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#異世界
金山ジョージ
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もな
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羽海汐遠
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コメント
1件
みぅです🤍🥀 第2話、読み終えました。 ドキュメンタリー動画を見ながら湊と結衣が当時を振り返るスタイル、すごく没入感がありました。 「仮の場所だったものが生活になった」って言葉、胸に刺さりました。 五年前の混乱と今の日常が静かに重なって、湊の「もう戻れないな」にすごく共感しました。 連載続きが気になります…!
第2話 ヒノタマの記憶
朝。
立花湊は、目覚ましより先に端末の振動で目を覚ました。
枕元に置いた画面へ手を伸ばす。
通知が一件。
動画サイト。
人気急上昇一位。
五年前、世界を変えた日
ヒノタマ・パンデミックとLinkcity急成長の記録
公開から三時間。
再生数、八百七十万。
湊は眠そうな目を細めた。
「もうそんな時期か」
五年前。
そう考えただけで、部屋の静けさが少し変わった気がした。
あの頃は、Linkcityという名前を知らない人の方が多かった。
今では考えにくい。
仕事。
買い物。
食事。
学校。
旅行。
ゲーム。
生活の中にLinkcityが入り込みすぎて、わざわざ意識することすら減っている。
湊は端末を持ったまま起き上がった。
灰色の部屋着。
少し乱れた茶色の髪。
動画を再生する。
画面が切り替わった。
静かな音楽。
五年前の日付。
その下に、当時の街の映像。
人。
駅。
店。
道路。
今より人が多い。
それだけで、妙に昔に見えた。
画面の中央へ八木沢文乃が現れる。
肩より少し短い茶色の髪。
細いフレームの眼鏡。
ベージュのジャケット。
紫色のシャツ。
落ち着いた声が流れる。
「五年前の今日、世界各地で感染拡大への警戒が急速に強まりました」
映像。
病院。
検査施設。
閉鎖された施設。
人の少なくなった駅。
自宅待機を求める通知。
「後にヒノタマ・パンデミックと呼ばれる出来事です」
湊はベッドから降りた。
動画を小さな画面にして、視界の端へ固定する。
洗面台。
顔を洗う。
動画は続いている。
「現在では生活基盤の一つとなっているLinkcityも、当時は現在とはまったく異なるサービスでした」
湊の手が止まった。
画面を見る。
五年前のLinkcity。
古い映像。
中央広場。
現在より小さい。
建物も少ない。
アバターも少ない。
ゲームの広告。
交流イベント。
音楽イベント。
個人制作ワールド。
湊は思わず笑った。
「狭いな」
今の中央広場とは比べものにならない。
現在なら、一つの都市だけでもあれより広い。
映像の中では、数百人ほどの利用者が歩いている。
現在なら同じ場所に数万人いても珍しくない。
「当時のLinkcityは、主にゲーム、交流、イベントを目的として利用されていました」
映像。
利用者。
遊ぶ。
話す。
写真を撮る。
「仮想現実へ遊びに行く」
画面に文字。
「この言葉が、当時のLinkcityをよく表しています」
湊は冷蔵庫を開けた。
麦茶。
取り出す。
コップへ。
動画。
利用者数のグラフ。
ヒノタマ・パンデミック以前。
緩やか。
一。
基準値。
一か月後。
三。
三か月後。
十一。
半年後。
三十七。
一年後。
百を超える。
グラフが急激に上がっていく。
