「父……さん?父さん……だよね?」
俺は今いるこの状況に戸惑いつつも目の前にいる父とおぼしき人物に声をかけた。が、その人は黙り込んだままだ。
「ねぇ、父さん……ここはどこなんだ?ってか、なんでここにいるの?」
なんでだ?ずっとうつむいたままだぞ?
「父さんってば!!なんかいっt」
パチン
「えっ?」
なんだ?何が起こった?急に左の頬にジーンという痛みがきた……俺……ビンタされたのか?
「いきなり目の前に現れたと思ったら黙り込んで、こっちが喋ってる間にビンタなんて、いったいどうなってる……って……」
俺の怒りはそこで完全に消失した。顔をあげた父の頬には涙が流れていたのだ。
「どうなっている、だと?お前がどうなってんだ!」
「?!」
その瞬間、父から聞いたこともないような怒号が俺の耳を貫いた。
「俺は、俺はな!!お前に少しでも好きに生きて欲しいんだよ!!それなのに……それなのにお前は!!」
「分かってるよ……でもな、父さん……分かってくれ。もう嫌なんだ。味方はいない、特技があるわけでもない、運も無い、俺にはなんにもないんだ。」
「それがお前のしたいことなのか?」
そう言われたとき、俺の思考は凍りついてしまった。死ぬことが、俺のやりたいこと?そんなはずは無い。ないのに……なぜ?なんで俺は死にたい?俺がなにも持ってないから?いや、持ってないやつはこの世界腐るほどいるだろう。俺以上に持ってないやつも。そんなやつも生きている。路を歩いている。じゃあ俺はなぜ死にたい?考えてみれば理由なんてなかったんだろう。ただ俺は……
「少しずつ考えがまとまったみたいだな、路。いいか?逃げるのは簡単だ。いつだってできる。いつだって死ねる。でも進むっていうのはできるうちにやらないといつか路が塞がれてできなくってしまう。分かるな?何も自分から路を塞ぐ必要はない。少なくとも今は、な。だからもう少し自分の路の先を見てみないか?」
「あぁ。そうすることにするよ。ありがとな、父さん。」
「ああ、よし、もういいか!!そろそろお別れだな。」
そう言うと父さんは淡い光をまとい始めた。
俺はあえて何も言わなかった。知っていたから。楽しいことはあっという間だということも、出逢えば別れるということも。
「路!!お前は逃げるんじゃないぞ!!後悔することになるからな!!最後まで闘え!!またいつか、あの世で逢おうな〜!!」
そう言うと父さんは日光に紛れて消えてしまった。俺は返事をすることは出来なかった。だって俺の頬には涙が流れていたから。
コメント
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最近投稿遅くてすいません!! 夏休みはもう少し頑張れたらと思います……