テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
高館家を後にした一同は、銚子が乗ってきた車へと乗り込んだ。
全員が席に着いたことを確認すると、銚子は運転席から声をかける。
「さあ、帰るわよ」
その直後、信愛が感心したように身を乗り出した。
「てかお母さんすご過ぎ!本物の
園長先生かと思っちゃった!」
「まぢでそれ!」
茜もすかさず同意する。
「もしかして過去に女優やってました?」
「まさか〜・・バレやしないかとヒヤヒヤしたわよ」
張り詰めていた緊張が一気に解けたのか、銚子は深いため息をついた。
「はぁ~・・・どっと疲れた〜・・・」
「ありがとう、お母さん」
信愛が素直に礼を告げると、銚子は少し呆れたように返す。
「まったく、こんな事やらせて」
「ごめん・・・」
申し訳なさそうに縮こまる信愛。
そんな娘に、銚子は少し意地悪そうな口調で続けた。
「お父さんに言って、来月の
お小遣い減らしてもらうからね」
「えーー!?」
車内に信愛の悲鳴が響く。
「何を驚いてんのよ。当然でしょ?」
「み、みんなは?」
慌てて仲間たちへ助けを求める信愛だったが、銚子はあっさりと言い放った。
「いや、私はみんなのお小遣い減らす権限
持ってないもの。信愛だけよ信愛だけ」
「そんな~・・・」
そのやり取りを聞いていた朝陽が、思わず吹き出した。
「ぷっ」
「そこ!笑わない!」
「あ、ごめんなさい」
朝陽は慌てて謝るが、今度は焔垂まで肩を震わせる。
「いや、悪いけど今のは笑うわ(笑)」
「ひどーい」
仲間たちの笑い声に包まれ、信愛は不満そうに頬を膨らませた。
そんな車内をバックミラー越しに見ながら、銚子は母親らしく一喝する。
「いいから大人しくしてなさい!まったく!」
そして前を向き直ると、車を発進させた。
「ほら!行くわよ!」
偽の体験入園という大仕事を終えた一同を乗せ、車は高館家を後に、白縫家を目指した。
◇ ◇ ◇
それから一同は白縫家へと集まり、高館家から持ち出してきた有栖の様子について思考を巡らせていた。
「うー・・・ん」
信愛が難しい顔で唸る。
そんな彼女を見て、茜が不安そうに尋ねた。
「やっぱりやばい気配はしない?」
「うん・・何かの気配は感じるけど
本来人形はそういうもんだしね」
朝陽が首を傾げる。
「やっぱこの人形は無関係なんでしょうか?」
銚子は少し考えてから答えた。
「無関係かどうかは完璧にそうとは言い切れないけど
人を変えてしまう程の悪霊の気配は無いわね」
「うー・・・ん」
朝陽も納得しきれない様子で考え込む。
その時、茜がふと思い出したように声を上げた。
「てかさ?」
「ん?どうかしたか?」
焔垂が茜を見る。
茜の視線は朝陽へと向けられていた。
「朝陽くんさ・・・」
「え?僕?」
「朝陽くんがどうかしたの?」
信愛に促され、茜は朝陽の顔をじっと見つめる。
「いや、朝陽くん・・目、痒く無いのかな?って」
「え?目?」
「なんだよ急に」
不思議そうな二人に、茜は自分の記憶を辿るように続けた。
「いや、だってさ、朝陽くん、宗くんの家に居た時は
目を掻いてたのに、今は掻いてないみたいだから」
「あ、確かに!」
さくらもその違いに気づき、声を上げる。
「てっきり人形に原因があるのかも?
って思ってたんだけど、違うのかな?
