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花月夜れん
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柴田
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#バイオハザード
そまもんた@ペア画募集
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──世の中には、数多くの魔法や魔術があり、それを研究する魔術師がいる。このことは誰もが知っていることだろう。魔術師が研究するのは、既存の魔術だけではない。新たな魔術の開発もするのである。
その中でも有名な研究例は『防御結界』の構成方法。壁のように展開することはできるが、死角なしの球状結界の構成は難関だった。基本は防御力の高い正六角形で構成するのだが、それでは完全な球にできない。俺だって悩んでいた。どうせなら美しいものにしたいからな⋯⋯。
そんな時に見つけたのが、ユウマの『サッカーボール』。これは本当によくできている。五角形と六角形が作り出す、完全な球体。2つ以上のものを組み合わせるという発想は、これまでの魔術師たちにはなかったのだろう⋯⋯いや、伝承では1人いたな。あの魔術の始祖だけは、この球状結界を使っていた⋯⋯。そう、『フェルディリーア・クロノス』。初めて魔術の基礎を完成させた人物である。
あの手紙を見て、俺はすぐに術式構築を急いだ。間違いなく何か起きている。『サッカーボール』を一目見た時から、アイデアは固まっていた。あとは術式を組むだけ。そして完成したのが、『絶対防御』である。属性は『異属性』。異世界の物からインスピレーションを受けたので、こう名付けたのだ。その名の通り、この防御結界はどんな攻撃も通さない自信がある。現に今、俺が放った最上位魔術にも耐えてみせた⋯⋯よし、使えるな。
あとはこっちの術式を完全に理解、習得できればいいんだが⋯⋯。
俺は『瞬歩』を解くと、フワリとミユたちの前に降り立つ。取り敢えず馬鹿みたいな魔力があるやつに狙いを定めて撃ったが⋯⋯避けられたか?
「あ、アステル様⋯⋯」
「状況は大体わかった。カグア、ミユ、傷見せろ」
俺は2人の傷を『止血封』で治癒してやる。これでよしっと。
「カグアは俺のそばにいろ。いろいろ聞きたいこともあるしな。ミユ、シオン、シン、ディラン、アリス。お前たちは逃げろ」
「っ、だけど⋯⋯!」
「大丈夫だって。俺たちのことは気にするな。山を下りたらすぐ森に入れ。気配を隠して逃げろよ? 狙いはお前たちだからな」
「行くぞ、ミユ!」
シンがミユを抱えて走り出す。他の3人もあとに続いた。
「ねぇ、なんで!? このままじゃ、アステルも⋯⋯」
「いいから行くぞ! アイツだけじゃないんだ! 周りには魔人までうじゃうじゃいる!」
ガサガサッと木々をかき分けて山を下りていく。それを見たイルヴァは宙に浮かびながら、1人でボソボソとつぶやいていた。
「チッ、だから屋敷の中まで入れておきたかったんだ⋯⋯勘のいい鼠がいたせいで台無しだ」
不機嫌をあらわにしながら、半分ほどに減った配下を睨む。
「おい、さっさと追いかけろ⋯⋯アイツらは仮にも裏稼業のプロなんだ。気配を隠されちゃあ、見つけるのは俺でも難しい」
さっさと行け、とそばにいた使用人の1人を蹴って、マグマに突き落し脅す。
「しょしょしょ承知しましたぁ!!」
うん、なかなかの暴君だな。残りの魔人は50いるかいないかくらいか? なら、今のうちに殲滅して⋯⋯。
「させると思うか?」
フッと現れ、俺に蹴りを放ってきた。俺はすぐさま『瞬歩』で高速移動し避ける。ユウマ⋯⋯じゃないんだよな? なんだ、コイツ。
「まったく、無能な部下とはこうも面倒なものなのか⋯⋯指示されないと動かない、人形同然だな」
1人でぶつくさ言っているヤツに、俺は聞く。
「お前、名前は?」
