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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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そして12月も中旬を迎えた。

この日は俊の元妻・麻美の結婚披露パーティーだった。


雪子は俊に買って貰った服を着て念入りに化粧をした。化粧を終えた雪子は鏡に映る自分をじっと見つめる。

更年期のせいで少しふくよかだった雪子の身体はいつのまにか元のスレンダーな体型に戻っていた。

恋をすると自然に痩せて綺麗になると聞くけれど、その説は50代の女性にも通用するらしい。

そして雪子はただ痩せただけではなく肌の色艶も良く生き生きとしている。

更年期で鬱々していた頃とは見違えるほど雪子はとても美しくなっていた。


俊が迎えに来たので雪子は車へ乗り込む。


俊は雪子が玄関を出てきた時から見とれていた。二人で一緒にワンピースを買いに行った時よりも雪子は明らかに綺麗になっていた。俊は美しくなった雪子を満足気に眺めた後目的地へ向かって車をスタートさせた。


車が走り始めると雪子も俊をチラリと盗み見る。今日は俊もスーツ姿だった。

少し光沢のあるダークグレーのスーツがとても似合っている。堂々とした雰囲気には大人の男の色気とオーラが漂っている。

こんな素敵な人の隣にいられるのならもっと綺麗になりたい、もっと美しくなりたい…雪子はそう思う。


結婚式の会場は南青山にあるフレンチレストランだ。会場近くに車を停めると2人はすぐにレストランへと向かった。

『本日貸切』の看板が掲げられたレストランへ入ると既に何人もの招待客が来ていた。


俊はその中にいる顔見知りの人達に挨拶をして回った。もちろん雪子も紹介される。

俊が雪子と付き合っている事を知った知り合い達は微笑んで二人に良かったわねと言ってくれた。

俊の元妻だけが幸せになるのではなく俊にもきちんとパートナーがいる事を知り皆が安心しているようだ。


挨拶を終えた2人がテーブル席へ移動すると後ろから声がした。


「よぉ、俊!」


俊が振り向くとそこには加藤がいた。

加藤と元妻の麻美は顔見知りだったので加藤も招待されていたようだ。

加藤の隣には俊も初めて会う女性がいた。


「俊は初めてだよね? うちのかみさんだよ。こちらは一ノ瀬俊さん、俺のボスだ」

「加藤の妻の理恵と申します。いつも主人がお世話になっております」


理恵はとても控えめで物静かな女性だった。


「初めまして、一ノ瀬です。こちらこそご主人にはいつもお世話になっております」


そして今度は俊が雪子を二人に紹介する。


「今お付き合いしている浅井雪子さんです。こちらは仕事仲間の加藤夫妻だよ」

「初めまして、浅井と申します」

「初めまして、加藤です! あれ? 誰かに似ていると思ったら女優の和久井奈見さんかなぁ? 似てるって言われませんか?」

「本当、良く似ていらっしゃるわ!」


加藤の妻・理恵も言う。


「ほんのたまーに言われる事はありますが……」


雪子は恥ずかしそうに答える。

そこで加藤が言った。


「俊は若い頃、和久井奈見の大ファンだったんだよなぁ?」

「え? そうだったか?」


俊がとぼけたので加藤が笑った。


「いやマジでそうなんですよ。だから和久井奈美が結婚した時はそりゃあもう悲しんで」

「おいっ、だいぶ昔の事だろう……」


俊がバツの悪そうな顔をする。


「そうだったの?」

「20代の頃だよ」


俊が気まずそうに言ったので思わず加藤が噴き出した。

それにムッとした俊は、


「お前こそどうしたんだよ、急に奥さんを連れて来て」


と加藤の耳元で呟いた。そしてチラッと雪子を見る。

雪子は加藤の妻と話を始めていたので俊の言葉は聞いていないようだ。


「お前に言われたろう? 還暦になった途端女房に捨てられるぞって。あれを聞いてゾッとしたよ。で、あれからちょくちょく二人で出かけるようになったんだ、買い物とか食事とかさ。で、先月麻美さんの店に連れて行ったら折角だから二人でパーティーに来てよって言われてさぁ」


