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軽食をとった俺達は、早速冒険者組合ギルドへ向かい、登録の手続きへと入る。

「では、こちらの書類に必要事項をご記入下さい」

渡されたのはパーティ結成の書類だ。

個人登録はすでに終わっている。

受け取った俺の横から手が伸びてきて、書類を奪われた。

「私が書くね!」

翻訳の能力ちからで日本語が勝手に現地語に変わるのが楽しいのかな?

そう思っていた時期が私にもありました。

「では、受理しました。パーティ名は『三銃士』ですね。ご活躍をお祈りしています」

はっ?パーティ名…?

三銃士ってなに?

これからこれを名乗るの…?

『三銃士のセイだ。両手を挙げな!』

しぬぅぅぅうううっ!!!

俺が悶絶している間にも、二人はお喋りをしていた。

それで書類を奪ったのか…くそっ……

パーティを結成した俺達は、ガラガラになった冒険者組合の中の依頼ボードの前にあるテーブルセットに腰を下ろした。

「じゃあGランクの依頼って街の中だけなんだ」

「そうです。私はFランクですが、一人で街の外に出るのは難しいので、Gランクの依頼ばかり受けていました」

「そうなんだ。これからは一緒に冒険しようね!」

女子達がキャピキャピしている中、俺は一言も発していない。

もう無駄だが、パーティ名への抗議だ!

徹底抗戦を表明する!

「ミランちゃんはお家で寝泊まりしているの?」

「はい。Gランクの依頼だと、まともな宿の宿代が捻出出来ません。

早く家を出て弟達にのびのび暮らして欲しいのですが…」

泣ける話はやめてくれないかな?

俺なんか親に無駄金使わせているんだぜ?

「じゃあ、私達の宿に来ない?宿代は心配しなくても、セイくんが払うから大丈夫だよ!

私も払ってもらってるしね!」

「いくら仲間と言えど、施しは受けられません」

この子めちゃくちゃちゃんとしてはる……

俺なんか齧れる脛はとことん齧っているのに……

「勘違いしないで。施しじゃないよ。

私達は何も知らないの。それはセイくんの依頼で知っているでしょ?

ミランちゃんに色々聞きたいし、お世話になるの。

だからお礼をさせてくれないと、それこそ私達が施しを受けていることになるでしょ?」

ミラン。アキラメロン。お姉さん聖奈は手強いぞ。

「それは方便ではないですか?」

こんな13歳知らないんですけど……

俺が13歳の時なんか、橋の下に捨てられていたえっちな本を見つけただけで喜んでたぞ。

「方便じゃないよ。知識は確かな財産だよ。

それを無償で受けとることは、本来ダメなことなの。

だから貴女がセイくんから受けた依頼は、妥当なんだよ。

これからも私達を助けてくれないかな?」

俯いて考え込んだミランは、顔を上げて答える。

「ずるいです。そんな言い方されたら、甘えるしか出来ないじゃないですか」

瞳に涙を溜めながら伝えたミランに、聖奈さんは聖母のような雰囲気を醸し出しながら答えた。

「大人はズルいものなの。それに仲間には甘えるものだよ。私もこれからたくさん甘えるけど、見捨てないでね」

「はい!」

二人は本当の家族の様に…俺?俺は外野だよ……

「後、セイくんのことは甘やかさない様にね」

おいっ!

何も知らないんだから甘えるしか出来ねぇよ!

こんな話を目の前でされたら、パーティ名なんて些細なことで。

「ミランこれからもよろしくな」

あれ?結局流されてないか?

この疑問には勿論、月の神ルナ様も答えてはくれなかった。




宿に仲良く帰った二人と俺は、おばちゃんにもう一部屋用意してもらい、男女で部屋を分けた。

追加料金は4,000ギルだった。

「荷物も置いたし、ミランの家族に挨拶に行くか」

「そうだね。ミランちゃんもいい?」

「はい。もしお二人に失礼なことを親が言ってしまったら、すみません」

先回りして伝えるとは…やはり頭がいいな。

何で俺達と組んだんだ?

美少女で頭も良かったら引く手数多だろ?