って気になっちゃってさ」
「確かにそうだよね」
信愛も頷く。
朝陽は自分の目元に触れながら、改めて確かめるように瞬きをした。
「そう言われれば、痒くないですね」
「目って何の話?」
話についていけていなかった銚子が尋ねる。
信愛が朝陽に代わって説明した。
「朝陽くんって実は猫アレルギーらしくて」
「猫アレルギー?」
「はい・・・猫が居る部屋に入ると
目が痒くなっちゃうんです」
朝陽の言葉を聞いた瞬間、銚子の表情が変わった。
「そりゃあの家には──」
そこまで言いかけたところで、信愛が眉を寄せる。
「高館先生の家には猫なんか居なかったし」
「え?」
銚子が思わず聞き返す。
「ん?どうかした?」
「猫が居なかった?」
「うん・・・居なかったよ?
先生も猫飼った経験無いらしいし」
「だから不思議なんですよね」
朝陽は考え込むように目を伏せた。
「やっぱ他に理由があったのかな?」
その言葉を聞いた銚子は、何かに気づいたように信愛を見る。
「ちょっと待って、信愛」
部屋の空気が、わずかに変わった。
「なに?」
突然呼び止められ、信愛は銚子へ顔を向けた。
銚子は信愛の目をまっすぐ見つめる。
「先生の家に棲みついてる猫の霊が見えなかったの?」
「え?」
信愛が目を丸くする。
「どういう意味ですか?」
焔垂が尋ねると、銚子は静かに告げた。
「高館先生の家・・・少なくとも
10匹以上の猫の霊が棲みついてるわよ?」
一瞬、部屋が静まり返った。
「え?」
「まぢでか!?」
「うっそ!」
思いもよらない事実に、信愛だけでなく茜やさくらまで驚きの声を上げる。
銚子はそんな一同を見渡しながら続けた。
「てっきり過去に飼ってた猫の霊だと思ってたから
あまり深掘りはしなかったんだけど」
そして、信愛へと視線を戻す。
「信愛が目視できなかったって事は──」
その瞬間、信愛の脳裏にひとつの可能性が閃いた。
「もしかして・・・霊圧の拒否!?」
銚子の表情が険しくなる。
「そうなるとまずいわね・・・」
銚子は血相を変えて立ち上がった。
「みんな!高館先生の家に戻るわよ」
「え?もうですか?」
茜の問いに、銚子は迷うことなく答える。
「奥さんが変わった理由はこの人形じゃなかった」
全員の視線が銚子へ集まる。
「あの家に住み着いた猫の霊が元凶だったのよ」
「まじ・・・」
さくらが息を呑む。
焔垂もようやく事態の深刻さを理解した。
「そっか!白縫さんが目視 できなかったって事は、その猫の霊が持つ霊気は、白縫さんの霊気より多いって事だもんな」
信愛の表情から血の気が引いていく。
「だとしたら、ひよりさんが危ない」
「すぐに戻らなきゃ!」
一同は慌ただしく高館家へ向かう準備を始めた。
◇ ◇ ◇
その頃、高館家では――。
「有栖・・・大丈夫かな?」
ひよりは心配そうに時計を見つめながら呟いた。
「友達出来てるかな?」
宗太郎は妻を安心させるように笑う。
「心配ないって。有栖なら!な?」
「だといいけど・・・」
「そうだ。久々の夫婦水入らずだからさ
たまには二人でNetf──」
「うぅ・・・」
突然、ひよりが胸を押さえ、その場にうずくまった。
「ひより!?」
宗太郎の表情から笑みが消える。
「どうかしたか?」
「う・・うぅ・・・」
ひよりは苦痛に顔を歪め、今度は腹を押さえた。
「ひより!?」
宗太郎が慌てて駆け寄る。
「どうしたんだ!」
しかし、ひよりは答えられない。
「おい!ひより!」
コメント
1件
うわっ、ここで一気に核心に迫るんですね!最初の車内の和やかな空気から一転、猫アレルギーの話がまさかこんな伏線だったとは…。猫の霊が10匹以上も棲みついてて、しかも信愛ちゃんに見えないってかなりヤバい状況ですよね。高館先生の奥さんが変わった原因が人形じゃなかったってのも衝撃的。そして最後のひよりさんの異変…タイミング良すぎて怖い!続きが気になって仕方ないです!