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明るめ
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「はぁ…」
今日も今日とてダメダメな1日だった。職場の上司にも嫌味を言われて、冤罪をかけられて、帰り道では財布を落とす。嫌な1日。
「なんかいい事ないかなー」
いっその事上司が死んでくれれば…。いや、死んでとまでは言わない。俺と関わるのをやめて欲しい。
「神さま仏さまー明日はいい1日になりますように!!」
こんな日常が続いたら、頭が狂って生きている意味がわからなくなりそうだ。
「お前は本当に出来損ないだな、もう辞めちまえよ」
グチグチグチグチグチグチグチグチ。
いつも通り会社に出勤し、上司からの罵詈雑言を浴びる。今日はまだ生ぬるい方だが、兎に角時間の無駄だし辞めて欲しい。うっせぇんだよハゲ。
周りを見渡すも、皆業務に集中しており、此方を気にかける者は誰もいない。
「どうした?誰かが助けてくれるとでも思ってんのか?脳みそお花畑かよ。もしもお前が辞めても自殺しても皆何とも思わないさ、いらない存在だからな」
五月蝿い。右足をデブ上司に踏まれているせいで、逃げることは許されない。いつもこうだ。人生において、メリットのない時間が過ぎるのを待つ。1時間もすればストレス発散は完了するだろうから。いつ自分がターゲットになったのだろう。仕事でミスをした時?上司に歯向かった時?身に覚えしかない。
『あの……』
ドアが開き、見知らぬ人物が現れた。紺色の髪と瞳。気だるげそうな雰囲気は、俺が苦手なタイプかもしれない。
『そういうのやめたら?その子が可哀想やろ』
前言撤回。めちゃくちゃ良い奴だ。
その後も口うるさい上司に反論し、俺を助けてくれた。話を聞くに、どうやら新入社員らしい。その上今日が初出勤。こんなことして大丈夫なんか…。
『僕のパパ、ここの社長やから』
ヘラヘラと笑うそいつは、どうにも御曹司には見えない。それでもこの日常が変わる気がして、それが物凄く嬉しくて、歓迎の言葉以外見つからなかった。
「そんなこともあったか」
あれから半年後、今は御曹司こと鬱こと大先生の家に来ている。親友になった俺たちは、よく互いの家に行き酒を交わす。社長の息子の家と言っても、ただのマンションの一室で一般人と大差は無い。
『忘れたとは言わせんで?僕がかっこよーくシャオちゃんを助けたシーン』
「そんな事あったか?俺にはドヤ顔で社長に電話する大先生しか見えんかったなー」
あの後、社長に電話してあの上司は降格になった。親のコネを使い俺を助ける大先生は、最高にダサくてかっこよかったのを覚えている。
『それもあったけど!でも僕の勇気がシャオちゃんを助けたんやで』
ありがとう。普段ならさらっと言えるその言葉も、大先生相手だと小恥ずかしくて。
「そっかぁw」
どうにも口から出てこなかった。
大先生への気持ちが恋心だと気づくのに時間はかからなかった。
多分、助けてもらった時に好きになった。あの日から俺の人生は、より良いものになったのだから。
「どうしたもんかなー」
素直に好きと伝えるのが吉か。このまま黙って墓まで持っていくか。
いや、伝える。伝えなきゃ気が済まない。俺はやると決めたらやる男だ。
「よーし、明日から頑張るか〜」
結果から言おうか。完敗だ。
遠回しに好きと伝えてみたり、さりげなく手を触ってみたり、見た目に気を使ってみたり。完全に恋する乙女状態だ。それなのに大先生は見向きもしない。鈍感なのだろうか、俺が下手なだけか。
「どうしたらいいん…」
