やがて年が明けた。
雪子の家の改築工事はお正月休みを挟んだ後の年明けも続いていた。大まかな所はほぼ完成しあとは店内の細かい造作やウッドデッキを残すのみとなった。
そして今日1月11日は雪子の誕生日だった。
俊は雪子を食事へ誘ったが雪子が俊の家で過ごしたいと言ったので、俊はイタリアンレストランからテイクアウトの料理を買って来てくれた。今夜は俊の家でゆっくりと誕生日を祝う事にする。
俊が買って来たイタリアンはどれも美味しそうだ。誕生日用の料理を注文してくれたので見た目も華やかでどれも美味しそうだ。
店からはサービスでティラミス風のミニケーキもついていた。雪子はちょうどティラミスが食べたかったので喜んだ。
テーブルセッティングは全て俊がやってくれた。その間雪子はソファーで寛いでいる。
準備が出来ると俊は雪子に声をかけた。
二人はシャンパンでおめでとうの乾杯をすると早速美味しそうなイタリアンを堪能する。
そして食事の後にはティラミスにろうそくを灯して俊がハッピバースデーの歌を熱唱してくれた。
ケーキを食べ酔い覚ましにコーヒーを飲んでいると突然俊が言った。
「さあて、このリビングの中には雪子へのプレゼントが置いてあります。見つけたらプレゼントするぞー」
「えーっ? こんなに広い部屋じゃ簡単には見つからないわーずるいー」
「つべこべ言っている暇があったら頑張って探しましょう」
俊はからかうように言いうと雪子は頬を膨らませながらしぶしぶ探し始めた。
雪子はリビングの端から探し始める。まずは観葉植物の根元を探してみるが見つからない。
次にテレビが置いてある場所へ行きテレビの裏側を念入りに見ている。しかしそこにもない。
そこで雪子が聞いた。
「大きさはどのくらいですかー?」
「秘密でーす」
俊はニヤニヤして答える。
「ずるーい、少しくらい教えてくれてもいいのにー」
雪子は再びほっぺたを膨らませながら今度はソファーの周りを探す。クッションをどけたりリビングテーブルの下を覗き込んだり一生懸命探してみるがそこにもないようだ。
残るは壁際の作り付けの棚が怪しい。しかし棚の数があまりにも多過ぎて探すのが大変そうだ。
「まさか本の間にはないわよね?」
「うーん、さすがにそれは仕込みにくいな」
「じゃあ飾り棚の部分かなぁ?」
雪子は本がない飾り棚の部分を一つ一つチェックしていく。
現代アートが飾ってある場所にはそれらしきものはない。残るは鉱物類が飾ってある棚だ。きっとそこに違いない。
そう思った雪子は鉱物類の棚を一つ一つ見ていった。
その時サンゴの化石の上に光る何かを見つけた。
「!」
雪子が近付いてみるとサンゴの化石の上には一粒ダイヤの美しい指輪が置いてあった。
ダイヤのサイズはかなり大きくそのクリアな輝きからはかなり上質なものだという事がわかる。
雪子はびっくりして俊を振り返った。
「見つかった?」
俊は甘い声で囁く。
「コレ?」
「当たり!」
「……….」
雪子はびっくりして思わず言葉を失う。
誕生日にアクセサリーをプレゼントされるかもという事は想定していた。
ただ2人は付き合い始めてまだ間もないので普段使い出来るようなもう少しカジュアルなものを予想していた。
しかし目の前にある指輪はどう見てもエンゲージリングだった。
雪子が戸惑っていると俊が傍まで来て指輪を手に取る。そして雪子の前に跪き右手を差し出した。
「シンデレラ、どうか君に夢中な王子と結婚して下さい」
言葉はふざけた調子だが俊の顔は真剣そのものだった。それは雪子が今までに見た事のない表情だった。
「雪子?」
「えっと…びっくりしちゃって」
「俺は雪子と会った時からこうなりたいと思って付き合い始めたんだよ」
「え? そうなの?」
「ああ」
「私なんかでいいの?」
「雪子だからいいんだよ」
「これからカフェをオープンして失敗するかもしれないのに?」
「潰れないように俺が毎日通うさ」
「えっと、私には大きな息子もいるのよ?」
「俺は昔息子が欲しかった時期がある。だから夢が叶って嬉しいよ」
「あ、でも和真がなんて言うか…反対されるかもしれないし」
「和真君にはちゃんと許可を貰ったよ。昨夜東京で食事をして来た、和真君の彼女も一緒にね」
「えぇっ? 昨日東京へ行くって言っていたのはそれだったのね! ずるーい私も行きたかったー」
「ハハハ、また改めて席を設けるよ。和真君の彼女はとっても素敵なお嬢さんだったよ」
雪子は驚いていた。
俊は雪子にプロポーズする前に和真から許可を取っていたからだ。
和真からは何も言ってこないのできっと俊から口留めされていたのだろう。
そこで俊がしびれを切らしたように言った。
「で、シンデレラさん、君は王子と結婚してくれるのかい?」
俊が再び雪子の事を『シンデレラ』と呼んだので雪子の瞳には涙が溢れてくる。
「王子様なんて…いないと思ってた…….」
「いや、いるのさ」
とうとう雪子の瞳からは涙がこぼれ落ちてきた。
「でも白い馬には乗っていないのね……」
雪子は涙を拭いながら言うとフフッと笑った。
「白馬に乗った王子様がいいなら今から乗馬クラブに行くけど?」
「ううん、嘘よ、乗らなくていいわ」
「で、返事は?」
俊がもうこれ以上待てないといった顔で聞くと雪子が答えた。
「その指輪がガラスの靴の代わりよ。もしサイズが合えばプロポーズを受けてもいいわ」
雪子は泣き笑いをしながら言った。なぜそんな事を言ったのか自分でもわからないが勝手にそんな言葉が口をついて出る。
俊はフッと微笑むと雪子の左手を取り薬指へ指輪をはめた。
するとダイヤモンドの指輪はまるであつらえたように雪子の指へピタリとはまった。
それは王子が贈ったガラスの靴がシンデレラの足にピタリとはまった瞬間だった。
コメント
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うっぅぅぅ....。・(つд`。)・。♡♡♡ もぅ~俊さんったら....。・゜・(ノД`)・゜・。 王子のロマンティックなプロポーズに 涙が止まりません👑✨💍✨ 雪子さん、俊さん、おめでとう!!!👸🤴💐🎉 幸せになってね🍀✨
。゚( ゚இ艸இ゚+)゚。・゚✧うぅぅぅ… 俊さんそれ〜:*:✼✿ 💎💍💎。゚:*:✼.。✿.。