テラーノベル
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#オリジナルストーリー
ナルト大好き👑🤲
#ハッピーエンド
空気が凍りついたかのような時間が流れる。
(え、今の……夢猫ちゃん……?)
いつもの配信で見てる姿とは違う冷たい声、冷めた表情。さっきまでの怯えていた夢猫ではなかった。
(どういうこと……?)
そんな俺の気持ちとは裏腹に、視界に四角いウインドウが一斉に流れていく。
『は? 男……?』
『ちぇっ、彼氏いるのかよ。つまんね』
『男は死ね!!!帰れ!!』
チラリとコメントを横目で見つめる。
(コメント……?)
それは、紛れもなく現実世界の夢猫のリスナーだった。
(あー……俺、歓迎されていないな)
でも、毎日浴びている課長の嫌味に比べれば、こんな罵倒は挨拶みたいなもんだ。
(違う、そうじゃない)
(放っておいたら夢猫ちゃん死ぬかもしれないんだぞ!? 画面の向こうの安全地帯で石を投げて。お前らに何ができるんだよ!?)
「俺は真守。夢猫ちゃんを助けに……」
言いかけると、大きな地響きの音が背後から鳴り響く。 背筋を冷たい汗が伝う。 背後に、あの化け物がいる。
そして、目の前の夢猫はやけに冷静だった。
夢猫はさっきまで震えていたのが嘘のように、スッと表情を消した。
その目は俺ではなく、空中に浮かぶコメント欄だけを陶酔したように見つめている。
氷のように冷たい目をこちらに向け、言い放つ。
「これはね、配信なの。みんな夢猫を見てる……」
「は……?」
「この人たちは、夢猫を愛してくれてるんだよ」
『そうだそうだ! 俺たちは夢猫を愛してる』
『男なんて見たくないw消えろ!!』
『は? 初対面? ストーカー???』
またコメントが流れる。
(……まぁ、そうだよな)
俺がまだ画面の向こうにいたら、同じように石を投げていただろう。
俺が全方面から歓迎されていなくても、今夢猫ちゃんを救えるのは俺しかいない。
「この配信は、私の居場所。観客《リスナー》は皆、私を愛してる」
「配信……? いや、それどころじゃないだろ、このままだと死ぬぞ!?」
俺は力の限り叫ぶが、闇のように深い瞳に吸い込まれただけだった。背後の触手が蠢いている。
一本の触手が夢猫を狙って突き出してくる。
「危ないっ!」
「きゃっ!」
俺は渾身の力を振り絞って夢猫を突き飛ばした。
間一髪のところで夢猫は触手の攻撃を免れたが、代わりに俺の左足に絡みついてきた。
「!?」
気づくと俺は宙に浮いていた。
勢いよく視界が飛び、そのまま地面に叩きつけられた。
「がはっ……!」
衝撃と共に息が吸えなくなり、視界が揺れる。
目の前には夢猫がいた。
揺れる視界で大好きな人を見つめる。
(ここで俺が死んだらどうなる……? 夢猫ちゃんまで殺されてしまうのか?)
痛みも苦しみも全て飲み込んで立ち上がる。
口の中が血の味でいっぱいだ。
それでも、立ち上がらないといけない。
(大好きな、夢猫ちゃんのために……!)
すると、再び視界にホログラムが現れて中央に大きく表示された。
『固有スキル【傾聴者の守護《ガーディアン・オブ・リスナー》】習得しました。起動にはコメント獲得が必要です』
「スキル? 起動ってなんのことだよ!」
再度、魔物の巨大な触手が振り下ろされる。俺は反射的に夢猫の手を掴み走り出す。
触手はムチのようにしなり、俺と夢猫の付近の地面に叩きつけられる。
地面はえぐられ、砂煙を上げながらボロボロと崩れ落ちる。
「こんなの、当たったら死ぬだろ……!」
ゾッとする俺の気持ちと裏腹に、コメントは茶化すように流れていく。
『ストーカー死ね消えろカス!!』
『男だけ触手にやられろ!』
『夢猫ちゃんに触れるな!!!!!』
『触手頑張れ! やっちまえ!!!!』
(俺のアンチ、多くね……?)
視界の隅に表示された、ホログラムのゲージが急激に上昇していく。
『コメント受信中……充填率:40%……68%……』
(……なんだこれ? 罵倒されているのに、数値が上がっていく……?)