やるせない気持ちから涙が出てくる。今まで上司に言われてきた言葉が、脳みそに残っている。俺はいらない存在で、大先生はそんな俺に普通以上の感情を抱いてはいない。それどころか俺のことが大嫌いで、いつも遊んでくれるのは俺が無理矢理遊ばせてるから。俺の話は面白くないし、仕事も出来ない無能だし、これといったものも無くて、生きててもどうしようもない存在で。俺のことが鬱陶しくても、大先生は優しいから否定できないし、それで。
「いらっしゃいませ。」
目の前には見知らぬ店があった。仕事帰りの家までの道のり、毎日通るはずなのに、初めて見かけるお店。入る気はなかったが、いらっしゃいませと言われたからには足を踏み入れなければならない気がした。店内はごちゃごちゃしていた。どうやらスピ系のお店らしく、〈時を巻き戻す煙草〉〈予知夢義眼.永眠Ver.〉〈止血マフラー(試作品)〉などと、怪しさ満点の商品が豊富だ。何だか物珍しさに全部を見て回ると、1つ気になるものがあった。〈洗脳の薬〉実にシンプルな名前だ。
「あの……これって」
フードで顔の隠れた、大きな杖を持つ店員に声をかける。声を聞いてもなお、年齢性別何一つ分からない不思議な人だ。
「洗脳したい相手に1口飲ませるだけで、あっという間に自分の思い通りになる薬。1度飲ませれば効果は永遠、考慮」
洗脳、思い通り、永遠。魅力的な単語が並んでいる。本気で信じている訳では無いが、気休め程度に買ってみるのもありかもしれない。
代金を支払い、気持ち早足で家に向かう。透明な液体は何処からどう見ても水で、そのまま渡したとしても気づかれることは無いだろう。飲ますなら次の宅飲みの時よな…。本当に大先生が思い通りになったら何をしようか。小学生の頃を思い出す。あの頃は何もかもが上手くいくと思っていた。将来は未知数で、何にでもなれると思っていた。その時と同じ感覚。
「まぁ信じとるわけやないけどな」
本物でも、偽物だとしても、偽物だと思っていた方がゲイン・ロス効果が得られるだろう。
「おやすみー」
楽しみだ。
『曼荼羅〜』
意味の分からない単語を叫んで、酒を流し込む。そんな他愛ない日常でさえ幸せに感じる。
1時間ほど飲んだ。大先生は気づいていないだろうが、実は俺はそんなに飲んでいない。頭が回らなくなっては、欲望に忠実な命令をしてしまいそうだからだ。
最近流行りのゲームが。昨日の仕事内容が。あのドラマが。偶に途切れる会話に句点を打つ。
「水飲む?」
『飲むー』
はい。水(洗脳薬)を大先生に渡す。我ながら素晴らしい演技だ。1口でいいとは言われたが、効果が強まるかも、なんて阿呆な考えで全部注いできた。喉が動くのをしかと観察し、コップが半分程になったタイミングで、小声で呟いた。
「投げチューして」
ちゅ。口をタコの形にしてこちらに手を向ける大先生。
え、マジ?
「な、なに、何しとん大先生w」
平然を装おうにも、そこまでの演技力はなかった。本物、本物かもしれ、ない本物かも。
いや、まだ分からない。ノリのいい大先生のことだ。投げちゅーくらい普段の感じでやってくれただけかもしれない。もっと大先生が嫌がるようなことにしなきゃ。確かめるためにも。
「大先生、明日俺の分の仕事全部やってくれるんよな?」
もしも断られても、冗談にできる命令。
『何言いよんシャオちゃん……』
やっぱり偽も
『当たり前やん』
本物だ。仕事嫌いの大先生がこんなこと言うわけが無い。洗脳できちゃった…。どうしよう。犯罪?俺捕まる?いや、今はそれどころじゃない。大先生は俺のお人形。俺の言うことをなんでも聞いてくれる存在。
「大先生は俺のこと大好きよな、愛してるもんな、世界一大切な存在やろ?俺のためなら何でもできるもんな」
大先生は、大先生自身にとって自分が1番大切で、自分以外が1位になることは無いと思っていたけど。
『シャオちゃんのこと愛してる。世界一好きやわ』
今の大先生の中には俺しかいない。今は俺が1番だ。
「大先生、お手」
あれから2ヶ月。大先生は何でも言うことを聞いてくれる。今だって、フリフリのミニスカートを履いて四つん這いで女物のパンツをチラつかせながらお手をするという、何とも変態的な眺めだ。
