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もう少しでひな祭りですね。
本家には、私が生まれた時にお祝いとして買ったというガラスケースに入った二段の、それなりに大きいお雛様がありましてね。
今じゃ二段のお雛様といえば、お雛様とお内裏様、それから三人官女を並べるのが一般的らしいのですが、うちにはお雛様とお内裏様、三人官女と更に五人囃子も並んでいました。
普通なら上段にお雛様とお内裏様、その下に三人官女、またその下に五人囃子が配置されるそうです。
うちのお雛様のケースは下段が広い作りだったので、三人官女と五人囃子が同じ段に並んでいました。ケースが大きかったので、別に窮屈そうではありません。
横にネジがついていて回すと「あかりをつけましょ ぼんぼりに」と歌のお姉さんのような、はたまたおばさんのような歌声が鳴るんです。
ところが約二十年後。私の娘が生まれてから、母から「女の子だしお雛様使う?」と問われて引っ張り出したお雛様、ネジを回したら、お姉さんの歌声なんて録音されてないんです。
全てオルゴールの音だけなんです。ネジが止まるまで、オルゴールでひな祭りの曲がループするんです。
音声部分だけ壊れて修理にでも出したのかと母に聞きましたがね、「は?あんた何言ってんの、昔からこのオルゴールだけど」と言われました。
娘が二歳くらいになった時、私は当時まだシングルだったので、お祝い事は人数が多い方が良いからと本家でやっていたんです。
さて今年もひな祭りを本家でやろうかとなった時、娘が引っ張り出したお雛様を見て突然ギャン泣きしまして。
どう見ても怯えた顔で泣きながら、私にしがみつくんですよ。
「どうしたの?何も怖くないよ~」と試しに母がネジを回してみましたら、幼少期に何度も聞いたあの歌のお姉さんのような、はたまたおばさんのような明るい声で「あかりをつけましょ ぼんぼりに」と流れたんです。
近くにいた母や祖母には聞こえていませんでした。しかし娘には聞こえていたようで、「おっかい(怖い)」と繰り返しながら私の背に隠れてしまいました。
こんなもの持っていてもどうにもならないと判断して、「ごめん。このお雛様ダメだわ。今後うちでも飾れないから、勿体ないし悪いけど処分して」と母に頼んだことで、買った当人の祖父母は渋っていましたが、元から人形嫌いな母を味方につけたことで処分が決定しました。
粗大ゴミに出そうと母と話しゴミ収集の日に外に出したのですが、どうしても人形好きな祖母が処分を取りやめたかったらしく、こっそり電話で断りを入れて同宗教の知人に譲ったそうです。
それ以来、あのお雛様がどうなったかは知りません。わざわざ知りたくもありません。
あのお雛様がダメだったのか、太い霊道が2本重なったあの酷い本家に置いたのが悪かったのか。
まあ多分、あの本家ですから後者だと思いますけどね。
ちなみに置き場は毎年、あの恐ろしい霊体がぎゅっと詰まった仏壇のある部屋でした。
あれ以来、本家でのひな祭りはやらなくなりました。
その約一年後、時系列的にはこの小説の最初の方に投稿した『〇〇〇〇』や『叔父さん』の話に繋がり、今の夫との出会いもあって、以後のお祝い事は自分の家でやることになりました。
うちに置くお雛様はセリアで買った小さい陶器の可愛い置物のみ、です。それで十分。
だって子供からしたら、美味しいご馳走とケーキがあれば良いのです。
『お雛様』はあくまでも昔ながらの縁起物というか、厄除けみたいなものですから。飾らないよりは飾った方が良いけれど、何かが入った危ない人形を置くべきではありませんので。
あの陶器のお雛様とお内裏様には、仮に霊魂が入ったとしてもなんにも出来やしません。
安心安全が第一ですから、ね。