲は奈良を離れた。空港での別れの瞬間、悠真は笑顔を作ろうとしたが、胸の奥では涙が溢れそうだった。美咲は「必ず帰ってくるから」と言い残し、飛行機に乗り込んだ。
その日から、悠真の生活は静かに変わった。図書館の隣の席は空いたまま。カフェで二人分の席を探す必要もなくなった。奈良公園を歩いても、隣に笑う彼女はいない。
最初の頃は、孤独が耐えられなかった。スマホを開いては美咲からのメッセージを待ち、届いた手紙を何度も読み返した。だが、時差や忙しさのせいで連絡は途切れがちになり、悠真は不安に押し潰されそうになった。
「俺は……何をしてるんだろう」
就職活動も思うように進まず、自己嫌悪に陥る日々。美咲が夢に向かって進んでいるのに、自分は立ち止まっているように感じられた。
そんなある日、悠真は美咲から届いた手紙を開いた。そこには、異国の街並みや新しい友人との出会いが綴られていた。最後にこう書かれていた。
「悠真くんも、自分の夢を探してね。私だけじゃなくて、二人で未来を作りたいから」
その言葉に、悠真の胸に火が灯った。彼女に追いつきたい。彼女と並んで歩きたい。そのためには、自分も変わらなければならない。
悠真は図書館に通い、資格試験の勉強を始めた。英語、経済、そして自分の興味を探るための読書。最初は孤独だったが、次第に「自分の時間」として充実していった。
ある日、友人から「就活の勉強会に参加しないか」と誘われた。悠真は迷ったが、思い切って参加した。そこで出会った仲間たちと語り合ううちに、自分の強みや可能性に気づき始めた。
夜、机に向かいながら悠真は美咲への返事を書いた。「君が遠くで頑張っているから、俺も頑張れる。まだ夢は見つかってないけど、少しずつ前に進んでる」
その言葉は、かつての自分には書けなかったものだった。孤独は苦しかったが、同時に成長のきっかけでもあった。
奈良の夜空に星が瞬く。悠真はその光を見上げながら、心の中で美咲に語りかけた。「必ず追いつく。だから、待っててくれ」
孤独と葛藤の中で、悠真は少しずつ強くなっていった。