テラーノベル
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翌日、昨日のバーベキュー参加者全員が、莉々子の勤めるサーフショップへ集まった。
天気は快晴で、絶好のサーフィン日和だ。
この日、賢太郎は撮影の予定がなく、皆と一緒に参加した。
元夫の啓介も時間通りに到着したが、昨夜は藤沢駅前のホテルに宿泊したらしい。
(好き勝手に遊び惚けてて、あの嫉妬深い奥さんは怒らないのかしら?)
葉月は内心で呆れていた。
メンバーは、それぞれの身体に合ったウェットスーツを借りて着替えた。
葉月と莉々子は、サーフィン初挑戦の亜美と彩香の着替えを手伝う。
「うわー、結構きつーい」
「ピチピチですね。ファスナー上がるかなぁ?」
四人の中で最もふっくらしている彩香が、不安そうに言った。
「大丈夫よ、ほら、閉まったわ」
「わー、ありがとうございます。なんか変な感じー」
「私もー! 水着を着たのだって久しぶりですもん」
そこで莉々子が言った。
「海に入って波と戯れれば、もっと気持ちがいいわよ。さあ、行きましょう!」
「「はーーーい!」」
着替えを終えた女性陣は、サーフショップの更衣室を出た。
外へ行くと、すでに着替えを済ませた男性陣が、レンタルするボードの前にいた。
「お、来た来た。みんなサマになってるじゃん」
「でしょう?」
「着替えただけで、気分はサーファーガールよ!」
「ハハッ、確かに。僕もサーファーになった気分ですよ」
舟木は笑顔で彩香に言うと、彩香も微笑み返す。
それを見た葉月と莉々子は、目と目で会話する。
(フフッ、バッチリね)
(いい感じにまとまりそうじゃない?)
その時、葉月の目にウェットスーツ姿の賢太郎が映った。
彼は雅也と同じシーガルタイプの半袖のウェットスーツを着ていた。
剥き出しの二の腕は筋肉で逞しく、日に焼けていた。ウェットスーツに包まれた部分も筋肉隆々で、服を着ている時にはわからなかった胸板の厚みが際立っている。
葉月は昨夜あの逞しい胸に抱き締められたことを思い出し、頬を赤らめた。
その時、航太郎が葉月の前に来て、得意気に言った。
「母ちゃん、俺も賢太郎さんと同じシーガルだぜ!」
そう言いながら、航太郎は腕を直角に折り曲げて筋肉を見せるポーズを取った。
それを見た葉月は、息子の筋肉をつまみながら笑う。
「アハハッ、まだふにゃふにゃじゃん」
「そんなことないよー、硬いじゃん」
「ふふっ、もうちょっと筋トレしないとねー」
「ちぇっ」
航太郎はそう言って、賢太郎の傍へ戻って行った。
その時、葉月の目に元夫・啓介のウェットスーツ姿が映った。
啓介は他の参加者と同じ長袖のフルスーツを着ていた。
(随分と身体がたるんじゃったわねぇ。ちゃんとご飯を作ってもらってるのかしら? ジム通いもやめちゃったの?)
結婚当初、葉月はパイロットだった啓介の体調を気遣い、食事にはかなり工夫を凝らしていた。
そのおかげで、啓介は結婚当初の体型をずっと維持し続けていたが、それも離婚前までの話だ。
(結婚後も体型を維持させちゃったから、だから浮気されたのか……)
そしてこうも思った。
(そっか。今の奥さんは、夫に浮気されないために、あえて啓介を太らせてるのね。フフッ、なかなか賢いじゃない)
葉月は思わず苦笑いをした。
その時、雅也の声が響いた。
「では一人ずつボードを渡しますねー。初心者の方は、安定感のあるロングボードにしましょう」
舟木と彩香、そして鈴木夫妻は、素直にロングボードを受け取った。
次に、啓介の番が来た。
「あ、私はショートで!」
「え? 野村さんはサーフィンの経験あるんですか?」
「学生時代に少しね」
「そうでしたかー!」
(え? 嘘! 初耳なんだけど……)
葉月は元夫に疑いの目を向けていたが、啓介は平然とした様子で雅也からショートボードを受け取った。
(また見え張っちゃって、大丈夫なのかしら?)
葉月は思わず笑いをこらえる。
次は賢太郎の番だ。
賢太郎は雅也と何か会話をしてから、オフホワイトのショートボードを受け取った。
(え? 嘘!)
葉月は驚いた。
なぜなら、賢太郎が受け取ったのは、加速性とアクション性に優れたハイパフォーマンスボードだったからだ。
確かに今日の海は、オフショアの風を受け時折大波が現れている。
しかし、賢太郎が上級者用のボードを乗りこなせるとは思えない。
(彼、サーフィンの経験があるのかな?)
葉月はそう考えながら、他のメンバーに続いてショートボードを受け取った。
葉月親子がボードをレンタルしているのを見て、亜美が聞いた。
「二人とも経験者だから、自分のボードがあるんじゃないの?」
「うん、あるけどずっと放置してたから結構傷んでるんだよね。だからメンテナンスしないと使えないんだ」
「メンテナンス?」
そこで雅也が言った。
「サーフボードもね、傷による腐食があったりするとリペアしなきゃだし、使う前にはワックスも塗らなきゃだし、いろいろとメンテナンスが大変なんですよ」
「ふーん、そうなんですねー」
亜美は納得した様子で頷く。
「じゃあ、海に行きましょうか! 今日はオフショアの風がいい感じなので、絶好のサーフィン日和ですよ!」
そして一同は道路を渡り、砂浜へ向かった。
コメント
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見栄を張る元旦那の大恥を....😂 そして、上級者 賢太郎さんの カッコ良い大技を見られそうですね....🏄♂️🌊☀️ 楽しみです🏄♀️🎶
元旦那はそのたるんだ身体でちゃんと乗りこなせるのかな😅 賢太郎さんのプレーみて怖気付いてもしらないぞ🤭
航ちゃんと葉月ちゃんのやり取りがホッコリ🤭 賢さま、ナント上級者ボード🏄🏄🏄 目👀がくぎ付けになりそう🤩🩷 啓介の自慢何処からやって来る〜🎵🎵🎵 もう、痛い奴過ぎて🥴 明日の更新楽しみ過ぎる〰️🤩🩷