手を掴まれた夢猫は、不思議そうに問いかけてくる。
「逃げてどうするの? 配信中だよ? 逃げたら、誰も夢猫を見てくれなくなっちゃうじゃん!」
「バカか! 逃げなきゃ死ぬんだよ!」
「……死んでもいいって、夢猫が思っていても?」
「あぁ、ダメだ。俺が死なせない!」
俺は夢猫の手を掴み、めちゃくちゃに走った。
「はぁ……はぁ……くそっ!」
何年もデスクワークでなまりきった体に、泥だらけのスーツと革靴だ。
(体が……重すぎる……!)
肺が悲鳴を上げ、痛いくらいに空気を求める。足が鉛のように重くなってくる。
「はぁ……はぁ……」
足がもう限界だ。
夢猫も同じように肩で息をしている。
角を曲がると、そこは行き止まりだった。
逃げ場を塞ぐように、暗い岩壁が目の前に立ちはだかっていた。
「……クソッ」
「終わりだね、真守くん」
夢猫の声は、こんな状況なのに楽しそうに弾んでいる。
「終わりじゃねぇよ……!」
振り絞るような声に、夢猫がビクっとする。
「俺はずっとブラック企業で働いて……何の生きる意味も見いだせずに生きてきた……」
肩で息をしながらも、何とか声を振り絞る。
「そんな中で出会ったのが夢猫ちゃんなんだ。あの配信でいつも俺を幸せにしてくれた。生きる意味を見出してくれたんだ……」
「……真守くん」
夢猫の表情が少しだけ明るくなった。居場所を見つけたかのように。
『何、告白してるんだよw』
『ストーカーはキモい社畜だった件』
『魔物早く来て!!! やっちゃって!!!!』
視界に映る四角いコメント欄が、一斉に流れていく。 もはや滝のように流れ、一つ一つを読み上げることはできない。
自分に向けられた視線。そして言葉。
その一つ一つが、刺さるようにも支えるようにも感じられる。
そう、今までは俺もあの中のコメントの一つだった。
「逃げないなら……俺が守るしかないだろ!」
叫んだ瞬間も、コメントは、俺の心を無視して目にも止まらぬ速度で流れていく。
『お前に守れるわけないだろw』
『夢猫ちゃんに触れるな!!!!!』
『触手頑張れ! やっちまえ!!!!』
悪意ある言葉が流れるたびに、ゲージは満タンに近づいていく。俺に向けられた殺意が、ゲージを赤く染めていく。
すると、突然目の前にまた大きなホログラムが映し出される。
『コメント受信。充填率:100%』
(なん、だ……?)
『固有スキル【傾聴者の守護《ガーディアン・オブ・リスナー》】準備完了。いつでも起動できます』
(守護……?)
考える間もなく、大きな触手が勢いよく迫ってきた。
(そういえばコメント獲得が必要とか出ていたような……?)
(準備完了ということは、何かできるってことだろ!?)
俺は立ち上がり、手をかざした。
すると、滝のように流れるコメントが光の粒子となり、壁になっていく。
「これは……盾?」
青白く輝く大きな盾だった。
『傾聴者の守護《ガーディアン・オブ・リスナー》』
(……盾、か)
剣でも、銃でもない。
野球部に打ち込んだ高校時代を思い出す。
(来る日も来る日もキャッチャーミットを構えて、ホームベースを守り続けていた俺に……あつらえ向きのスキルじゃないか)
盾を手に取る。ずっしりとした重みが伝わってくる。不思議と、扱い方がわかる気がした。
構えろ。
腰を落とせ。
俺の体は、まだ守り方を覚えている。
俺の手の先でその盾が、触手たちの攻撃を完全に弾き飛ばした。
(ホームを目掛けて向かってくるスライディングに比べたら、軽い……!)
その衝撃が洞窟を揺らし、俺の腕にも伝わってくる。
一打一打が重く、衝撃で壁が崩れていく。
「うおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
背後に、夢猫ちゃんがいる。
俺が大切な人を守れている。
その想いが、この攻撃を全身で受け止めていく。
――
真守の背後で、ぎらりと瞳が光る。
その瞳は恐怖ではなく、獲物を見つけた猛獣のようだった。
「……見つけた。夢猫だけの、特別な騎士様《ワンちゃん》」
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