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花月夜れん
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柴田
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#バイオハザード
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さて、ボス部屋に戻ってきたわけだが。カグアの方も何か大変なことになってしまったようだし、さっさと片付けなければならない。だが、せっかくだ。コイツは是非とも実験のサンドバッグにしたいな。エナに見られてしまうが、まぁ今更だろう。というわけで、早速。
『瞬歩』──
「⋯⋯!」
俺は『瞬歩』でアークウィッチの背後に回り、一発蹴りを放ってみる。
「うっわ、かたっ⋯⋯」
なるほど、確かに硬い。素人の俺の蹴りではびくともしなかった。てゆーか、フツーに反動で足が痛いんだが? ムカついたし、コイツには取っておきをプレゼントしてやるか。
「無属性上位魔術──『万象付』」
俺は落ちていた、折れた矢を拾い、付与魔術を掛ける。付与する属性はどうしようか⋯⋯せっかくだし、禁術が付与できるのか、試してみるか。
『命刻』⋯⋯はダメだな。このダンジョン自体が1つの生命体だ。ダンジョンの寿命を吸い取ってしまっては、戦闘中に崩れかねない。
「なら⋯⋯これでいくか」
──禁術──『魂葬』
肉体ではなく、魂そのものを消滅させる禁術。これならば、間違えてダンジョンに当たってしまっても、崩れることはないだろう。
折れた矢が『魂葬』を纏い、青白く輝く。成功だ!ついでに『巡息術』も試してみるか。
「何だ、コイツは⋯⋯! ただの『瞬歩』でこの速さだと!? いや、それよりも⋯⋯!」
問題は、ヤツが使おうとしている魔術である。あれは明らかに危険な感じがした。
「ええぃ、『疾刃』!」
アークウィッチは『疾刃』を連続で次々と放つ。今のところ確認できたヤツの魔術は、『疾刃』と『氷鏡界』の二つ。これならば、苦労せずに勝てるだろう。
(ここは逃げて、一度体勢を⋯⋯!)
「逃げるなぁ」
俺はすかさず蹴りを放つ。この蹴りには『巡息術』を使っている。何だコイツ。ここまでやっておきながら、すぐに逃げるのか? 根性なしめ。
「ヒッ⋯⋯!?」
「さぁさぁ、どこまで耐えられる!? もっともっと、試 さ せ ろ !」
拾った矢のすべてに、俺は『魂葬』を付与し、相手に投げつける。うーん、どうしても『氷鏡界』に阻まれるな。ならば⋯⋯。
「よし、壊すか!」
「何をっ⋯⋯!?」
俺は『瞬歩』で敵の懐に入り込み、そして構える。使う『巡息術』は⋯⋯。
「流水武──『雨燕掌』!」
「なにっ⋯⋯!」
「もう習得して⋯⋯!」
よし、壊した! まぁ、一度エナから喰らっているのだ。あれはエナなりの避難方法だったのだろうが、さすがにビビったぞ。咄嗟に『氷鏡界』で守ったから無事だったが。
アークウィッチは、俺に対する防御が意味を成さないと分かったのか、諦めて攻撃に転じてくる。避ける隙間もないほどの『疾刃』の乱舞。しかし、それは俺の『氷鏡界』を貫けない。
そろそろトドメを刺すとするか。
「舐めるなよ、小僧がぁ!」
「流水武──『魂葬・雨燕射』!」
俺の投げた矢が、アークウィッチの腹に突き刺さる。たちまち魂が消滅し、残された肉体は力なく崩れ落ちた。
ギィッ⋯⋯と音を立てて、宝箱を開けてみる。中に入っているのは、錆びて古ぼけたボロボロの長剣と、ダンジョンの核。
「おー?」
「あー、これは完全にハズレなのよさ。全く、こんなに苦労して手に入れた戦利品が、ボロ剣1本だけだなんて! まぁ、あくまでここはC階級のダンジョンだし、当然なのかもね」
いや、ただのボロ剣じゃないな。研究の価値はあるかもしれない。
「エナ、この剣、貰ってもいいか?」
「別にいいのよさ。私は拳と弓以外に、武器は使わないし」
「じゃあ、ここを出るか」
俺は手にしたダンジョンの核を握り潰す。ガラス玉のようなそれは、パリンと音を立てて割れた。たちまちダンジョンは崩れ、俺たちは外に放り出される。
「面白いなぁ⋯⋯!」
「あー、疲れた! アルカス、今日は助けてくれて、ありがとなのさ! にしても、凄い魔術師だったのね」
ギクッ、このままではバレてしまうのではないだろうか。俺は慌てて『瞬歩』を使い、空へと駆け上がる。
「じゃ、じゃあ、俺はこれで!」
「あっ、ちょっと!」
あー、まぁ、別れの言葉くらいは残しておくか。
「『巡息術』、面白いものばかりだったぞ! 魔術も巡息術も、切磋琢磨すれば、もっと面白いものになる! お互いに頑張ろうな、エナ!」
そう言うと、エナはとても嬉しそうな顔をした。よし、早くカグアのところへ行かなければ。俺は急いで屋敷の方へと飛んでいった。
「がんばるのよさ⋯⋯いつかアルカスが振り向いてくれる女になるためにも⋯⋯! って、連絡先くらい教えるのよさーーー!!」
「カグア! 大丈夫か!?」
俺は窓から書庫の中に入り、カグアを探す。そこには、俺の姿をしたカグアが、床に寝そべっていた。いや、傷だらけだから、倒れているのか。
「一体、何が⋯⋯」
「うぅっ⋯⋯なんなんすか、あのアホメイド⋯⋯!」
「アステル様⋯⋯!」
あの後、アステルの影武者をしていたカグアは、クラリスに見つかり、剣術指南を受けることになってしまった。当然、魔人であるカグアは、剣を握ったことなどない。
「どうしてそこまで弱くなってしまわれたのです! ハッ、もしかして、私の指導が下手でこんなことに⋯⋯!? この不肖クラリス! 心を竜にして、もう一度鍛え直して差し上げます!!」
こうして、アステルに化けていたカグアは、完膚なきまでにボコボコにされたのだった。
「バカスカ叩きやがって、あのメイド⋯⋯! 変化解けるかと思った⋯⋯! 手も足も出なかった⋯⋯おれ魔人なのにぃ⋯⋯!」
その日は、すっかりメンタルをやられてしょげてしまったカグアを、俺が一晩中慰めるのだった。
コメント
1件
第9話読み終えたよ! アルカスの「サンドバッグ」発言からもう笑ったわ。禁術『魂葬』を矢に付与して投げまくるスタイル、めっちゃクる。拾った矢を全部使う執念、好き。そして『雨燕掌』で氷鏡界ぶち壊すシーンは脳汁出た……! 宝箱のハズレ感もリアルで、Cランクらしい報酬むなしさよ。でもあのボロ剣、研究価値あるって言ったときのアルカスの目が浮かぶわ。 エナとの別れも良かった。「頑張ろうな」からの連絡先聞きそびれて叫ぶエナ、完全にヒロインじゃん。そしてカグア……クラリスにボコボコにされるの可哀想すぎるけど、最後にアルカスが慰めてるのがじわじわ来る。日常パートとバトルパートのバランスが絶妙な回だった!