第51話:翡翠でつながる空
朝の教室。
水色のシャツに短パン姿のまひろは、机上のヤマトタブレットを起動した。
画面に淡い緑色の光が走り、「ヒスイリンク 接続完了」と表示される。
教師は濃い緑のスーツに灰色のネクタイを締め、縁メガネを直しながら黒板の前に立つ。
「今日は “ヒスイリンク” と “ヒスイネット” の学習です」
クラスの端末が一斉に起動し、透明なアイコンが浮かぶ。
まひろは声に出して入力した。
「ガッコウ → シュウセキ → オワリ」
ピッという音と共に、教師の端末にまひろの名前が表示される。
「これが ヒスイリンク です。個人の安心をつなぐ大和国の未来の電波」
教師の声は落ち着いていた。
「家族や友達と話す時も、買い物や勉強をする時も、必ずヒスイリンクを通じます」
次に、壁の大画面に港町の映像が流れる。
貨物船が並ぶ埠頭。クレーンが動き、緑のランプが点滅していた。
ナレーションが響く。
「物流・医療・教育・防犯。すべての情報は ヒスイネット で結ばれています」
スーパーのレジ、病院の診察受付、防犯カメラの映像。
それらが一斉に画面に映し出される。
「ヒスイネットがあるから、わたしたちの暮らしは守られているのです」
CM映像に切り替わる。
緑の背景に明るい文字が踊る。
「ヒスイリンクで人と人を!
ヒスイネットで社会を!
今日も安心、大和国!」
子どもたちが笑顔で唱和する。
「ヒスイでつながる未来〜!」
まひろは小さな声で呟いた。
「……でも、ぜんぶ見られてるんだよね?」
暗い部屋。
緑のフーディを羽織ったゼイドが、複数のモニターを見つめていた。
そこには無数の入力ログが流れている。
「ガッコウ」「ケッサイ」「オワリ」……。
ゼイドは低く呟く。
「リンクは鎖。ネットは網。
安心と呼べば、人は自ら縛られる」
モニターの光がゼイドの横顔を淡く照らしていた。
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