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一方、ジオンは幾年ぶりかの、甘い時に溺れていた。


隣に横たわる体は、確かに追い求めていたもの。


柔らかな肌を隠すかのように、ミヒは掛布にくるまっている。


そのいじらしい姿を、ジオンはしっかり抱きしめた。


にじむ汗が、互いの肌にまとわりつく。漆黒の髪の手触りもかわっていない。


頬にかかる長い髪をかきあげてやりながら、ジオンの指先はミヒの体を探った。


「少し、風に当たりたいわ」


「そうだな。私が蒸すようなことをしてしまったからな……」


ジオンのからかいに、頬を染めるミヒがいる。


すべて、昔のままだと、ジオンは信じていた――。


「外の風に当たったことなどなかったな」


「え?」


天幕の外。二人そろって歩きながら、ジオンは握るミヒの手を見つめる。


「お屋敷のお庭で……」

「ああ、だが、あれは外ではない。屋敷に……お前を閉じこめてばかりだった」


懺悔のような言葉を受け、ミヒはジオンを見る。


向けられる眼差しに、昔のような凛々しさはなく、混沌たる深い陰りがあった。


ジオンの体躯からは阿片という背徳の香りが漂っている。


むごい変わりようと言えた。


「そうだ、今度街に出よう。かんざしを見に行こう。いや、香の方がいいか?ユイも連れて行けばいい」


「ユイ!!」


懐かしい名前を聞き、ミヒは顔を輝かせる。


「ああそうだ。元気だよ。お前の帰りを待ちわびている」


屋敷の者はだめだと思っていただけに、生きていると聞かされ、ミヒは涙が出るほどうれしかった。


「そうだ……宮殿に……そうだな、ユイも、皆、宮で暮らせばいい。もちろん、好きな時に、好きな所へ行けば良い。もう、閉じ込めは……しない」


ジオンは頷いた。


「……妃はいない……のだから」

そして、ジオンは遠くを望む。


「斬った。不貞を働いた」


「ジオン?」


「だから、戦になった。私が悪い。私は妃に一度も触れなかった。私は、お前のことを、お前だけを追っていた」


つと、ジオンは足を止め、言葉を続ける。


「子が欲しいと言っていた。誰の子でもいいと。子のいない王妃など、役に立たないと……。追いつめてしまったのだ。私が……」


ジオンは、ミヒから受けるであろう、責めを覚悟する。


だが、ミヒは、にっこり笑っていた。

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