湊はコップを持ったまま止まった。
「こんな増えたんだ」
知っている。
Linkcityが急成長したことくらい。
でも。
数字として見ると。
違う。
動画では、グラフが画面の上まで伸びていく。
「感染拡大が始まった直後、最初に大きく動いたのは企業でした」
映像。
五年前。
企業の会議室。
机。
端末。
「多くの企業が出勤人数を減らす必要に迫られました」
次。
当時のLinkcity。
簡素な仮想オフィス。
長机。
椅子。
資料画面。
アバター。
「そこで注目されたのが、すでに複数人で同じ場所へ接続できるLinkcityでした」
最初は。
会議。
それだけ。
会議室を作る。
社員が接続する。
資料を共有する。
話す。
終わる。
しかし。
数週間。
変わる。
会議室の横。
仕事場。
さらに。
休憩室。
資料庫。
研修室。
受付。
企業ごとの建物。
「仮想会議のための場所だったものが、仮想オフィスへ変化していきます」
湊は麦茶を飲む。
今の会社。
Linkcityオフィス。
毎日。
普通に出勤する。
アバターで。
現実の自分は。
この部屋。
五年前。
それが。
急ごしらえだった。
映像。
当時の会社員。
自宅。
小さな机。
ノート端末。
安い椅子。
慣れない操作。
音声が途切れる。
資料が開かない。
アバターが動かない。
会議へ入れない。
「初期には多くの問題もありました」
湊が笑う。
「今でもたまにあるけど」
動画。
通信障害。
利用者急増。
サーバー増強。
接続待ち。
五年前。
Linkcity接続。
待機人数。
二百八十一万人。
「うわ」
今なら。
ほとんど見ない。
世界規模の巨大イベントで、わずかに待つ程度。
当時。
普通の平日。
二百万人以上。
「利用者の急増は、Linkcity運営側の想定を大きく上回っていました」
画面。
設備。
追加。
通信網。
拡張。
映像配信方式。
改良。
端末側の処理。
軽量化。
「現在使われているストリーミング技術や予測通信の基礎も、この時期に急速な改良が進められました」
湊は机へ座った。
いつもの椅子。
疲れにくい。
マウス。
キーボード。
コントローラー。
全部。
Linkcity仕様。
五年前の映像。
普通の机。
普通の椅子。
普通の通信。
長時間の仮想現実利用を前提としていない。
その違い。
大きい。
動画。
次。
学校。
「企業に続き、教育機関も動き始めます」
現実の教室。
机。
誰もいない。
次。
Linkcity。
仮想教室。
アバター。
先生。
生徒。
「当初は動画授業や資料配布を利用する学校も多くありました。しかし、友人との会話や共同作業が難しいという問題が起こります」
そこで。
Linkcity。
教室。
廊下。
図書室。
体育用ワールド。
実験用ワールド。
校庭。
学校が。
作られていく。
湊は画面を見る。
「ここまで再現してたんだ」
当時の学校。
現実の校舎そっくり。
教室。
机の配置。
掲示物。
窓。
廊下。
生徒が。
アバターで歩く。
「最初は現実の学校をそのまま再現する例が多く見られました」
数か月後。
変わる。
教室。
壁。
なくなる。
巨大な地図。
生徒。
その中へ。
歴史。
昔の都市を歩く。
理科。
巨大な細胞模型。
数学。
立体図形。
「やがて、現実の教室を再現する必要はないという考えが広がります」
湊は少し身を乗り出した。
今では。
普通。
授業内容に合わせて。
場所が変わる。
地理なら。
現地再現。
歴史なら。
過去の街。
理科なら。
巨大模型。
五年前。
始まった。
通知。
宮原結衣。
起きてる?
湊。
起きてる。
結衣。
ヒノタマ特集見た?
湊。
今見てる。
数秒。
結衣。
私も。
湊。
一緒に見る?
