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「でも、うちは秘密厳守とはいえ、お客様の奥様や彼女が、素行がおかしいと気付いて、探偵などを雇ってここを突き止めるって事も考えられるし、さっき私と愛音を尾行したのも、探偵かもしれないわねぇ」
二人の話を聞き、瑠衣はふと疑問に思う。
「あのぉ……思ったんですけど」
瑠衣のおずおずと切り出す口調に、凛華と拓人がこちらを見る。
「探偵のようなプロが、私が転びそうになって不意に後ろを向いた時、慌てて隠れる、なんて下手な事しますかね?」
「そう言われてみればそうねぇ」
凛華が腕を組みながら遠くに視線をやり、拓人は顎に手を添えながら思案しているようだった。
「…………素人か」
「素人……ですか?」
瑠衣が思わず口を挟むと、拓人が肯首する。
「今の時代、依頼する方法はネットを始め沢山あるし、二人を尾行させたのも、そういう手口で素人を雇ったのかもしれないね」
「なるほどねぇ。恐ろしい世の中だわぁ」
その後も、三人で取り止めのない話をしつつお茶をしていたら、いつの間にか夕方近くになっていた。
「誘ったのは俺ですし、ここのコーヒー代は俺が支払いますね」
拓人はそう言うと、会計へ向かった。
拓人は二人を凛華が利用していたパーキングまで送ってくれ、しかも駐車料金も全額支払ってくれた。
「中崎さん、コーヒー代だけでなく、駐車料金まで全額出してもらってすみませんねぇ。ありがとうございます」
「中崎さん、コーヒーご馳走様でした」
「お二人とも、気を付けて帰って下さい。では、また」
拓人はクラクションを軽く二度鳴らすと、漆黒に染まり始めた街へと消えていく。
凛華と瑠衣は、念の為に周囲を見回した後に車に乗り込む。
「さて、うちらも帰るか」
「はい」
凛華の運転する車も、赤坂方面へと走らせた。
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