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すかいお~あ@毎日投稿&猫化?
けだま15号🍓🐾໊
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【ワトソンの回想】
ホームズは、紙から視線を上げる。
———
しばらく、何も言わない。
———
指先で、机を一度だけ叩く。
乾いた音。
———
「二つある」
———
それだけ言う。
———
私は顔を上げる。
———
「何がだ」
———
ホームズは、先ほどの帳面を指す。
———
「記録」
———
次に、紐で括られた紙を見る。
———
「伝承」
———
わずかに間を置く。
———
「形が違う」
———
私は、もう一度目を落とす。
———
確かに違う。
———
だが、それだけではない。
———
「……子供たちの歌は」
———
言いかけて、止める。
———
ホームズが、先に言う。
———
「三つ目だ」
———
短い。
———
それ以上は続かない。
———
私は、言葉を探す。
———
見つからない。
———
「どれが——」
———
口に出しかける。
———
ホームズは首を振る。
———
「選ぶ必要はない」
———
低く言う。
———
「すでに、混ざっている」
———
私は黙る。
———
紙を見る。
———
帳面を見る。
———
思い出す。
子供たちの声。
———
重なっている。
———
「……誰が」
———
ようやく出た言葉だった。
———
ホームズは答えない。
———
視線だけを、落とす。
———
「誰でもいい」
———
静かに言う。
———
「残ったものが、歌になる」
———
外で、水の音がする。
———
低く。
———
途切れない。
———
ホームズは、本を閉じる。
———
「行こう」
———
それだけだった。
———
私は、あとを追う。