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事情を話すと、そのエルフはどこか納得した風で「先輩に任せなさいっ!」と控えめな胸を叩いた。


その後、用事を済ませたエルフがダリルに提案したのは、鍛錬に同行して狩るところを見せてくれるという、ごくシンプルなものだった。


「まさか走って来ることになるとは思わなかったよ。わたし達だって馬に乗って来るのに、気合の入った準備運動だねぇ」


驚いたような呆れたような感心したような。共に走って来てそんな事を言うエルフはしかし息も乱れず余裕すら感じられた。


そもそも走ってたのか? 全力で走る俺とレオの後ろに付いてきていたが、足音はやけに静かでその足取りも……異様な歩幅という感じだった。しかし現実にここにいる以上は走っていたのだろう。


「まあ、難しい事はないから、ついてきて見ててね」


彼女は軽く走り出したかと思うと、近くの木の枝に飛び乗り、木から木へと移動しだした。


レオはアゴをしゃくって合図しただけで、ついて来る気はないらしい。


「くっそ!」


俺にそんな猿みたいな芸当が出来るはずもなく、下草を分けてついていく。道などないが木の上を行く彼女には関係ないのだろう。必死で追いかける俺の前に彼女は降り立ち、


「もう、うるさすぎるよ。そんなだと虫でも逃げちゃう。野性の獣を狩るなら、極力しずかに。獲物の息づかいを感じ取る気持ちで探すのよ」


そう言ってまた木の上に飛び移った。


「まあ、わたしも先輩にそう言われたんだけどね」


人に教える事が出来て嬉しいのか、楽しそうなウインクをしていた。




それまでとは違い静かに、けど見失わない様に追いかける。


「やったね、いたよ」


樹上に屈み小声で言う彼女が指差す先に1頭の猪。あまり大きくはないが成体ではあると言うところか。


彼女は構えた弓を引き、放つ。目にも止まらぬ2連射。


小さなうめき声をあげ、倒れた猪の影にはもう1頭の猪。2頭はどうやらつがいで、俺の位置からは視認できていなかったようだ。




「どう? 先輩はすんごいでしょ?」


同じ高さに立てば敵わない分まで木の上から全力で見下ろしドヤるエルフに、腹も立たずただ頷くしか出来なかった。


だが、驚いたのはそのあとで、仕留めた猪を彼女は2頭ともを纏めてその肩で担いで歩き出したのだ。


「いや、先輩よ。持ち帰るくらいは俺にやらせてくれ」

「ん?そう言うなら……でも持てる?」


まさかの言葉に俺は


「力なら任せてくれ。見よ! この逞しい腕、背中、脚ぃ!」むきむきむきっ。

「んじゃ、ほいっ」


納得したのかしてないのか、エルフの少女により俺の逞しい背中に乗せられる猪が1頭、2頭。


──俺は重さに耐えられずその場に膝をつきついに立ち上がる事は出来なかった。


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