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るしゅ
鬼霧宗作
鬼霧宗作
【ワトソンの回想】
ホームズは、紙から視線を上げる。
———
しばらく、何も言わない。
———
指先で、机を一度だけ叩く。
乾いた音。
———
「二つある」
———
それだけ言う。
———
私は顔を上げる。
———
「何がだ」
———
ホームズは、先ほどの帳面を指す。
———
「記録」
———
次に、紐で括られた紙を見る。
———
「伝承」
———
わずかに間を置く。
———
「形が違う」
———
私は、もう一度目を落とす。
———
確かに違う。
———
だが、それだけではない。
———
「……子供たちの歌は」
———
言いかけて、止める。
———
ホームズが、先に言う。
———
「三つ目だ」
———
短い。
———
それ以上は続かない。
———
私は、言葉を探す。
———
見つからない。
———
「どれが——」
———
口に出しかける。
———
ホームズは首を振る。
———
「選ぶ必要はない」
———
低く言う。
———
「すでに、混ざっている」
———
私は黙る。
———
紙を見る。
———
帳面を見る。
———
思い出す。
子供たちの声。
———
重なっている。
———
「……誰が」
———
ようやく出た言葉だった。
———
ホームズは答えない。
———
視線だけを、落とす。
———
「誰でもいい」
———
静かに言う。
———
「残ったものが、歌になる」
———
外で、水の音がする。
———
低く。
———
途切れない。
———
ホームズは、本を閉じる。
———
「行こう」
———
それだけだった。
———
私は、あとを追う。
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