テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#狂愛
柏木さくら
829
西原衣都
866
#ロマンスファンタジー
Jasmine
724
瑠璃マリコ
10,376
コメント
1件
ちょっと待って……これ、明らかにやりすぎでしょ! いくら何でも勝手に口移しで飲ませるとか、完全にアウトだよ。 悠聖さんの「無性にキスしたくなった」も軽すぎて、読んでるこっちまでイライラした。 でも、そのあと彩音ちゃんがきっぱり帰ろうとして、「二度と会うことはない」って言い切るところはすごく好き。自分の気持ちを無理に笑顔で隠そうとする感じも、とてもリアルだった……。 悠聖さんが「また会える」って意味深なこと言って終わったのも、続きが気になりすぎる〜〜。 さくらさん、今回は本当に胸がギュッと苦しくなるお話をありがとうございます。 このもどかしさ、ちゃんと受け止めました。続きも楽しみにしてます🥀
何が起きたのか理解する間もなく、冷たい液体が口の中へ流れ込んでくる。
なっ……。
これ……
キス……!?
「……んっ……」
喉の奥で小さな音が漏れる。
「んっ、んん……やっ!」
勢いよく身を引く。
離れた唇の端から、口移しで流し込まれた液体が首筋へと伝い落ちた。
いつの間にか回されていた腕を振りほどき、私は反対側のソファーへ逃げるように身を退く。
「なっ、何するんですかっ!」
裏返った声が飛び出した。
心臓が暴れるように脈打ち、頭に血が上る。
信じられないものを見るように、悠聖さんを見つめた。
「何って、烏龍茶を飲ませてあげたんだけど」
悠聖さんは肩を竦める。
「冷たくて美味しかったでしょ?」
そして悪びれる様子もなく、口元にいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「飲ませてあげたって……」
愕然としたまま固まる。
あまりの衝撃に、喉の奥に冷たい感触だけが残り、言葉が出てこない。
「そんなに驚かなくても。彩音ちゃんの反応は新鮮で、退屈なんてしないよ」
悠聖さんは目を細めて笑い、手にしたグラスの烏龍茶を一口飲んだ。
そんなに驚かなくても?
反応が新鮮で退屈しない?
その態度を見ているうちに、頭に上っていた熱が少しずつ冷えていく。
「……信じられない。何を考えてるんですか、あなたはっ!」
ようやく絞り出した声は、怒りを押し殺したように小さく震えた。
「……ごめん。からかってるつもりはないんだ。彩音ちゃんがとても魅力的で……無性にキスしたくなった」
悠聖さんは人差し指で鼻先を軽く擦り、少し考えるような間を置いてから頭を下げた。
「無性にキスしたくなったって……」
呆れと苛立ちが込み上げる。
何か言い返したかったのに、うまく言葉にならなかった。
きっと、この人にとっては口説き文句の一つなのだ。
キスも。
優しい言葉も。
口説くことも。
きっと何でもない。ただのお遊びだ。
私、からかわれてる……。
『こんなパーティーに来る女が。それもいい年して、たかがキスくらいで騒ぎやがって』
――きっと、そう思ってるんだ。
言葉にできない悔しさと、唇に残る感触が胸の奥をかき乱す。
怒っているはずなのに、鼓動だけが熱を帯びて高鳴っていた。
その事実が、余計に自分を惨めな気持ちにさせる。
「……私、帰ります」
バッグを握りしめ、立ち上がった。
「えっ? ちょっと待って。帰るって……倫子は?」
悠聖さんが慌てたように私の手首を掴む。
「倫子には急用ができたからって……後でメールするって伝えてください」
掴まれた手を引き寄せるようにして距離を取る。
「彩音ちゃん、気を悪くさせてごめん。本当に怒らせるつもりはなかったんだ」
悠聖さんは立ち上がり、手を合わせながら何度も頭を下げた。
「……もういいですから。もともと帰るつもりでしたし。疲れたので失礼します」
解放された手首をさりげなく擦りながら、口元だけで笑みを作る。
「分かった……倫子には伝えておく。またね、彩音ちゃん」
悠聖さんは小さく息をつき、軽く手を上げた。
「……今日は色々とありがとうございました。二度とお会いすることはないと思いますけど、お元気で」
私は彼と視線を合わせることなく頭を下げ、そのまま背を向けて歩き出した。
足早に響くヒールの音が、静かな廊下に甲高く反響する。
「近いうちにまた会えるよ。絶対にね……」
悠聖さんが小さく呟いた。
近いうちに会える……今、そう言った?
振り返ることなく歩きながら、眉間に深い皺を寄せる。
だから、二度とこのパーティーには来ないって言ってるのに。
本当に何を考えているんだろう。
「……最低」
唇に残る感触を消し去るように、手の甲を強く押し当てた。