テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ったく…………女って生き物は……何なんだよっ……」
圭は、ホテル最上階のバーに向かうと、カウンターの隅でウィスキーを煽っていた。
「……クリスマスイブに婚約破棄されて…………クリスマスに遊びだった女に関係を終わらせられて…………」
彼は、ウィスキーのロックを追加で注文すると、カウンターの中にいるバーテンダーが、困惑した表情を覗かせながらも微笑みの仮面を被り、圭の前にお酒を差し出した。
グラスを手に取り、半分ほど一気に喉へ流し込む。
強烈なアルコールの香りに咽せ、彼は慌ててコースターの上にグラスを置いた。
「まさか……二日連続で…………女とサヨナラするなんてな。情けない……」
俳優ばりの涼しげな顔立ちに、声優ばりのイケてる声の持ち主、と言われ続けた圭にとって、こんな屈辱は人生初めての事だった。
これまでも、圭は本命の恋人がいながらも、千夏と再会してから並行して、関係を継続させてきた。
かつての婚約者、園田真理子も、弟から寝取ったとはいえ、彼の歴代本命彼女の一人である。
彼はパーティに招かれると、クールな顔立ちにキリッとした目元のイケメンの容姿、さらに低めの甘やかな声も相まって、女性の招待客に声を掛けられる事が多い。
一流ブランドのスーツに身を包み、スマートな身のこなしと、高校・大学と慶城で過ごしてきた高学歴、しかも、ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツの次期社長、御曹司である。
女たちが、圭を放っておくわけがない。
承認欲求が強い彼は、行く先々でチヤホヤされると、爽やかな笑み湛えている裏側で、ニヤリと卑しく唇を緩めていた。
それが、だ。
二〇二四年のクリスマスイブと、クリスマスには、二人の女から別れを告げられ、彼のプライドは、ズタズタに引き裂かれている。
「くっ……くぉろしの……いると、くるぃるまる…………。うぉれは……っりょぉ…………うぁすれれぇくぁらなぁっ……!?」
既に、ウィスキーをロックで数杯ほど飲んでいる圭は、カウンターに腰を下ろしながら、身体を前後に揺らし、船を漕いでいるような状態である。
それでも、酒を辿々しく喉に流し込む、彼の手は止まらない。
圭は、そこら辺にいるタチの悪い酔っぱらいと化していた。
「お客様。大分深酒されているようですので……今日はもう、お止めになった方が……よろしいかと……」
圭の泥酔した状態を見かねたバーテンダーが、引きつり笑いを浮かべながら、丁寧な口調で彼を止める。
「わぁったよ……。くぁえりゃ……いぃんらお? くぁえりゃ……」
足元がおぼつかない様子の圭は、捨て台詞を吐き、クレジットカードで会計を済ますと、フラフラと蛇行しながら、バーを後にした。