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《19:00》
「さてっと、何しよっかな? 夜は!」
昼は焼き肉だったから、夜はちょっと軽いのがいいな。
……ていうか、焼肉にはお酒欲しかったなぁ……。
焼かれた肉汁がしたたり、炭に油が落ちてジュワッ!
――すこし早いかな?くらいの焼き加減で、まだ熱々のうちにパクッと……。
口の中で広がる、柔らかい肉と、噛むごとに舌をなでる脂の甘み。
そして、そこへお酒をキュッと……!
「お酒……ほしいぃ……のみたいぃ……」
(※ちなみに、ユキちゃんはお風呂中。)
「おかぁさん、いっしょはいろ~」って言われたけど、流石に誤魔化して遠慮した。
だって、身体は女でも心は男だし、何も知らない幼女の裸とか、色々アウトすぎる。
モグリ邸の子たちは幼稚園みたいな感覚だけど、ユキちゃんは……“お母さん”って言ってくれるから、余計に罪悪感出てくるんだよなぁ。
……まぁ、大人の女性の裸は……いや、ミクラルのアレは事故だし! 仕方ない! うん!!
そんなこんなで、今日の夜ご飯!
「うーんっと……お、これでいこ!」
冷魔蔵庫を覗くと、サーモンみたいなオレンジ色の身をした、脂ノリノリの切り身を発見!
「にしてもこの魚……なんだろ? すごい綺麗だ……」
てわけで!
昼は焼肉だったし、夜はさっぱりいこう!
「まず、この玉ねぎに似たやつを切りまーす!」
誰も聞いてないけど、テンション上げながらトントン。
ちなみに、名前知らないけど玉ねぎだから玉ねぎって呼ぶね!
「えーっと、その後に水に浸しときまーす!」
ボウルに水を張って、切った玉ねぎをぽちゃん。
「よし、その間にサーモンっぽい切り身を、お刺身みたいに……」
昔テレビで見たお寿司屋さんを思い出しながら、慎重に切り分ける。
「意外とうまくできたんちゃう?……とはソースだけど」
――そう、ここからが本番。
「普通ならオリーブオイルにレモン汁、ブラックペッパーだけど……」
え、なんでそんなに詳しいかって?
それは、俺が今から作るのが――
“お酒をより美味しくしてくれる、最高の料理”だからだッ!!!
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《19:20》
「わー! きれい!」
「ふふっ、食べ物に『きれい』って言うの、新鮮だね」
作った《カルパッチョ》を食卓に並べてたら、ユキちゃんが風呂上がりで現れた。
「ほう、《キルパッチョ》か。アバレーの居酒屋でよく見る料理じゃな。上手く出来ておる」
(あっ、微妙に名前違った……でもあるんだ、居酒屋! 行きてぇ、てぇてぇ!!)
「じゃぁ、食べよっか。ユキちゃん、座って?」
「うん!」
「「「いただきます!」」」
俺は箸でサーモンと玉ねぎを一緒に摘んで、口に運ぶ。
パクッ。
――口いっぱいに広がる、酸味の効いたオイル!
シャキッという音とともに、サーモンと玉ねぎが互いに引き立て合って、俺の脳に直撃!!
う、うまいッ……! テーレッテレー!!
……ただ、問題はユキちゃん。
もしかして、大人向けすぎたか?
「わー! おいしー! なにこれ! はじめてたべたー!」
「良かった♪」
バクバク食べるユキちゃん。
……うんうん、将来有望だよ、ユキちゃん。
いつか大人になったら、一緒に飲もうな! ハハッ、なーんて。
そんな中、じいさんが口を開く。
「良く出来ておる。そうじゃ、ひとつ頼みがあるんじゃが」
「?」
「――後で、同じものを作ってほしいのじゃ」
そう言いながら、
俺にしか見えない角度で、にやりと”お酒の瓶”を掲げるじいさん!!
「!!!! はい! 喜んで!」
(これはつまり……そういうことだよね!!)
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そして――。
ご飯も済ませ、21:00にユキちゃんは就寝。
俺はその後、じいさんと二次会をしながら、お酒をしっぽり楽しんだ。
ちなみに、あの魚は【ウーリーシャーク】っていう魔物の切り身だったらしい。
これが、この家の生活リズム。
――しばらく、みんなで、家族で、幸せな生活が続くだろう。
その日が来るまでは――。
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