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#雪男BL
透子
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「う、うぉあ、ぁぁーーーーー…………」
湯船に肩まで浸かると、自然に腹の底から唸り声みたいなのを上げてしまう。
片足を突っ込んでいた蓮が、ブハッと吹き出した。
「ちょっと。アイドルに有るまじき声出すのやめて」
「にゃはっ、だってめっちゃくちゃ気持ちいんだもん!蓮も早く入んなって」
「はいはい。入りますとも………………うぉ、おお…………」
「お前もアイドルらしからぬ声出てんじゃん!」
「いやぁ……これは、出るわ……」
2人で顔を見合わせて、笑う。
頭ん中は相変わらずパニックだし、蓮の言葉と行動に振り回されてばかりだけど。
やっぱ楽しいし、嬉しいし、なんていうか……すげぇ幸せ。
片想いは苦しいこともあるし切ないことも多いけど、好きな人と旅行出来るなんてこれ以上幸せなことある?
……って、思ってたんだけど……さ。
言葉と行動の端々から見える、蓮の想い。
もしかして、俺と同じなのかな…………って、期待しちゃう。
(いや……いやいや。期待し過ぎはよくないって)
違った時のダメージが半端ないから。
過度な期待は禁物だ。
でも違うならなんで、こんなに俺を翻弄するようなことばっか言うの?
触れる手は優しいし、声もなんか甘いし。
じゃあやっぱり好きなの?
俺の勘違いなの?
どっち?
俺は期待してもいいの?
そんなことばっかグルグル考えて、頭パンクしそう。
パンクしそうだから、出来るだけ蓮から離れようと湯船の隅へにじにじと移動する……けど。
「なんでそんな離れんの」
伸びてきた手に捕まえられて、ぐっと引き寄せられた。
「うぎゃっ!?」
「アハ。色気のない声だなぁ」
「うっ……うっさい!てか、ち、ちか!近いって!」
「んー?」
引き寄せられるまま、蓮の腕の中へ。
慌てて離れようとすると、腰に腕が巻きついた。
「れ、れん……っ」
「遠いと話が出来ないじゃん」
「そっ……そんなに離れてないし!話、充分出来るくらいだし!」
「俺が嫌。佐久間くんと離れたくない」
「っ……なん、」
なんで、そんなこと言うの?
俺のこと翻弄して、そんな楽しい?
なんかだんだん腹が立ってきた。
悔しくて、ジワッと涙が滲んでくる。
「…………ぅ」
「……泣かないでよ」
「っ、だ、って……れんが、わるいんじゃんかぁ……俺のこと、振り回してさ……っ、思わせぶりなことばっか、言ってぇ……」
「……俺のことで、頭いっぱいになっちゃった?」
コクコクと頷くと、蓮が優しく抱きしめてくれた。
宥めるように背中を撫でられて、小さくしゃくり上げる。
……カッコ悪い。
こんなことで泣くなんて。
「……まだ、教えてくんないの?」
「うん」
「即答かよぉ」
「ここで話すとね。長くなっちゃうから。佐久間くんが逆上せると困る」
「……もう、逆上せそうだけど」
好きな人に抱きしめられてさ。
こんなん、普通に逆上せるだろ。
ククク……と楽しげに笑った蓮が俺を解放して、顔を覗き込んでくる。
泣き顔を隠そうとするけれど、その手をすかさず掴まれた。
「泣き顔も可愛い」
「っば、ばかぁ……かわいくなんて、ないだろ……」
「可愛いよ。すごくね」
「うう……」
「俺のこと考えて、悩んで泣いちゃう佐久間くんが可愛い」
「お前さ、マジで意地悪だよね……!」
「そうかもね。……佐久間くん限定で」
「ひどっ!?意地悪すんな!!」
プクッと頬を膨らませて、そっぽを向く。
蓮はやっぱり楽しそうに笑いながら、やっと俺を解放した。
まったく……なんなの?
俺はめちゃくちゃテンパってんのに、なんでお前はそんな余裕そうなの?
く、く、悔しい〜〜!!
お湯の中で膝を抱えて、背中を丸める。
そんな俺の隣でゆったり座り直す蓮。
長い足を投げ出すようにして、深く息を吐き出した。
「あー……ほんと、最高だわ……温泉」
「俺はもう温泉どころじゃねぇよぉ」
「アハ。佐久間くんの場合は自業自得だよね」
「ぐっ……」
それな。
蓮のことが好きだから、ひとりで勝手にテンパってるだけ。
ってかさ、それって。
「……蓮、もしかして気付いて……る?」
「何を?」
「い、いやいや。白々しいな!?おま……っ、お前!気付いてんだろ!?」
「だから、何が?」
こちらへ向けられる、優しい眼差し。
ああ、これはもう
バレてるんだな、きっと
鈍い鈍いって思ってたのに。
分かってたんだ。
分かってて、俺を翻弄してる。
俺の気持ちを、俺の口から聞き出そうとしてるんだ。
「なんでぇ……」
「……佐久間くんから言ってくれれば、話は早いんだけどな」
「……言わなきゃ、ダメ?」
「駄目。なんの為にここまでお膳立てしたと思ってんの」
「うっ……れ、蓮も、俺と同じ……気持ち?」
「その、佐久間くんの気持ちを聞きたいんだよね、俺は」
「もう、分かってんだろぉ……?」
「さあ?どうかな。勘違いかもしれないし」
嘘だぁ。
絶対分かってて言ってるじゃん!