「大丈夫だよ。仲間の家族だもん。じゃ、いこっか」

聖奈さんの声に促され、俺達は宿を出た。






ミランの家の近くまで来たが、そこは普通の住宅街だった。

普通と言っても異世界だから、オランダの風車が付いている建物から風車を取った感じの小洒落た建物ばかりだ。

「ここです」

ミランが立ち止まった家は、周りの家と変わらない建物だった。

ミランは裕福ではないと言っていたが、13歳の女の子が無理して冒険者をしなくてはならないようには見えないな。

ガチャ

「お母さん。お父さんいる?」

ミランが扉を開けて何やら話し始めた。

「どうした?」

中から30代中頃らしき男性が出て来た。

「お父さん。まずは紹介するね。私の冒険者仲間のセイさんとセーナさん」

「セーナです。ミランちゃんにはお世話になっています」

聖奈さんがお姉さんモードで挨拶したので、続けて俺は商人モードで挨拶をする。

「セイと申します。お嬢さんには色々と教わっています」

ミランの親父さんは少々面食らった顔をした後、挨拶を返してくれる。

「ご丁寧にどうも。ミランの父のバーンといいます」

「実はね。セーナさん達とパーティを組むことになったの。

それでセーナさん達の宿に、お世話になることにしたんだ」

「それは……ミラン、騙されていないか?」

その言葉を聞いて、ミランは大きな目を釣り上げた。

「お父さん!失礼なことを言わないで!セイさんもセーナさんもとても良い人だよ!

それに、私を騙して何になるのよ!」

「お前は器量がいいからな。悪い大人であれば、違法な手段で奴隷に落として売ることもあるんだぞ」

「大人って。セイさん達はそんなに変わらないじゃない!」

「たしかにお前と5つも変わらない様に見えるが、年はあまり関係ないぞ」

「お父さんのバカっ!そもそもセイさん達はお金持ちよ!」

「それなら尚更その年で成功している冒険者が、お前みたいな力の無い人間を本当に仲間に迎えると思うのか?」

あのぉ…一応俺達21ちゃいなんですが……

まぁ、親父さんの言っていることは最もだな。ミランもそれが分かっているから、説得に力が入っていない。

出番だぞ!聖奈お姉さん!

「あの。よろしいでしょうか?」

キタッ!






その後、聖奈さんに説得された親父さんは俺達を家の中へと招き入れた。

いや、聖奈お姉さん凄すぎん?

「いらっしゃいませ。ミランがいつもお世話になっています」

ミランはお母さん似だったようだ。良かったな。

ミランがそのまま綺麗に歳を重ねたら出来ました!みたいな見た目のお母さんは、優しい笑みで俺達にお茶を出してくれた。

性格と頭の良さは親父さん似かな?良かったな!

「ありがとうございます。お母様は私達の所へミランちゃんが来ることを、反対なさらないのですね」

「この子には苦労を掛けてるの。だから、これからは好きに生きて欲しいのよ。

ご迷惑をお掛けすると思いますが、末永くよろしくお願いしますね」

最後の言葉は、明らかに俺の方を見ながら言われた。

結婚ですか?

ろりこん警察に逮捕されますよ?俺が!

「聖奈が説明した通り、こちらがお世話になっているのです。

私達の方こそよろしくお願いします」

その後は聖奈さんの説得力と、俺の商人モードの話し方で、ミランの両親を納得から安心まで持っていった。



「えっ?では、お父様は家具職人さんなのですか?」

話の流れが、親父さんの職業へと移行していた。

「ああ。だけど近年は仕事が激減してしまった。

理由は王都に新たに出来た商会の影響だよ。

職人とは名ばかりの者達を大量に雇い、大量に家具を生産するから値段で負けてしまい、顧客が離れてしまった」

金銭面で困っていた原因はこれだったのか。

確かに日本でも、海外の安い物にマーケットを支配されつつあるもんな。

異世界でも世知辛いな……

「お父様。是非、お父様の作った家具を見せて貰えないでしょうか?」


聖奈さん。これは好機チャンスだよね。

俺でもわかるもん。





円 =1,440,000

ギル=1,758,000-12,000宿代=1,746,000

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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