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■02■
ジャイラダの見た目は、30歳後半か40歳前半な年増な女性。
肌の色は日に焼けた小麦色。
鋭い眼光を湛えた意志の強さが見て取れる眼。
大きな団子鼻、唇も分厚く丸い、それに合わせた丸い顔の輪郭。
肩にかかるセミロングでウェーブのかかった茶髪。
体の肉付は良く、中年女らしいふくよかな体つきをしていた。
だが、それは実戦的な筋肉を脂でカバーしている肉体。
例えるなら、外見は柔らかそうな黒糖まんじゅう。
それに反して、中身はごつごつとした筋肉の岩。
その肢体にセパレーツの皮服を身に纏っている。
その上には手甲と脛当て、心臓を守る鉄製の胸当て。
あきらかに防備より攻撃に特化した装備。
更に己の権威を誇示する様に、首元は幾重にも巻かれた宝玉と貴金属のネックレス。
手首や足首も、無数のブレスレットやアンクレットで飾っていた。
腰に掛けた剣は、巨大な鉈のような幅広の片刃剣を下げている。
「よぅしっ、付いて来なっ!!」
そんな彼女は、山林の中を旅団と並走する様に走り出す。
その後を部下たちが追いかけた。
鬱蒼とした低木や葉を払い、一列になって疾風のごとく駆け抜ける
その彼等の姿は、人というよりも野猿、または野犬の群れの様だ。
無数の木々が生い茂る山林の中を、彼らは縫う様に静かに素早く走り抜け、
急な斜面を降りつつ、徐々に旅団との距離を詰めて行く。
「ほらっ!ルドラッ!!」
「もっと、早く走れっ!!」
ジャイラダは後ろからついて来る一人の男へと声をかける。
ルドラと呼ばれた男は、彼女と真逆で青白くひょろりっとした体形。
長いローブを身に纏い、一見して魔術師とわかる男。
顎を突き出し、口で荒く呼吸をしながら半ベソで追従している。
着ている長いローブの裾を両手で抱え、情けない姿で必死になって走っていた。
彼の後ろを数名の男達が、二人一組で巻物の様に丸めた大きな布を抱えて走る。
「…ちっ!!しょうがないねぇ…っ」
「先に行くっ!必ず正面に出なさいよ…っ!!」
「他の奴らは付いて来な…っ!!」
素早くルドラと他の男達に激を飛ばし、ジャイラダは走るスピードを上げた。
斜面を転がる様に走り抜け、どおっと一気に旅団の横っ腹へとジャイラダ達は襲い掛かる。
だが、斜面から飛び出す少し前。
ジャイラダ達の存在に気付いた旅団側は、すでに防御態勢を組み立ていた。
旅団の私兵とシンハ達は、襲撃される側に兵士達を集め、襲い掛かる山賊達を迎え撃つ。
ジャイラダは斜面から飛び出すと、前口上も無く、一番近い男へ幅広剣を振るった。
幅広剣が男の太ももへ直撃すると、細木をへし折る様に難なく大腿骨を両断した。
ジャイラダは攻撃の合否を確かめもせず、次の敵へと駆け寄る。
シンハ直属の兵士は馬上から、襲い来るジャイラダの幅広剣を剣で受けた。
下から突く様に振るわれた幅広剣は、兵士の構えた剣を弾き、彼の両手は打ち上げられる。
ジャイラダの攻撃をいなした兵士は、すぐさま反撃を試みようと、打ち上げられた両手を振り下ろした。
だが、ジャイラダは突進するスピードを緩めず、兵士の乗っている馬へとタックルをかます。
不意を突かれた馬は、完全にバランスを失い崩れる様に倒れ込む。
乗っていた兵士は、大きく身を吹き飛ばされる様に落馬し、背中を馬車へと打ち付け、地面に倒れ込んだ。
「いいかいっ!なるべく殺すんじゃないよっ!!」
「こいつらは、大事な|贄《にえ》なんだっ!!」
ジャイラダは部下達に向かって声を張り上げる。
山賊達は彼女の指示を忠実に守り、旅団の私兵達が即死しないダメージを与えようと武器を振るった。