「……ホントに逆上せそ」
「あらら。一旦出る?後でまた入ろ」
「ん……」
こくりと頷けば、蓮が手を掴んで引っ張り上げてくれる。
ホントに逆上せてる訳じゃないのに、腰に手を添え支えられた。
あのさ……風呂だからね?
2人とも素っ裸なのよ。
裸でこんな風に密着したらさぁ……ドキドキするじゃん!
「ちょ、蓮……大丈夫だから」
「駄目。フラフラして転んだら大変でしょ」
「今、フラフラしそうなんですけどぉ」
「それは大変だ。抱っこしようか?」
「そっ、それは結構です!!」
「フハッ、そんな全力で拒否しなくても」
それじゃあ代わりに、と蓮が俺の手を握る。
ここで恋人繋ぎとか……答え言ってるのと一緒じゃんか。
なのに正解は教えてくれない。
(はー……今から俺、蓮に告んなきゃいけないのかぁ……)
もうここまで来たら言うけど。
だって、言えば蓮の気持ちも聞けるんだろ?
いいよ、言ってやろうじゃんか!
だからお前もちゃんと、包み隠さず話せよな!!
と、謎のやる気を胸に、俺は蓮に手を引かれ湯船から出た。
***
……なんて、意気込んでお風呂から出てきたものの。
「…………」
「…………」
10畳くらいはありそうな広いリビングのローソファーに並んで座って、コーヒーを啜る俺と蓮。
……戻ってきてからもう30分は経ってます、ハイ。
(だってさ。今更なんて言えばいいのよ)
ずっと前から好きでした!って?
言えるかバカァ!!
ずっとずっと、隠さなきゃって蓋してたんだよ?
糊付け不十分だったみたいだけどさぁ……
蓮にもバレるくらい、ダダ漏れだったんだな、俺。
もういいじゃん、分かってるならさ。
わざわざ聞かなくてもさ、良くね?
そうだよ、俺の気持ちなんかすっ飛ばして、ちゃっちゃと教えてくれれば……――
「……で?」
「ひゃい」
「言うの?言わないの?」
湯船と同じ、めちゃくちゃ広いソファなのに肩が触れ合うくらいの距離に座って。
蓮がグイッと俺の顔を覗き込んでくる。
指先で俺の髪をクルクル弄びながら。
てか、近いってば!
「え、えっとぉ……コーヒー、おかわり……いる?」
「あとで」
「あとでかぁ……お、俺は、飲もっかなぁ!」
「まだ半分以上残ってるのに?」
「ふが」
蓮は俺の手からコーヒーのカップを奪って、すぐ前にあるテーブルに置いてしまった。
急に手持ち無沙汰になってしまって、ソワソワする。
「佐久間くん、俺さ」
「う、うん」
「結構気が長い方だとは思うんだけど……そろそろ限界なんだよね」
「ぅ」
「ここで佐久間くんが言わないなら、俺も一生言わない」
「えっ」
「なんとなく俺もそうじゃないかなぁ……って悶々としたまま、何の進展も無しにずっとこのままだけど。……それでもいいの?」
「っ……よ、良くな、い」
やだよ、そんなの。
ずっとひとりでモダモダしてるのなんて、絶対やだ。
「じゃ、教えてよ。佐久間くんの気持ち」
「俺……」
「俺のこと、どう思ってるのか。教えて」
じっと見つめられて、心臓がバクバクしてる。
不意に握られた手が熱くて、泣きそうになりながら恐る恐る握り返した。
「……待って、ちょっとだけ」
「うん」
「心臓、口から出そ……」
「いいよ。落ち着くまで待つから」
「ええ……すげぇ圧だったのに、急に優しい……」
「アッハ、そんなすごかった?」
「すごかったよ……言わないと一生このままとか、そんなん……」
すうー、はあー、と深呼吸をして。
繋いだのとは反対の手で、心臓の辺りを押さえながら――
「蓮が、好きだよ……」
絞り出した声は、ちょっとだけ掠れていた。
*****
言った〜〜〜⸜(*˙꒳˙*)⸝
スケベの続き書くって言ってたのにな……おかしいな……
コメント
2件

もうもうもう、最高でした…っ!😭💕 佐久間くんのテンパりっぷりと、蓮くんの余裕ある感じのギャップがたまらんかったです!特に「泣き顔も可愛い」って言う蓮くん、優しすぎでしょ…あと「遠いと話が出来ない」って腕に引き寄せるのも反則級ですよ! 最後の告白シーン、声が掠れてる描写がすごくリアルで、こっちまでドキドキしました。ずっと気持ち閉じ込めてた佐久間くんがやっと伝えられて良かった…!蓮くんの返事、次話が待ち遠しいです🌙🤍