テラーノベル
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月曜日。出社した凛が自分のデスクへ向かうと、奈美がにこにこと笑顔で近づいてきた。どうやら今日はずいぶん機嫌がいいらしい。
「二階堂さーん、おはようございます」
「おはよう。体調はもう大丈夫?」
「ご心配おかけしてすみません。もうすっかり元気です」
「それはよかった。でも、無理はしないでね」
「ありがとうございます」
凛は軽く頷いて椅子に腰を下ろした。すると奈美が、なぜか不思議そうに首をかしげながら言った。
「え? 気にならないんですか?」
今度は凛の方が首をかしげる。
「どういう意味?」
「私と真壁さんが、あのあとどうなったか、気にならないのかなーと思って」
「ああ……」
奈美の言葉に、凛は小さくため息をついた。
おそらく奈美は、凛と真壁があのあと新宿で飲んでいたことを知らないのだろう。
凛の反応が気に入らなかったのか、奈美はすぐに続けた。
「真壁さん、すっごく優しいですよね~。家まで送ってくれた上に、ベッドまで……ふふっ。私、彼のこと好きになっちゃいました♡」
あまりに露骨な言葉に、凛は心の中で呆れた。
(嘘ばっかり。必死すぎじゃない?)
だが、その気持ちを表に出さずに、淡々と返す。
「そうなんだ」
あまりにも無反応な凛の態度に気分を害した奈美は、さらに畳みかけるように言った。
「それに私たち、今度デートする約束をしたんです」
その言葉に、凛は一瞬「えっ?」と胸がざわついたが、きっとデタラメだろうと判断し、表情を変えずに返した。
「それはよかったわね」
そのとき、部長の田辺が凛を呼んだ。
「二階堂さーん、来たばっかりで悪いんだけど、先週のアレ、どうなってる?」
「あ、はーい。今、お持ちします。ごめんね、行かなくちゃ」
凛は引き出しから資料を取り出し、奈美を残して部長席へ向かった。
去っていく凛の背中を、奈美は冷たい目で見つめる。
その後、周囲に誰もいないことを確認すると、ポケットからボールペンを取り出し、そっと凛のペン立てに差し込んだ。そして何事もなかったように席へ戻っていった。
昼休み、凛がデスクでサンドイッチを食べていると、営業企画部の西岡匠が声をかけてきた。
「二階堂、お疲れ~」
「あ、西岡さん、お疲れ様です」
「ところで、例の件は順調?」
「え? 何がですか?」
「不動産王・真壁との仕事だよ。もう組んでやってるんだろ?」
「ああ、はい。なんとか順調です」
「そっか。実際に会って打ち合わせとかしてるの?」
「はい。先日、一緒に物件を見に行きましたけど……それが何か?」
「いや……別に……」
どこか落ち着かない様子で、西岡は続けた。
「それより、今日飲みに行かないか? 西麻布の物件について、ちょっと意見が聞きたいんだ」
「すみません。今、真壁さんとの案件が立て込んでいて、帰ったらすぐに取りかからないといけなくて」
「そ、そっか……。忙しいのに悪かったな」
「いえ。また時間があるときにでも」
「お、おう……。じゃあまたな」
西岡は少しがっかりした様子で立ち去っていった。
その後ろ姿を見つめながら、凛はふと首をかしげる。
(西岡さんが個人的に誘ってくるなんて、珍しいわね)
これまでも、営業企画部とデザイン設計部が共同で携わった案件が無事に終わったときには、皆で飲みに行くことはあった。
だが、二人きりで誘われたのは今日が初めてだ。
そのことが少し気になったものの、凛は特に深く考えることもなく、「まあ、いっか」と心の中でつぶやき、再びサンドイッチを食べ始めた。
一方、廊下を歩きながら、西岡は深いため息をついた。
実は彼は、ずっと前から凛に好意を抱いていたが、同僚としての距離感が邪魔をして、一歩踏み込めずにいた。
凛がずいぶん前から婚活をしていたことは知っていたが、最近それをやめたと聞いた。
誰かいい人ができたのかと不安になったが、そんな気配はまったくなく、ほっとしたのも束の間、突然『不動産王』の真壁が現れたのだ。
だから、西岡は焦っていた。
調べてみれば、真壁は莫大な財産を持ち、独身で、しかも超イケメン。
その事実を知り、西岡の胸に不安が広がる。
(早く動かないと手遅れになる。いや、俺だってそこそこイケてるはずだ。出世コースは一番乗りだし、社内の信頼も厚い。これまで何人もの女性社員に言い寄られてきたし、今だって凛と同じ部署の沢渡奈美から熱烈にアプローチされてる。だから、不動産王なんかに負けるわけがない……)
ナルシスト気質の西岡は、そう自分に言い聞かせた。
だが、ふと気づく。
凛のフロアに行けば必ず寄ってくる奈美が、今日は完全にスルーしていた。
部屋に入ったとき、一瞬目が合った気がしたが、奈美はすぐに隣の同僚と話し始めた。
(なんでだ……?)
自信家の西岡は、急に不安を覚える。
なぜなら、奈美が自分を無視する理由に、心当たりがあったからだ。
(まさか……あの奈美まで不動産王に乗り換えた?)
その考えが頭をよぎった瞬間、拳をぎゅっと握りしめる。
信じたくはなかったが、嫌な予感しかしない。
(俺は学生時代からずっとモテてきたんだ。女たちの憧れの的だったんだ。そんな俺が負けるわけにはいかない)
なぜか勝手に闘志を燃やし、西岡は深刻な表情のまま自分のフロアへ戻っていった。
コメント
27件

凛ちゃんとと颯介さんが会う時、また奈美が現れたらさすがにおかしいと思うよね?盗聴器。いつ気づくかな。あ、私は職場のペン立てにわからんのが入ったらわかるよ?自分ので満杯だから😂
ナルシストがもうひとり😅 自分中心で物事をよく考えられるな〜 さていつあのボールペンに気づくかな? 早く見つかって欲しい‼️
奈美ー早速マウント取ってきてウザっ😒💢 凛ちゃん流石✨️冷静に交わした👏 西岡さん、まさかのナルシスト🫢🤣 凛ちゃんに気があるようだけど・・・ 残念(^-^; )アララ 颯介さんにも凛ちゃんにも 全く相手にされてない2人…ドンマイ🤣