コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『ねぇ、君は誰の奥さん?』
胸がキュッと苦しくて、短い呼吸を繰り返してしまう。
『カ、カイルの…… 奥さんですっ』
『そうだよね?——なのに君は、僕の目の前で堂々と何をしたの?』
カイルの声が明らかに怒りで満ち、嫉妬心を前面に晒す。
『サビィルはあれでも、妻も子もいる一家の長だ。そんな相手とイチャイチャするって、もう完全に不倫じゃない?』
新情報に一瞬我に返り、『白梟一家とか、絶対に会いたい!』と心の中だけで叫ぶ。…… でもすぐに、私の首に彼が付けた物をくっと引っ張られた事で、私はカイルのおこなう行為へと意識を引き戻された。
『ふ、不倫だなんて、そんな…… 』
白梟と戯れただけで不倫扱いとか、意味がわからない。
『まだそんな事を言うの?だからこんな物を僕に着けさせられたって分かってる?』
カイルの言う“こんな物”とは、私の首に彼が着けた“首輪”の事だ。
革製かと思われるソレは、カイルが私に、怒り任せにベッドへと引き込んだ途端に魔法を使って着けられた物だった——
私と白梟のサビィルは、初めましてな再会を本日果たした。
あの後も、暫くの間脇目も振らずにサビィルと二人で戯れあっていたら、カイルが段々と黒い目を羊の様な瞳へと変化させていった。どうやらこれは、カイルが我を忘れる程の心理状態になると起きる変化みたいだ。
そうなった彼は行動が極端になり、全てを私にぶつけてくる。だが暴力的なものでは無い。今までのものは全て性的に、なのだが…… 。それが救いなのか、困った事なのかは微妙な所だ。
周囲の状況も何もかも無視し、カイルはサビィルに仕事へ戻る様命じると、即座に私を二人の寝室に引き込んだ。ハクとウィルを招いての夕食予定など、もうきっと覚えていないと思う。
横抱きにされていた私の体を投げる様にベッドに下ろし、彼も上がってきた。
「何をしたのか、わかってる?——ねぇ」
カイルにキッと睨まれ、私は慌てた。怒らせる程の事では無いと思っていた。不機嫌そうな顔には気が付いていたが、『不貞腐れているな』程度にしか考えていなかったのだ。
困惑し、ベッドの上で上半身を起こしてカイルを見上げる。するとカイルは私の首を、片手で締めるみたいな仕草をしてきゅっと包んだ。
「イレイラ、いいかい?君は僕の妻だ。サビィルの妻じゃ無い。君はそれがわかっていない。わかっていないなら、わからせないといけないよね?」
「わかってますよ、ちゃんと——」
彼が何をしたいのか想像出来なくて少し怖い。乱暴はされないとわかっていても、少し体が震えてしまう。
そんな私の様子をカイルが見つめ、スッと目を細めた。 次の瞬間、私の首を包む彼の手が光を帯び、カイルが魔法を使った事がわかった。白い光が段々と首に集まり、茶色い色へと変化し、皮っぽい質感へ姿を変える。 光が消えてカイルが手を離すと、私の首には大型犬が使う様な首輪が残されていた。
「…… く、首輪?」
出現したそれを引っ張り、留め具を探して反射的に外そうとしたら、カイルがそれを止めた。
「イレイラは僕の妻だって証を外そうとか、何ふざけた事してるの?」
低く、唸る様な声でカイルが不満をもらす。
「ちがっ、そんなつもりじゃな——」
続きの言葉が、カイルの唇に遮られた。互いに目を開けたまま、見つめ合ってのキス。そのまま舌を舐め上げられ、体から力が抜けた。瞳がトロンと溶け、瞼が落ちていく。目を瞑り、貪る様な口付けに懸命に応える。 舌が絡まり、端からは飲み込みきれなかった唾液が零れ落ち首を伝った。カイルが私の頰に触れ、満足げな吐息を吐き出しながら、ゆっくりと離れる。
