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羽海汐遠
12,557
レイ
215
#小説
凍えそうなカモ
19
ささみチーズ。
103
1話 夏は暑いから嫌い
…暑い。
じっとりとした蒸し暑さに目が覚める。汗の感覚が気持ち悪い。
まだ辺りは真っ暗で何も見えなかったが、電気をつけるのも面倒で、手探りに扇風機のボタンを押す。
たちまち涼しくなったが、もっと涼しくしたくなりクーラーの温度を下げるため電気をつけた。 電気のリモコンはいつもスマホと同じ枕元に置いてある。部屋が明るくなって、その眩しさに目を細めた、そのとき___部屋に不審な気配がした。
部屋のドアの前で、何かがこちらを見ている。
「……」
そのまま数秒間見つめあった。なんだ?
「…」
「…」
見つめてくるだけで、そいつは何も言わない。自分は頭をかいて、とりあえず布団に入り直す。
目を閉じる。
これ、夢だったらいいな、なんてのんきなことを思いつき、さっきのあれは気のせいだ、と結論付けた。うん、と独りでに頷き瞼を開ける。
「っっうわあああ」
視界に映ったのは先のあいつの顔で、もういないだろうと完全に油断していた。ドッと心臓が暴れている。
「怖。なに?てか、誰?」
不法侵入者兼不審人物はほんの少し微笑み、すり寄ってきた。ちょっとだけかわいいかもしれない。
「…さすがに、夢だよな」
そう思うと何だかおかしく思えてきて、いつのまにか布団の上に乗り、ずっしりとした重さを感じさせる侵入者の頬をつついた。柔らかい。
「__よかった、人間だ」
心底ほっとしている自分がいた。
「って、ふざけてんの?なんで警察呼ばねーの?」
昴の声が駅前のカフェの店内に響き、周囲のからの視線が集まる。昴はそれを気に留めるどころか、自分の膝の上に座っている少年を指さした。
「いや、だって」
「だってじゃねーよ」
まだなにも言ってないのに否定されてしまった。人の話も聞かずすぐに否定するのはいけないことだと思うのだが。
「…で、そいつは何?」
「なにって、見ての通り少年」
昨晩、寝室に転がりこんで来たのは、さらさらとした黒髪に鮮やかな赤い瞳をした10歳前後に見える男の子だった。まだ幼いが、なかなか綺麗な顔立ちをしている。
「…はあ、やっぱお前と話すのって無駄なんだよな」
「ひどい」
軽口を言い合いながら、自分は自然と少年の頭を撫でていた。彼は大人しく膝の上に座り、ココアを両手でもちストローをくわえている。あれから今に至るまで、一度も言葉を発していない。
「今からでも警察行くべきだ。迷子かもしれないし…あ、お前の親はなんか言わねーの」
昴はため息をつきながら、自分と少年を交互に見ていた。
「今は父さんが海外出張中で、母さんもついていったから俺一人なんだ」
自分も誘われていたが行かなかった。特に理由はない。
昴は、先ほどからずっと少年に話かけたりしていたのに、少年は何も言わないし、赤い瞳で見つめるだけで頷くことすらしない。
まるで猫のようだと思う。
猫に意思表示を求めてもしょうがないだろう。それに、なぜか自分によく懐いていて、だんだん愛着が湧いてきた。
アイスコーヒーを飲む。謎の少年が転がり込んできたこと以外は、いつもと変わらない。毎週水曜日に昴と駅前のカフェでくだらない話をしている。もう一年ほどそうしていた。
少年。昨夜現れた彼を見たとき、死神かと思った。血のような赤い瞳はまっすぐにこちらを捉えていて、暗闇の中でも鮮明に見えた。心底ゾッとした。冷や汗が背中を伝い、ただ恐怖だけがそこにあって、悲鳴すらあげられなかったんだ。
コメント
1件
読み終えたよ〜!第1話、めっちゃ引き込まれた。 まず、真夜中に目覚めたら知らない少年が部屋にいて、しかも無言でじっと見つめてくるって状況、想像するだけで背筋がゾッとした😰 でも、主人公が「夢だよな」って自分の都合よく解釈して、そのまま布団に入り直すとこ、ちょっと笑っちゃった。現実逃避にも程がある(笑) それでいて、ラストの「死神かと思った」「心底ゾッとした」って告白が、冒頭のほのぼのした空気を一気に切り裂く感じがすごく良かった。可愛いだけじゃない、この子の正体が気になりすぎる…! 昴もツッコミ役でいい味出してるし、日常と非日常の境界が曖昧な空気感が、この作品の魅力だと思う。続き、めっちゃ気になるよ〜🌙