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二〇二四年も残り一ヶ月を切り、街はクリスマス一色に染まっていた。
瑠衣が働く『Casa dell’amore』の玄関ロビーにも、大きなクリスマスツリーが華やかに彩りを添えている。
いつも過ごしている特別室で、行為も終わり、身支度も整え終わった侑と瑠衣はソファーに並んで寛いでいた。
「しかし『愛音』って源氏名……やらしいお前にピッタリだな。愛の音って書くんだろ?」
「そうです」
「愛の音……俺がお前のアソコを弄る時に奏でられる、やらしい音みたいだよな?」
言いながら侑は瑠衣を向かい合わせ、ドレスの裾から手を侵入させ、更にショーツの中に指を入れて散々舐め倒した艶玉を撫でる。
「んんっ……はんっ…………ああっ」
蕾を擦り上げながら腰に手を回し、両胸に顔を埋める侑。
「なぁ九條……」
「なっ…………何で……しょう?」
侑が瑠衣を抱き寄せ、時折首筋に唇を彷徨わせながら髪を撫でる。
「…………何で『愛音』なんだ?」
唐突な侑の質問に、瑠衣は面を食らってしまった。
「源氏名を決める時、パッと浮かんだのが、モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』で……そこから拝借した、みたいな」
侑が半ば呆れているように鼻でフンっと笑い、瑠衣の耳朶を唇で挟み、吸い立てた。
「モーツァルト大先生もあの世で、自分の楽曲名の一部が娼婦の源氏名に使われているなんて、思いもしないだろうな」
侑が再び瑠衣を抱きしめながら、首筋に唇を伝わせ、舌先で舐め上げた。
二人に会話がなくなると、水を打ったような静けさに包まれる特別室だが、この日はどこか様子が違う。
ほんの微かではあるが、瑠衣の耳には地鳴りのような音が聞こえている気がした。
と同時に、瑠衣の首筋に顔を埋めていた侑の動きがピタリと止まり、スンスンと鼻を鳴らして、顔を上げる。
「おい……何だか…………焦げ臭くないか?」
「……え?」
瑠衣も部屋の臭いを嗅ぎながらドアを見やると、煙が薄らと部屋に流れ込んでいるのが見えた。
「ま……まさか!」
彼女が焦燥感に満ちた表情へと一変し、侑から離れ、慌ててドアを開けようとするが、
「俺が開ける。お前は下がってろ」
と、侑がドアの前に立ち、恐る恐る扉を開いた。