この作品はいかがでしたか?
26
この作品はいかがでしたか?
26
私は個人で絵のモデルをやっている。今日はちょっと変わったお仕事で、ある田舎の廃校に来ている。そこは以前まで小学校だったところで、今は廃校になって誰もいない。ここが使われなくなった理由は簡単だ。少子化で生徒数が減ってしまって学校がなくなったのだ。
今日のお客さんは大学の美術サークルの人たちらしい。小学校という、普段は使えない場所でヌードモデルを描けるということで、この場所を選んだんだって。
「こんにちは~」
私が挨拶すると、大学生たちが私の周りに集まってきた。
「じゃあ今日はよろしくお願いします」
「はーい」
というわけで私はさっそく準備する。服を脱ぐと、サークルの人たちが念のため、といって用意してくれた金庫にしまう。それからバスタオルに着替えて……あれ? バスタオルが用意されていない。忘れたのかな? ちょっと面倒だけど、もう一度服を着て……あっ、金庫のカギを貰うのを忘れてた! もぉー、なんなのよ、これ。仕方ないからこのままでいいか、どうせ裸を見られるんだし。ちょっと聞いてこよう。
「あのー……」
隣りの部屋をのぞいてみたが、誰もいなかった。あれ? 他の場所で準備しているのかな?とりあえず、部屋を出て廊下を歩いてみる。廊下にはたまにガラスの破片が散らばっているところもあり、ちょっとあぶない。おまけに床が割れている箇所もある。
んー、誰もいないなぁ。どこにいったんだろう。その時、何か音がした気がして立ち止まる。なんだろ? 音の出所を探すためにあたりを見回してみるけど、特に何も見当たらない。
気のせいかな? 再び歩き出そうとしたとき、今度ははっきりと聞こえた。…………声だ。それも悲鳴のような。え!? 何事!? あわてて周りを見るけど、やっぱり何も見えない。でも確かに今、女の人の悲鳴のようなものが……。まさか幽霊とかじゃないよね?
まあいいか。とにかく行ってみよう。廃校の中はあちこち通れなくなっていて、なかなか思うように進めない。なんとか下に降りられる階段をみつけ、下ってみると、女の子と男の子がいた。女の子の方が泣いているようだ。
「大丈夫?」
声をかけると二人はこちらを見た。二人とも小学生くらいだろうか。
「お姉ちゃん誰?」
「ああ、驚かしてごめんね。私は小鳥遊っていうの。君たちは?」
「ぼく、ゆうすけ」
「わたし、りょうこ」
二人はそれぞれ自己紹介をする。この子たち、姉弟なのかな? それにしてもなんでこんなところに子供がいるんだろう。親御さんは近くにいないみたいだし。
「ねえ、なんでここにいるの?」
そう聞くと、二人が泣きそうな顔になった。しまった、また泣かせちゃう。
「学校をみつけて、遊びにきたんだけど、でられなくなっちゃった」
りょうこちゃんの言葉を聞いて納得する。なるほど、そういうことか。きっとこの辺りで遊んでいて迷い込んだんだろう。「わかったわ。一緒に外に出ましょう」
二人を連れて校舎を出る道を探すことにした。(続く)
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!