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それから、みことは何とか落とし穴から抜け出し、地上で待っていた5人と合流した。
そして、自分が先程使った剣を見る。
みことが魔物の熊にこの剣を振り下ろす時、この剣に電流のようなものが流れたらしい。
バチバチっと剣に雷光のようなものが走り、それが先駆けとなって熊の首を落とせたように思う。
雷光が先に熊を痺れさせていなければ、きっとみことは熊に反撃されていただろう。
だが、みことは人間である。
れっきとした、大和男子である。
魔法のようなものは生まれてこの方使ったこともないし、そもそも使えるとは思わない。
ならば、この剣に魔法の力が宿っているのか、それともここに飛ばされた際にそんな力が備わったのか。
暇「やっぱりXが何か仕込んだんじゃね?」
す「え、でもXさんが俺らに危険なことさせる?」
み「下手したら死ぬとこやったぞ!!」
もうそろそろ、みんなもちゃんと気が付き始めてきた。
これは、Xさんがやったことではないということに。
ではなぜ、彼らはこんなところに飛ばされてしまったのだろうか。
その答えは、もちろん誰にもわからなかった。
とりあえず、良い食料を手に入れることができた。
ということで、まずは腐る前に保存にとりかかった。
ちゃんと熊に手を合わせてから剣で熊の肉を裂き、内臓を取り出し、ちゃんとわける。
そして、良い感じの唐草模様の風呂敷が落ちていたのでそれで肉を包んだ。
これで腐らないかと言われれば答えに詰まるが、まあそこはいろいろと都合の良いこの世界に頼むとして。
い「てか、みことが使えるんなら俺らも魔法的なもん使えるんじゃね?」
こ「え!ホンマ!?めっちゃファンタジーやん!」
ら「でも使い方わからんよ?」
LANの言葉に、みんなが黙り込む。
みことも、先程はとても必死だったために何がどうなったのかは覚えていない。
魔法が使える可能性は出たが、使い方がわからないから使うことができない可能性も出た。
でも、こういうのに興味がありすぎる6人は、どうにかして魔法というものを使いたい。
6人が考え込んでしまっていると、遠くからザッザッザッという数人の足音が聞こえてきた。
6人はそれを聞いて、バッと戦闘態勢に入る。
何てったって、6人はこの世界に飛ばされてきてから、1度もこの世界の住人だと思われる人間にあっていない。
魔物にばかり会っている。
つまり、今度ここに来ようとしている足音もまた、魔物だと思ったのだ。
だが、6人の前に姿を現したのは、人間だった。
人数は3人だ。
30代〜40代くらいの男の人が、杖やら剣やらを持って、6人を唖然と見つめている。
3人の人間の中でいちばん偉そうな人間は、熊の肉だと思われるものが包まれた風呂敷を持って戦闘態勢に入っている6人を見て、目を丸くする。
?「この轟王熊(キンググロウルベア)を倒したのは、、、君たちかい?」
こ「きんぐぐろうるべあー?」
い「この熊の魔物のことだろ、多分、、、俺たちというか、コイツが勝手に落ちて勝手に倒したというか。」
み「もしかして、倒したらダメ系の奴!?」
異世界のはずなのに日本語が伝わるんだな、なんて思いながら、ここの世界の住人だと思われる人たちとコミュニケーションを取ろうと頑張ってみる。
すると、来た3人の人のうち、偉そうな人に使えているらしい杖を持った人と剣を持った人が何やらコソコソと話した。
言葉が伝わらなかったのか、と6人はやや不安を覚えたが、偉そうな人がポカンと口を開けて呆然としていることから、伝わってはいるようだということがわかる。
す「あのぉ、、、」
杖「君たちはどこから来たんだね?」
杖を持った人が、偉そうな人を庇うように前に出ながら、6人に問いかけた。
その翠玉のような目には、警戒の色が浮かんでいた。
轟王熊(キンググロウルベア)というものを倒してしまったからかどうかはわからない。
ただ、警戒されていることだけがわかった。
ら「よくわからないんですよね。俺たちがもともといたところは『日本』っていう国なんですけど、気がついたらあっちの野原にいて。とりあえず生き延びるために衣食住を確保している途中です。」
LANもまた、警戒心を見せている人たちを警戒して、リーダーらしくメンバーを守るように前に出て言った。
それが何となく気に食わなかった5人は、前に出たLANの横に並ぶようにまた前に出る。
それを見て、LANはびっくりしたようにみんなを見てから、泣きそうに笑った。
シクフォニには、誰が偉いとかいうのはない。
リーダーだからみんなを守らなくちゃ、というのもない。
5人の行動は、それを示しているようなものだった。
6人で支え合って協力しあって生きるということを、そのまま表現したようなものだった。
杖「日本、、、?」
剣「異世界か、、、?」
杖を持った人と剣を持った人が、困惑したようにそう呟いて顔を見合わせる。
恐らく、この2人が偉そうな人の護衛なのだろう。
そう思いながら、6人は相手がどんな反応をするのかを見計らうように黙る。
護衛のふたりが困惑しているのを見て、黙って話を聞いていた偉そうな人は、口を開いた。
伯「とりあえず君たちには、私の屋敷に来てもらおうと思う。私はこの国の伯爵だ。覚えておくと良い。」
なんと、偉そうな人は本当に偉かったらしい。
そして、その偉い人に、シクフォニの6人は屋敷に招待されてしまったのだった。
さて、ここから何が始まるのやら。
轟王熊(キンググロウルベア)とはいったい、何のことなのか。
どうして、轟王熊(キンググロウルベア)と呼ばれた熊の魔物を倒したら驚かれたのか。
どうして屋敷に招待されたのか。
ここはどこなのか。
どうして6人がここに飛ばされたのか。
そんな疑問を全部受け止めてくれるだろう人間に会えて、とりあえず6人は安心する。
ぐぅうぅううぅ〜〜〜〜
安心したからか、こさめのお腹が盛大に鳴った。
その音に、この場にいるこさめ以外の全員の視線がこさめに突き刺さった。
こさめは真っ赤になってお腹を押さえる。
あんなにスライムを食べたくせに、もうお腹が空いてしまったらしい。
こ「ごめんなさい、、、」
伯「はっはっは!若者はエネルギーをよく消費するからな!私の屋敷で話す前に、食事にするか。」
剣「では、私めは屋敷にそう知らせを。食事の準備をするようにいいつけておきます。」
伯「ああ、頼んだよ。」
伯爵は、こさめの謝罪を受けて、そんなことを言う。
その「伯爵の屋敷での食事」という協力ワードに、6人はごくりと生唾を飲んだ。
ここに来てから、まともな食事にありつけていない。
決して食事に釣られたわけじゃないから、と6人は自分自身に言い訳をして、伯爵について行くことにした。