結衣。
行く。
湊はLinkcityへ接続した。
自宅ワールド。
現実の姿。
灰色の部屋着。
Linkcity。
淡い茶色の短い髪。
黄緑のシャツ。
灰色のジャケット。
茶色のパンツ。
映像を自宅ワールドの壁へ。
拡大。
大画面。
転送音。
結衣。
現れる。
長い紫色の髪。
黄色の上着。
グレーのスカート。
「おはよう」
「おはよう」
「八百七十万だったよね?」
「今は?」
結衣が確認する。
「九百三十万」
「増えるの早いな」
「五周年だからかな」
二人。
ソファ。
動画。
再開。
次。
飲食店。
現実の店。
客。
減る。
休業。
「飲食業界では、さらに大きな問題がありました」
料理。
現実でしか。
食べられない。
Linkcityへ。
料理の映像を置いても。
腹は満たされない。
「そりゃそうだ」
結衣が言う。
湊が笑う。
「今なら普通だけど」
映像。
最初の試み。
Linkcity店舗。
利用者。
仮想店舗で注文。
現実の店。
調理。
配送。
利用者の家。
到着。
「現在の仮想外食の原型です」
結衣が画面を指す。
「配送、人だ」
「ほんとだ」
五年前。
人間の配達員。
現在。
AI配送ロボットが中心。
当時。
まだ。
人が運んでいた。
雨。
暑さ。
感染対策。
問題。
「この時期をきっかけに、非接触配送技術への投資も急速に増加しました」
小型配送機。
自動走行。
遠隔操作。
改良。
数年。
現在のAI配送網。
「全部つながってるな」
湊が言った。
「Linkcityだけが変わったんじゃないんだね」
「現実側も変わってる」
Linkcityで注文。
現実で作る。
AI配送。
現実へ届く。
二つ。
別々ではない。
つながる。
動画。
小売店。
服。
家具。
食品。
家電。
「小売業もLinkcityへの進出を開始します」
最初。
商品写真。
一覧。
次。
仮想店舗。
棚。
商品。
手に取る。
家具。
自宅ワールドへ仮置き。
現実の部屋。
寸法。
確認。
服。
アバター試着。
現実用商品。
配送。
仮想商品。
即時追加。
「この頃から、Linkcityは単なる仮想空間ではなく、現実の商品を選ぶ入口としても使われるようになります」
結衣が自分の上着を見る。
「これLinkcity商品」
「知ってる」
「現実にはない」
「俺のジャケットも」
「いくら?」
「覚えてない」
「買いすぎ」
「結衣に言われたくない」
二人。
笑う。
画面。
五年前。
アバター。
初期。
種類。
少ない。
現実再現。
簡単なキャラクター。
現在ほど自由ではない。
「当時、アバター制作には専門知識が必要でした」
制作ソフト。
3Dモデル。
調整。
動作設定。
「現在のように、画像や文章から短時間で制作できる環境はまだ整っていません」
結衣が自分の紫色の髪を触る。
「これ今なら一分くらいだよ」
「昔だったら?」
「作れない」
「結衣には無理?」
「無理」
「俺も」
「だから今使ってる人増えたんだろうね」
動画。
生成AI。
発展。
画像。
文章。
立体化。
動作。
自動調整。
アバター。
増える。
「技術の進歩によって、利用者自身がLinkcityを作る側へ回るようになります」
ワールド制作。
最初。
専門家。
ゲームエンジン。
プログラム。
数か月。
現在。
プロンプト。
文章。
生成。
数分。
本格制作。
ゲームエンジン。
大量のアセット。
「この変化によって、Linkcity内のワールド数は爆発的に増加しました」
グラフ。
ワールド数。
十万。
百万。
一千万。
さらに。
増える。
結衣が笑う。
「今度は増えすぎ問題」
「第六話みたいなやつだな」
「面白い場所あっても見つからない」
「昨日も探してた」
「見つかった?」
「利用者三人の喫茶店」
「少なっ」
「良かったよ」
「そういうのあるから自分で探すの楽しいんだよね」
画面。
八木沢。
「ヒノタマ・パンデミック以前から、Linkcityにはワールド制作機能がありました。しかし、利用者が増えたことで、作る人も急増しました」
ゲーム。
店。
美術館。
住宅。
観光地。
企業施設。
学校。
ライブ会場。
個人の部屋。
小さな公園。
「使う人が増えたことで、作る理由も増えたのです」
湊は。
