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着いた……
ここが206号室。晴(はる)が入院している部屋だ。まぁここの病院は1病室につき3人か4人くらいが入院しているので晴の部屋というわけじゃないんだけど。
ガラガラガラ───
今日のこの扉はこの前よりもはるかに重く感じられた。
「は、晴!!私達のこと覚えてるかな?」
「あ、え~と……確か、陽夏さんと、静花さん?でしたっけ?」
「うんうん、覚えてくれてて良かったよ……」
「それで……今日はまたどういったご要件でしょうか?」
「え?あ〜えーっとー……」
「あの、もちろん私を心配してくれてるっていうのはわかってるんだけど……そのー、距離感?が掴めないっていうか……」
「あ〜、うん、そうだよね~……えーと今日はね……えー……」
陽夏が口籠っている。やはり、心の整理はできても言葉を考えてくることまではできなかったようだ。
「今日用があるのはどちらかといえば私の方です!!」
「え?静花?」
「陽夏、今まで隠すようにしててごめん。でも陽夏にはこれは重すぎると思ったから一人でやってたっていうことは分かって欲しいの。」
「重すぎる?待って、全く話が見えてこないんだけど……」
「追って説明するよ。そして……晴、今から話すことで晴は何かを思い出すかもしれない……でもそれは苦しいものかも分からない。それでも聞く覚悟はある?」
「……大切な友達を取り戻すためですもんね。いいですよ……それに、いつかやらないといけないことですし。」
「分かった。じゃあまず晴がどんな環境にいたかっていうことを話すね。」
そう一呼吸おいてから私はゆっくり話し始めた。
「晴が通っていた学校は、開校当初からいじめが絶えないような学校だったらしいの。流石にこの話は表には出なかったみたいなんだけど、卒業生の話とか学校の事故件数、年間退学者人数を見てると“相当な人がいじめの被害に遭っている”ってことがわかってくるんだよね。中には、自殺を図る人や、誰かの手によって殺されてしまう人もいたみたいだったし。そしてね、私は晴がなんかしらの事件に巻き込まれたんじゃないかなって思ったの。」
「え!?ちょっと待ってよ!!じゃあ晴はいじめられてたって言いたいってこと?」
「確証があるとまでは言い切れないけど多分そ……って、晴!!大丈夫!?」
話すのに夢中で気づけなかったが晴は頭を抱え、青ざめてひどく怯えていた。
「ウッ、ハァ、ッ、ハァハァ、ウッ……」
「晴?どうしたの?!大丈夫?」
陽夏が話しかけるが返事はない。というかおそらくまともに返事ができるような状況ではないのだろう。当然といえば当然だ。今彼女の中ではいじめの記憶が無理やり頭の引き出しから引っ張り出され、いじめを追体験しているようなものなのだ。しかし、こうなることは分かっていた。辛い思い出を思い出すというのはこういうことだ、と。
「もう、もう、いい、です……これ……以上は……も、う……」
晴は今にも絶えてしまいそうな呼吸をしながらゆっくり眠りについてしまった。
私は……間違えてない?よね?