TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

白い花が風を呼ぶ

一覧ページ

「白い花が風を呼ぶ」のメインビジュアル

白い花が風を呼ぶ

5 - Scene 24:静かに息を吸う・25:彼は迷う──でも、迷いきれない

♥

11

2026年02月26日

シェアするシェアする
報告する

Scene 24:静かに息を吸う

作品の前で、しばらく動けなかった。


胸の奥に広がる温度が、懐かしさと嬉しさと、少しの切なさを混ぜて揺らしてくる。


「……会いたいな」


声に出した瞬間、自分でも驚くほど素直な響きだった。


審査員としてではなく、昔の先輩としてでもなく、ただひとりの人間として。


あの頃、毎日「大丈夫?」と声をかけていた子が、今こうして“作品”として自分の前に戻ってきた。


その事実だけで、胸がいっぱいになる。


画面をそっと閉じた。

でも、心の中ではまだ、有莉澄さんの絵の色が静かに揺れていた。


「……話したいな。

ちゃんと、もう一度。」


その願いは、審査とは関係のない、僕自身の気持ちだった。



Scene 25:彼は迷う──でも、迷いきれない

作品ページを閉じたあとも、胸の奥では絵の色が静かに揺れていた。


ピンクの背景。


柔らかい線。


優しい表情。


それらが、

まるで呼吸するように

心の中で残り続ける。


椅子にもたれ、天井を見上げる。


「……どうするんだよ…」


審査員としては、

応募者に個人的に連絡するなんて

本来はありえない。


でも、

“ハム🐹スターさん”としての有莉澄さんは、

すでに僕のSNSに存在している。


DMの履歴も残っている。


つまり──

連絡しようと思えば、できてしまう。


その事実が、

胸をさらにざわつかせる。


「……いや、でも……」


職場での有莉澄さんの姿が浮かぶ。

真面目で、

一生懸命で、

少し不器用で、

でも優しくて。


あの頃、

僕は有莉澄さんに何度も声をかけた。


「大丈夫?」

「困ったら言ってね」


その言葉の裏にあった気持ちを、

有莉澄さんは知らない。

そして今、

有莉澄さんの絵が、

その“知られなかった気持ち”を

静かに揺り起こしてくる。


ゆっくり息を吐いた。



「……会いたいなんて、言えるわけないだろ」


でも、

言えないはずの言葉が、

胸の奥で何度も繰り返される。


会いたい。

話したい。


あの頃より、

ちゃんと向き合いたい。


その願いは、

審査とは関係のない、

僕自身の気持ちだった。

白い花が風を呼ぶ

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

11

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