その言葉を聞きながら。
自宅ワールドを見る。
この場所も。
誰かが作ったアセット。
生成AI。
自分の指定。
組み合わせ。
山。
川。
家。
家具。
五年前なら。
自分には作れなかった。
今。
普通に住んでいる。
午前十時。
動画。
一時間を超えている。
まだ。
続く。
次。
利用者への取材。
五年前。
十九歳の大学生。
Linkcityを使い始めた。
理由。
授業。
次。
会社員。
理由。
仕事。
次。
高齢者。
理由。
離れて暮らす家族。
次。
子ども。
理由。
友人。
次。
飲食店。
理由。
営業。
みんな。
最初の理由。
違う。
でも。
そのまま。
残った。
授業のために始めた人が。
ゲームをする。
仕事のために始めた人が。
旅行する。
家族に会うため始めた人が。
買い物をする。
「入口が違うだけなんだ」
湊が言った。
結衣が頷く。
「私も最初、友達と話すためだった」
「そうだったの?」
「うん」
「ゲームじゃない?」
「あとから」
「俺は何だったかな」
五年前。
湊。
十九歳。
端末。
Linkcity。
入れた。
理由。
覚えている。
友人から。
送られてきた。
一緒に入ろう。
それだけ。
最初。
面倒だった。
アカウント。
設定。
アバター。
操作。
「俺、最初は誘われたからだ」
「誰に?」
「昔の友達」
「今も会う?」
「たまにLinkcityで」
「現実では?」
「三年くらい会ってない」
「でもLinkcityでは会ってるんだ」
「そう」
不思議。
三年。
現実では。
会っていない。
でも。
顔を見て。
話して。
ゲーム。
している。
だから。
会っていない。
という感覚も。
薄い。
動画。
パンデミック開始から。
三か月。
Linkcity。
利用者。
十一倍。
半年。
三十七倍。
「急激な利用者増加によって、当時は様々な混乱も起きました」
接続障害。
詐欺。
嫌がらせ。
不正取引。
偽店舗。
アカウント盗難。
「管理体制が利用者増加へ追いつかなかったのです」
当時。
人間の管理担当者。
通報。
大量。
処理。
遅れる。
数日。
数週間。
「これ大変そう」
結衣。
「今なら管理AIが見る」
「五年前は人?」
「人中心だったみたい」
画面。
管理AI。
導入。
ChatGPTから発展した対話技術。
状況分析。
通報整理。
パトロール。
異議申し立て。
「現在の管理AIの原型も、利用者が急増したこの時期に導入されています」
湊は少し苦笑した。
「誤判定もあるけど」
「湊、巻き込まれたもんね」
「思い出させるな」
「解除されたからいいじゃん」
「面倒だった」
便利。
でも。
完璧ではない。
昔。
人が追いつかない。
今。
AIが間違える。
問題。
形を変える。
動画。
ヒノタマ・パンデミック。
一年後。
感染拡大。
落ち着き始める。
現実。
人。
戻る。
店。
再開。
学校。
戻る。
会社。
出勤。
「この時、多くの専門家がLinkcity利用者は減少すると予測していました」
グラフ。
湊が。
画面へ顔を近づける。
利用者。
減らない。
少し。
伸びが緩やか。
でも。
下がらない。
そして。
再び。
増える。
「減ってない」
結衣。
「今知ってるから当然だけど」
「当時は戻ると思ってたんだろうな」
動画。
企業。
社員。
調査。
通勤。
時間。
交通費。
オフィス維持費。
Linkcity。
比較。
「企業側には、以前の勤務形態へ完全に戻す理由がなくなっていました」
社員。
家。
Linkcity。
仕事。
「利用者側も同様です」
通勤。
一時間。
Linkcity。
数秒。
天候。
関係なし。
服。
最低限。
食事。
配送。
「一度成立した生活様式は、感染症が落ち着いたからといって消えるものではありませんでした」
湊は。
自分の現実の姿を確認する。
灰色の部屋着。
Linkcity。
ジャケット。
今。
まさに。
それ。
「戻らなかったんじゃなくて」
湊が言う。
結衣が見る。
「何?」
「戻す理由がなかったんだな」
「たぶん」
便利。
だから。
残る。
感染症対策。
だけではない。
時間。
移動。
お金。
天気。
距離。
言葉。
様々な問題。
Linkcity。
使える。