「じゃあ次はちんちん」
俺の命令に何の疑問も抱かずに、素直に従ってくれる。屈辱的だろうに、俺を恋人だと思い込む大先生は、凄く可愛い。
『シャオちゃん、褒めてや』
今日も一日いい子にできたで?上目遣いであざとく呟く大先生。それでも下に見える勃起ちんこは凶暴で、俺の二倍はあるだろう。
「大先生はいい子やから、待てできるよな」
『出来る、出来るから早くして…』
物欲しそうな瞳で見つめられる。後ろは事前に解しておいたのでこれ以上待たせる必要は無いが、待っている大先生の姿が可愛いのでつい意地悪をしてしまう。
「ん、入れていいよ」
両手でおしりを持って、出来るだけ穴を広げる。普段の大先生なら、男に入れるなんて死んでも嫌だと言うだろうか。大の女好きで、色んな女の子を取っかえ引っ変えするような奴が、俺だけに一途なのがとても興奮する。例えそれが洗脳であっても。
「お゛♡…きたぁ♡♡」
『シャオちゃんッ、ぁ、♡きもちいい?』
「あ゛ぁ♡気持ち、いッッから♡もっと♡♡」
最初のうちはゆっくりなピストンも、後半になるにつれてどんどん早くなっていく。大先生の顔から落ちた汗は塩っぱくて、俺の涙と混ざれば1種の調味料だ。
『シャオちゃんッ、シャオちゃ♡♡』
唾液と涙に塗れた顔で、眉を下げて、何度も何度も俺の名前を呼ぶ大先生。名前を呼ばれる度に身体が反応し、脳が喜んでしまう。
余裕のなさそうな顔にキスをせがめば、体制を低くして唇をくっつけてくれた。上からも下からもえっちな音が聞こえてくる。自分以外に口内を支配される感覚が好きだ。自分の身体なのに、自分の身体じゃない感じがして。まるで洗脳されているかのような感覚。
「お゛、イきそッッ♡♡」
素直に快楽を受け取った身体は、欲を発散する。勢いなく出た白い液体は、べちゃべちゃしていて全部死んでいる。かわいそ。
『シャオちゃん、僕もッ、イっていい?♡』
俺の許可無しじゃ射精も出来ない大先生。そんな状況にすら興奮してイってしまった。
「イッッ♡♡あ゛あッ…いい、よ♡だい…せんせい、もイこ?♡」
何度も何度も腰を振って、射精を促す。
『腰振らッない゛で…ぁイくッ…♡』
大先生の精液を捨てるのは勿体ないから、必ずナカに出してもらうことにしている。後処理をしないから、よくお腹を壊すけどそんなの関係ない。自分のお腹に大先生の遺伝子が居るってだけで興奮する。俺が女だったら孕めたのに。って思ってた時期もあるけど、大先生の興味を子供に奪われるかもしれないと考えると、子供なんて絶対にいらない。大先生は俺だけ見ていればいい。
薬の効果は永遠で、もう二度と自我を出せない大先生を横目に今日も呟く。
「俺のことすき?」
何度も、何度も。毎日確認する。薬の効果が切れてないか心配で、それでも切れてて欲しいと思う自分も居て。
『ずっと愛してるで、シャオちゃん』
その返信に安心して眠りについた。
仕事で虐められている君を僕が助ける。君は助けてくれた僕に多少なりと感謝と尊敬を思い、やがてそれは恋心になる。君は僕を惚れさせようと頑張るが、僕は一切靡かず思うようにはいかない。悩んだ君は、帰り道洗脳能力があるという液体を購入する。半信半疑で僕に使えば、それはどうやら本物で僕は君の思い通りになる。君は罪悪感を感じつつ、僕と永遠に幸せに過ごす。完璧なハッピーエンドだ。
完璧な話には完璧な配役を。何もかもが単純で、環境も能力値も容姿も思想も妥協はしない。僕の人選に間違いはなかった。シャオロンはこの話の主人公には最高だった。何もかもが完璧だった。
僕が飲んだのはただの水で、洗脳能力なんて皆無なこと以外。
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会話文多めにしてみた。
またね