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「あと三日かあ」
今、僕と大木は部活での練習を終えた後、市民体育館へ移動して自主練習の真っ最中である。間近に迫った練習試合に備えて。
「おい宮部。あんまり気負うなよ」
「……いや、気負ってないし」
「嘘つけよ。顔に出てんぞ? それにお前は昔から緊張しいだからな。でも、今からそんなんでどうすんだよ。ガチガチの状態で試合に出ても得るものなんかないぞ?」
「うるさいなあ。分かってるよ、それくらい」
「そうそう。大輔は緊張しいだし肝っ玉も小さすぎるのよ。あの日の夜の時もビクビクしちゃってさ。幼馴染として恥ずかしいったらありゃしないよ」
「あ、あの日の夜!?」
僕と明里を交互に見ながら困惑している光星さんである。妙な誤解をされちゃうじゃんか。
「光星さん。明里の言うことをあんまり真に受けない方がいいよ。そんな夜の出来事なんてないから」
「え? 覚えてないの? あの夜に誓ったことを」
「いや、誓ってないし。お願いだから誤解されるようなことを言わないでもらえるかな……」
「そうなんだ……。大輔は私のことを捨てちゃうんだ……。もう、生きていけない……」
「え!? え!?」
ほらね、早速誤解されてるじゃん。しかも困惑どころか混乱してる感じだし。まあ、そんな夜が本当にあったらいいのにと思ってしまう僕も僕だけど。
でも、今まで三人で来ていた場所に光星さん一人が増えただけで、こうも雰囲気が変わるものなんだなあ。なんというか、柔らかな時間が流れているように感じられてならない。彼女の穏やかな性格の賜物だな。大木、お前は幸せ者だよ。
「おい、嫁。光星に変なことを吹き込んでんじゃねえよ。お前みたいに変態がうつったらどうすんだよ」
「変態ですって……」
あーあ、明里を怒らせちゃった。まあ光星さんがいるから蹴りを入れるのは我慢してるみたいだけど。目の前で大切な恋人に蹴りでも入れられたりしたら、いくら大人しい彼女でもさすがにたまったものじゃないだろうし。
でも、明里の体全体から黒いモヤみたいなオーラが……。うん。後でストレス発散と称して僕が攻撃されるかもね。理不尽極まりないけど。
「ま、まあいいわ。で、大輔? 私から見てもいつも以上に緊張してるように感じるんだけど。いや、気合が入りすぎてすって言えばいいのかな?」
「そりゃね。当たり前だろ。一年生の身でありながら三年生を相手に試合ができるんだぞ? 気合いが入らないわけないじゃん」
「うーん。気持ちは分かるんだけど……」
珍しく曇り空な表情の明里だが、理由はそれだけじゃない。年上相手に戦うことはいい経験にもなるし、今の自分の力量を知ることもできるんだ。こんな機会は中々ない。
「でもさ、ちょっと不思議だよな。俺が選ばれた理由はハッキリしてるけど。三橋《みはし》先輩が怪我をしちゃったからな。でもさ、田西先輩は今日も練習に参加してたじゃん? 怪我したわけじゃなさそうだろうから、余計に分からないんだよ。お前がスタメンに選ばれた理由がよ」
そうなのだ。それは僕もずっと考えていた。怪我ではないということは、この前打ち明けてくれた推薦に落ちてしまったことと関係があるのだろうか。
「痛っ!! なんで蹴るんだよ明里!」
「大輔。アンタまた余計なことを考えてるでしょ? 田西先輩のことで。あのさ、この前も言ったけど、大輔はとにかく練習しなさい。試合に支障が出ちゃうでしょ」
「でも……」
「四の五の言わないの。それよりも、ちょっと見てほしいものがあってさ。少し時間もらっていいかな?」
言って、明里は一度隅の方へ行って、持ってきていたボストンバックの中からパソコンを取り出した。そして、僕が映っている動画を再生。
そして――
「ちゃんと説明はするけど、大輔? アンタ、ジャンプ力落ちてるわよ?」
……え?
【続く】
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