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「そんな事が・・・」
ムーサプロダクションで過去に行われた不正を危機、美沙が信じられないというように呟く。
摩耶は静かに視線を落とした。
「それから私は、社長と一緒になって
事務所に保管してあった千秋に関する
ありとあらゆる書類を破棄した」
一度口を開いてしまえば、もう止めることはできなかった。
「もし誰かに盗作を疑われたとしても
千秋なんて人物は最初から事務所には居ませんでした
って事にすれば、言い逃れできるから」
「なるほど・・・」
信愛は納得したように呟く。
「事務所に千秋さんの記録がなにひとつ
残ってなかったのには、そんな理由が・・」
摩耶は小さく頷いた。
「それから私は、全ての楽曲を作詞作曲してる
シンガーソングライターとして千秋の歌を歌い続けた」
千秋が遺した歌を、自分の歌として世に送り出す日々。
「そうしたら色んな人に私の歌を聞いてもらえて
夢にまで見た生活を味わえた」
発表する楽曲は、次々とトレンドに入り、世間を賑わせた。
かつて夢見た成功が、現実になった。
けれど、その成功が大きくなるほど、摩耶の中からあるものが少しずつ失われていった。
「そんな生活の中、次第に千秋に
対しての罪悪感が薄れて行った」
摩耶は自嘲するように目を伏せる。
「それからだった。私の身の回りで
不可解なことが起こり始めたのは」
その瞬間、摩耶の脳裏にあの日々の記憶が蘇る。
「私は一瞬で千秋だって思った
裏切った私の事を恨んでるんだって」
けれど、誰にも相談することはできなかった。
「相談する事、それはすなわち自分の罪を
洗いざらい自供する事になるから」
今の地位も、名声も、夢にまで見た生活も。
全てを失うことが怖かった。
「美沙さんが心配してくれてたけど、私は
気のせいだって受け流すことしか出来なかった」
「摩耶さん・・・」
美沙が悲しげに名前を呼ぶ。
摩耶はそんな彼女を見つめたあと、信愛たちへ視線を向けた。
「それから君らがきた・・・」
そして、あの瞬間、信愛たちの口から、決して聞くはずのない名前が飛び出した。
「君らが千秋の名前を口にした時
もう逃げれないって思った」
信愛は黙って摩耶の告白を聞いていた。
摩耶は唇を噛み、苦しそうに言葉を続ける。
「千秋には本当に申し訳ない事をした」
その言葉を聞いた信愛が、静かに口を開いた。
「TAMAYAさん?千秋さんと会って話せる
方法があるとしたらやりたいですか?」
摩耶は驚いたように顔を上げる。
「え?千秋と?」
「はい・・直接会って話せる方法があるとしたら
TAMAYAさんはやりたいですか?」
にわかには信じ難い話だった。
けれど、もし本当にそんな方法があるのなら。
摩耶の答えは、すでに決まっていた。
「そりゃそんな魔法みたいな方法が
実際にあるんなら、是非やりたい」
そう答えながらも、摩耶の瞳には戸惑いが浮かんでいた。
「けど・・・そんな方法が本当にあるの?」
信愛は摩耶をまっすぐ見つめる。
「はい・・・」
その返事は、迷いのないものだった。
◇ ◇ ◇
信愛は摩耶に、霊視のメカニズムと霊気の結合について説明した。
そして、自分の手と摩耶の手を縄で結び、互いを繋ぎ合わせる。
「こうすれば、霊感がない私でも
千秋の存在を目視できるのね?」
「はい・・・」
信愛が静かに頷く。
摩耶はその返事を聞くと、胸の奥に込み上げてくる感情を抑えるように息を呑んだ。
「やっと・・・千秋に」
言葉が震え、思わず喉が詰まる。
「行きますよ?」
信愛の問いかけに、摩耶はゆっくりと頷いた。
「うん・・・お願い・・・」
そう答えると、摩耶は静かに目を閉じた。
信愛も意識を集中させる。
「霊堂霊冥霊界遊鬼──
眼界共鳴戮力協心──
浄化清明合掌礼拝──
霊気をひとつに──
霊脈を繋ぎて──
霊魂結合」
最後の言葉が静かに響いた。
その瞬間、空気が僅かに揺らいだ。
摩耶は何も言わず、目を閉じたまま待ち続ける。
やがて信愛が静かに告げた。
「目を開けてください」
摩耶は恐る恐る瞼を持ち上げる。
そして、その目が大きく見開かれた。
「!!!!!!」
そこに立っていたのは、もう二度と会えないと思っていた人物だった。
「ち、千秋・・・」
震える声で、その名を呼ぶ。
千秋は生前と変わらない穏やかな表情で摩耶を見つめていた。
「久しぶりだね、摩耶ちゃん」
「千秋・・・」
堪えていたものが、一気に溢れ出した。
「うわぁぁぁん!千秋!千秋ぃ!