「うん? 『イルヴァ』だと言っただろう⋯⋯話を聞いていなかったのか? しっかし、やってくれたなぁ」
「何が?」
屋敷の上空へと昇っていきながら、まずは会話をしてみる。
「さっきの迷惑なやつだよ⋯⋯えーと、『魔術』だったか? それのせいでわざわざ魔界から連れてきた部下も、手に入れた拠点もめちゃくちゃだ。この責任、どう取ってもらおうか⋯⋯」
「それはこっちのセリフだ。お前はユウマだけじゃ飽き足らず、他のみんなにまで手を出そうとしてる⋯⋯俺が見逃すと思うなよ」
「その前に俺がキミを殺せばいい話だろう? キミに勝ち目はない」
「ハッ、どうだか」
イルヴァの眉間にしわが寄った。よし、挑発成功。
「いやいやいやいや、何してんですかぁ!!」
「何だよ、カグア。集中したいから、じっとしててくれ⋯⋯それより、教えてくれよ。『魔族』について」
「教えるのはいいっすけど、たとえアステル様でも、アイツには勝てませんぜ!! 今すぐ逃げてください!!」
「それじゃ俺の気が収まらない」
「っ⋯⋯あー、もう!」
そう言うと、カグアは俺にしがみつきながら話しだした。
「⋯⋯『魔人』にも階級があるんす。下位から最上位までの4段階。ただ、あくまでもこれは大まかな部門分け。同じ階級の魔人でも、強さには大きな差があるんす⋯⋯今、下にいるのは下位の魔人ばかりっすね。ちなみに俺は中級の上の方ですぜ!」
「ふむ、じゃあ『魔族』は『最上位』の魔人の別名か?」
「違いますぜ。まったくの別物です」
ほう、だとすると⋯⋯。
「『魔人』を超越した上位存在、それが『魔族』! 人間界で言うところの『王侯貴族』と同じです。『最上位の魔人が何百人束になっても叶うことはない』、天災級の厄災ですぜ!!」
なるほど。
「魔族は魔人よりも遥かに魔力量の多い存在です。その魔力に阻まれて魔術は効きにくい、物理はすぐに回復される⋯⋯『禁術』は絶対に効きませんぜ! 水に水をかけているのと同じです!!」
「なるほどなぁ」
うん、よくわかった。さて、時間くらいは稼ぐとするか。
「さて、お話は終わったかい?」
「あぁ、さっさとやろう⋯⋯」
「フン、人間風情がずいぶんと思い上がるものだ⋯⋯ま、名前くらいは聞いておいてやる。俺が2度も名乗ったんだ⋯⋯お前も答えろ」
「──『天子』だ。『天子のアステル』」
それを聞いたイルヴァは、ピクリと眉を動かす。
「ハッ、とんだ茶番だな⋯⋯まさか人間ごときが、ここまで大きく出るとは!」
「別に自分から名乗ったわけじゃない」
「そうか」
それだけ言うと、イルヴァは再び『瞬時空間転移』を発動する。予備動作なしの転移。俺は常時、高速移動をすることで対応することにした。というか、今はこれしか対処法がない。さて、サンプルがいくつかほしいな⋯⋯。
「しっかり掴まってろよー、カグア!」
「えぇぇぇぇ!!」
俺はビュンビュンと空を高速で飛びながら、戦闘態勢に入る。まだいくつか開発できそうな魔術もあるんだ。そう簡単に死ぬ気はない⋯⋯!
〈Inside Story〉
その頃。エルシア公爵領では、領民が騒ぎを聞いて口々に噂していた。エナが冒険者ギルドの建物から出る。
──知ってる? ルカ様が出撃命令を出したんですって!
──なんでも、末っ子の『天子』様が誘拐されたとか⋯⋯。
「なっ⋯⋯『天子』⋯⋯アステルが誘拐!?」
慌てて短弓と矢を準備し、『水鏡瞳』で居場所を探る。
「待ってるのよさ、アステル! このエナが、華麗に駆けつけて⋯⋯あれ、なんでアステルに⋯⋯? ルカ様ーー! 今行くのよさーーー!!」
爆速の全力疾走。洞窟付近の森に着くまで、あと15分。
コメント
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おお、第26話、面白かったです!サッカーボールから球状結界を着想したアステルの発想力が素敵だなと。それに「魔族」と「魔人」の違いが明かされて、イルヴァの強さへの緊張感が一気に高まりましたね。そしてエナの「爆速の全力疾走」…あの軽妙な台詞回し、好きです。天子vs魔族、この構図、続きが気になります!