「そして、ヒノタマ・パンデミック後、もう一つの変化がLinkcityの定着を後押しします」
画面。
天気。
高温。
豪雨。
台風。
低温。
湊と結衣。
同時に。
「ああ」
分かった。
現在。
普通になった。
外の環境。
夏。
五十二度。
春。
秋。
豪雨。
台風。
冬。
氷点下十五度。
「外出しにくい日が増加したことで、Linkcityは感染症対策から、天候に左右されにくい生活基盤へ変化していきました」
企業。
天候警報。
Linkcity勤務へ。
学校。
Linkcity授業。
店。
配送。
イベント。
仮想会場。
「今ではこっちの理由の方が大きい日もあるね」
結衣が言う。
「夏とか」
「外出たくない」
「五十二度は出たくないじゃなくて、出ない方がいい」
「そうだった」
動画。
住宅。
変化。
広さ。
駅。
距離。
それだけではない。
通信。
防音。
室温。
停電対策。
机。
椅子。
操作機器。
「住宅市場ではLinkcity仕様という新しい評価基準が生まれました」
湊が笑う。
「俺、引っ越したばっか」
「それで選んだんだっけ」
「通信と防音」
「広さは?」
「前より狭い」
「でも快適?」
「かなり」
画面。
現実。
小さな部屋。
Linkcity。
巨大な住宅ワールド。
「現実側の住宅は、生活に必要な機能を効率よくまとめる方向へ変化する例も増えています」
現実。
クローゼット。
少ない。
Linkcity。
衣装。
大量。
「衣服の所有にも変化が見られます」
結衣が。
笑う。
「私だ」
「何着?」
「現実?」
「Linkcity」
「数えてない」
「怖い」
動画。
決済。
Linkcity用クレジット。
ポイント。
現実商品。
仮想商品。
一つの決済。
「経済活動もLinkcity内外をまたぐ形へ変化しました」
仕事。
学校。
食事。
買い物。
住居。
服。
ゲーム。
旅行。
五年前。
別々だったもの。
一つ。
つながる。
午前十一時。
動画。
終盤。
八木沢。
中央。
五年前のLinkcity。
現在のLinkcity。
二つの映像。
並ぶ。
左。
小さな広場。
数百人。
右。
巨大都市。
数万人。
さらに。
世界中。
接続。
「五年前、Linkcityは仮想現実サービスの一つでした」
映像。
ゲーム。
イベント。
「現在」
企業。
学校。
店。
レストラン。
住宅。
旅行。
創作。
「Linkcityを一つの用途で説明することは難しくなっています」
画面。
第二のスマホ。
「現在、Linkcityは第二のスマホとも呼ばれます」
湊は。
この表現を。
何度も聞いている。
でも。
五年前の映像のあとに聞くと。
意味が違った。
「スマホが電話だけの機器ではなくなったように、Linkcityもゲームや交流だけの場所ではなくなりました」
八木沢。
少し。
間。
「ヒノタマ・パンデミックがLinkcityを作ったわけではありません」
昔のLinkcity。
「すでに存在していました」
企業。
学校。
店。
利用者。
増える。
「しかし、世界中の人々が同時に、現実とは別の生活場所を必要としたことで、Linkcityは急激に変化しました」
グラフ。
一。
三。
十一。
三十七。
百。
さらに。
現在。
「そして五年後」
現在のLinkcity。
街。
利用者。
「私たちは、Linkcityへ行くという言葉さえ、以前ほど使わなくなっています」
湊が。
少し笑った。
確かに。
Linkcityへ行く。
あまり。
言わない。
仕事する。
買い物する。
会う。
遊ぶ。
旅行する。
場所を。
わざわざ。
言わない。
「生活の場所になったからです」
動画。
五年前。
最後。
当時のニュース映像。
若い利用者。
簡素なアバター。
仮想広場。
その人物が。
カメラへ。
手を振る。
画面。
現在。
同じアカウント。
五年後。
大人。
別のアバター。
家族。
自宅ワールド。
「当時、私たちはこれがいつまで続くのかと考えていました」
八木沢。
「五年後の現在、その問いへの答えは少し変わっています」
街。
現実。
Linkcity。
交互。
「いつまで続くのかではなく」
仕事。
食事。
旅行。
友人。
「これから、どう使っていくのか」
映像。