加藤は少し照れたように言った。

俊は思わず加藤の背中をバシッと叩いてから言った。


「良かったな。これで熟年離婚は免れたって訳だ」


すると加藤は頭を掻きながら一緒に声を出して笑う。そして俊に言った。


「お前が付き合っている相手の事をオバサンなんて言って悪かったな。凄く可愛い人じゃないか」

「だろう? 俺達は今まで熟女の魅力を見過ごしていたんだよ。やはり大人の女には若い女にはない深い色香があるんだよ」

「ハハッ、お前相当骨抜きにされているなぁ。まあせいぜい大事にしろよ。お前はもう二度と失敗はできないんだからな」

「なんだ、偉そうに?」

「ハッハーッ、俺はまだ一度も失敗はしてねーからな」


加藤の言葉を聞いた俊は再び加藤の背中をバシッと叩いた。


「イッテー」


加藤は大袈裟に反応してから穏やかな表情で言った。


「お前たちの結婚パーティーにも呼んでくれよ。女房を連れて行くからさ」

「ああ、必ず招待するよ」



それから麻美と医師をしているフィアンセの結婚披露パーティーが始まった。

招待客は二人のごく近しい人ばかりだったのでパーティーはアットホームな雰囲気の中楽しく進んでいった。

スレンダーな白のウェディングドレスを着た麻美はとても美しかった。

元妻が違う男と並んでいるのを見るのは不思議な感覚だったが、自分が幸せにしてやれなかった分元妻が新たな幸せを手にして輝いているのを見るのはとても嬉しかった。

俊は麻美に対する責任がこの日漸く終わったような気がして心から安堵した。


そして俊は隣にいる雪子へ視線を移す。

雪子は司会者が話す2人の馴れ初めを楽しそうに聞いている。

俊にはまた新たに守りたい人が出来た。残りの人生はこの女性と共に生きていいく。死が二人を分かつまでずっと一緒に。

俊はそう心に誓いながら隣りにいる愛しい女性の事をじっと見つめた。

51歳のシンデレラ

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コメント

3

ユーザー

麻美さん、ご結婚おめでとうございます🔔👰🍀 元妻の麻美さんは 医師の旦那様と お幸せそう....💖 そして 加藤さんも、若い子と遊ぶのは止め 奥様と仲良くお出かけしているようで....💕🤭 ラブラブで幸せそうな熟年カップル、良いなぁ~💑 今度は俊さん&雪子さんの番だね~❣️ 俊さんは 雪子さんに、どんなプロポーズをするのかな⁉️✨💍✨ 楽しみです💖🎶

ユーザー

元妻麻美さんの結婚式に俊さんとペアで参加の俊さんと雪子さん✨ 俊さんのアドバイスを間に受けて、麻美さんにお呼ばれした加藤さんと奥様も仲良さげで、熟年離婚回避できたのも俊さんのおかげだよ〜🤭💕 俊さんはすっかり雪子さんにベタ惚れだし、加藤さんもなんだかそうなりそうな雰囲気🆗🙆💝 次は俊さんと雪子さんの番ですね👰‍♀️⛪️💝 俊さんのことだからステキな心に残るプロポーズ❤️をしてくれると大いに期待大⤴️⤴️✨✨😍

ユーザー

加藤さんったらꉂ😆焦ったんだね〜捨てられちゃうって!!! これを機にまた新しいお付き合いも始まりそう✨ 熟年バンザーイ(ノ*>v<)ノ ヽ(*'v'ヽ)ハイターッチ!! 次は俊さんと雪子さんよねー💝⁉️ プロポーズ…どんな捻りをきかすのかな〜(˘꒳​˘ ก)💭💭💭

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