ごめんなさい・・ごめんなさい・・私・・私」
何度謝っても足りない。
自分が彼女にしたことを思えば、許されるはずがない。
そう思っていた。
しかし、千秋の声はどこまでも優しかった。
「ううん・・・いいの」
摩耶は涙に濡れた顔を上げる。
「千秋・・・」
「私・・・信じてた」
千秋は優しく微笑んだ。
「摩耶ちゃんなら、私の気持ちに気づいてくれるって・」
「千秋・・・ぐすっ」
「これからもたくさん歌って
色んな人たちを救ってあげてよ」
摩耶は首を横に振る。
「だめだよ・・千秋。私にはそんな資格──」
その言葉を、千秋が優しく遮った。
「摩耶ちゃんの歌声には
人を救う魔法みたいな力があるの
私はその魔法で救われた」
「千秋・・・」
摩耶の瞳から、再び涙が零れ落ちる。
千秋はそんな彼女を見つめながら、最後の願いを託すように告げた。
「歌・・・絶対やめないでよ?約束だからね?」
「うん・・・」
摩耶は涙を拭うこともせず、何度も頷いた。
「千秋の分まで・・・私・・歌うから」
千秋は満足そうに微笑む。
「摩耶ちゃんの歌・・・
待ってる人たくさん居るはずだから」
「ありがとう・・千秋」
摩耶は震える声を絞り出した。
その言葉に応えるように、千秋の姿が淡い光に包まれていく。
「あ!千秋!」
光の粒子となって、少しずつ輪郭が薄れていく。
「千秋さんが成仏しかけてます」
信愛の言葉に、摩耶は消えゆく親友を見つめながら、涙を流し続けた。
「摩耶ちゃん・・ばいばい」
やがて千秋は穏やかな微笑みを残し、光の粒子となって緩やかに消えていった。
「成仏できたんでしょうか?千秋さん・・」
朝陽は空を見上げながら小さく呟く。
その声にはどこか寂しさが滲んでいた。
朝陽はその先の言葉を続けられなかった。
信愛もまた、千秋が消えた場所を見つめたまま小さく頷く。
「そうだね・・きっと成仏できたよ」
そして摩耶は、溢れる涙を拭うこともなく、親友の名を呟いた。
「千秋・・・」
もう、その姿を見ることはできない。
それでも摩耶の胸には、千秋が遺した言葉が確かに残っていた。
#普通
野々さくら
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ありあ
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コメント
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**美月ゆめか🌸の感想** うわああああ読んだ読んだ!!😭💕💕 摩耶さんの告白、重すぎて胸が苦しかったけど、最後の千秋ちゃんとの再会シーンで全部報われた気がする…「摩耶ちゃんの歌には人を救う魔法がある」って言葉、刺さりすぎてもうダメだよ😢✨ 信愛ちゃんが霊視で繋いでくれたおかげで、やっと謝れて、許してもらえて、千秋ちゃんも成仏できた…。摩耶さんの「千秋の分まで歌う」って決意、本当に尊い。 この展開、神回すぎる!!次どうなるの?朝陽くんの寂しげな表情も気になるよ〜続き楽しみにしてる!!🌸