止まる。
番組タイトル。
ヒノタマの記憶。
終了。
再生時間。
一時間五十三分。
結衣が。
ソファへ深く座った。
「長かった」
「全部見たな」
「面白かった」
「うん」
再生数。
千百八十万。
公開。
五時間。
コメント。
大量。
五年前、学校が急にLinkcityになった。
会社の会議室が最初だった。
当時のアバターまだ持ってる。
接続待ち覚えてる。
初めて仮想外食した日覚えてる。
あの頃はここまで大きくなると思わなかった。
子どもはヒノタマ以前を知らない。
Linkcityがない生活を想像できない。
湊は。
最後のコメントで。
指を止めた。
Linkcityがない生活。
想像。
してみる。
朝。
現実。
着替える。
外。
仕事。
通勤。
買い物。
店。
友人。
会うなら。
移動。
海外の人。
言葉。
旅行。
飛行機。
全部。
できる。
昔。
そうしていた。
今も。
できる。
でも。
それだけではない生活を。
もう。
知っている。
結衣が立つ。
「お昼どうする?」
「もうそんな時間?」
「十一時半」
「何食べる?」
「Linkcityで店探そう」
「結局それか」
「特集見たあとに仮想外食」
「五年前の人に見せたいな」
「未来こんな感じですよって?」
「うん」
二人。
自宅ワールドを出る。
商業街。
転送。
レストラン。
店。
人。
多い。
アバター。
世界中。
会話。
生成AI翻訳。
商品。
現実へ配送。
五年前。
急ごしらえだった。
仕組み。
今。
誰も。
珍しそうに見ない。
結衣がメニューを開く。
「これにする」
「早い」
「湊は?」
「まだ」
「おすすめ出てるよ」
「今日は自分で探す」
「珍しい」
湊は。
メニューを。
一つずつ。
見る。
料理。
現実。
届く。
目の前。
Linkcity。
友人。
同じテーブル。
現実では。
別の家。
これが。
普通。
五年前。
世界中が。
外へ出られなくなった。
困って。
代わりを。
探した。
最初は。
仮の場所。
だった。
一時的。
だった。
でも。
人が集まる。
店が来る。
学校が来る。
会社が来る。
遊びが来る。
旅行が来る。
暮らしが来る。
仮の場所だったものが。
生活になった。
湊は。
注文を決める。
送信。
現実側。
調理開始。
配送予定。
二十八分。
結衣も注文。
「五年前なら、これだけでニュースだったんだろうね」
「今や昼飯」
「変わったね」
「変わった」
湊は。
レストランの窓を見る。
Linkcityの街。
道路。
人。
遠く。
巨大な建物。
さらに。
その先。
無数のワールド。
五年前。
あの小さな中央広場から。
ここまで。
増えた。
ヒノタマ・パンデミック。
大きなきっかけ。
でも。
それだけで。
今があるわけではない。
便利だった。
残したかった。
もっと使いたかった。
問題が出た。
直した。
新しい問題が出た。
また。
変えた。
五年間。
それを。
繰り返した。
通知。
料理。
配送開始。
AI配送ロボット。
現実側。
移動中。
湊は。
それを見て。
笑った。
「もう戻れないな」
結衣が首を傾げる。
「何が?」
「五年前のLinkcity」
「戻りたい?」
「いや」
湊は。
街を見る。
「見てみたいとは思う」
「昔のワールド?」
「再現されてないかな」
「ありそう」
「あとで探す?」
「行こう」
昼食のあと。
予定。
一つ。
追加。
五年前のLinkcity。
探索。
過去は。
消えたわけではない。
動画。
写真。
記録。
古いワールド。
古いアバター。
勲章。
人の記憶。
いろいろな形で。
残っている。
そして。
五年前。
世界中の人が。
一斉に。
Linkcityへ入った日。
誰も。
知らなかった。
そこが。
五年後。
仕事場になり。
学校になり。
店になり。
遊び場になり。
旅行先になり。
誰かの。
もう一つの居場所になることを。
湊の端末へ。
新しい通知。
動画サイト。
ヒノタマ・パンデミック五周年特集。
再生数。
千二百万突破。
湊は。
通知を閉じる。
目の前。
結衣。
窓の向こう。
Linkcity。
五年前のニュースは。
もう。
歴史になり始めている。
けれど。
その続きを。
自分たちは。
今も。
毎日。
暮らしていた。