「…… イレイラ、君が愛しているのは…… 誰?」
真剣な声で問われた。もちろん、カイルだ。迷う事など微塵も無い。
「…… カイ、ル…… れふぅ」
抜ける力のせいで上手く言えない。でも、ちゃんと伝わったみたいだ。カイルが嬉しげに微笑んでくれた。 私の濡れる唇を、カイルが指先で拭き取り「いい子」と褒めてもくれる。
「いい子で、こんなに魅惑的で…… 淫靡で…… ホント、堪らないね」
最初は優しい笑みだったはずが、次の瞬間には蠱惑的とまで感じる色香を放ち、私の身も心も魅了する。
あぁ、ホントずるいなぁ…… 神子ってば、どうしてこうも美形揃いなんだか。
何度も感じる不公平感に眉を寄せていると、カイルはそんな私の背後に腕を伸ばしてドレスを脱がし始めた。魔法など使わずに、ゆっくりと、わざと羞恥を感じさせるかの様に。
「さて、イレイラは僕に…… どうされたい?」
首を傾げながら私に問う顔が、口元が弧を描いていてひどく意地が悪そうだ。恥ずかしさに顔を真っ赤にする私の様子を見て楽しんでいるのだろう。
答えぬまま顔を逸らす。首には犬みたいに首輪を着けられ、着ているのは上下の下着のみ。そんな状況でどうされたいかと言われても返答に困る。かといって、この状態のカイルから逃げる事は今の私ではまだ出来ない。一向に魔法などが使える気配が無いのはきっと、『魔法はお話の世界』という固定観念が捨てられないままだからだろう。
「『どう』と…… 言われても」
答えが見付からず困惑の声をあげると、カイルが不満げに少し目を細めた。
「仕方ないか、イレイラは照れ屋さんだもんね。自分からお願い…… 出来ないもんね」
つつっとカイルの指先が、私の肌を滑る。首から始まり、鎖骨や胸の膨らみ…… 首輪を上手く避けながら、熱を帯びた指先が段々と私の胸を覆う下着へと迫ってきた。
じわじわと体温が上がり、呼吸が乱れる。もう上手く息が出来ない。
「ねぇ、君は誰の奥さん?」
胸が苦しくて、短い呼吸を繰り返してしまう。
「カ、カイルの…… 妻ですっ」
ペタンと女の子みたいにシーツの上に座る私の前で、膝をついて座るカイルが言葉を続ける。
「そうだよね?なのに君は、僕の目の前で堂々と何をしたの?サビィルはあれでも、妻も子もいる一家の長だ。そんな相手とイチャイチャするって、もう完全に不倫じゃない?」
不意に首輪を引っ張られる。
「ふ、不倫だなんて、そんな…… 」
「まだそんな事言うの?そんなんだからこんな物を僕に着けさせられたって分かってる?お仕置きとご褒美なら…… どちらがいい?照れ屋さんの君でも、二択なら選べるよね?」
指先で、下着の奥で既に硬さを持ってしまっている胸の尖りを弾かれた。
「ひぅっ!」
刺激に驚き、声があがる。
「んー?」
促すような笑みを浮かべながら指先が下着越しのまま胸の尖りをクリクリと弄る。どうせお仕置きも、ご褒美も結果は同じに決まっている。でも選ばないままでいたら、このまま半端な愛撫をいつまでも続けるつもりなのだろう。
「…… ご、ご褒美の方がいいです」
発した声が掠れた。
「偉い子だね、愛してるよイレイラ」
私に頰を寄せ、満足げにカイルが囁く。胸を覆う下着の中に掌が入り、胸を揉む。形が変わるくらいに、でも痛みのない様に。不意に彼の肌が尖りに触れて甘い声がもれてしまう。
「くっ…… んぁ」
何度経験しても、出そうになってしまう声を堪えてしまう。快楽に身を堕とし、はしたなく声をあげる事に対しての抵抗感が捨てられない。もっとも…… 何度も絶頂を、連続で与えられてしまった後ではもう、その限りでは無いのだが。
「声、聴かせてよ。甘美な色を帯びた音楽みたいで僕は好きだよ?」
首を必死に横へ振る。そんな私の反応すら楽しみながら、カイルが下着をずり下ろして胸の尖りを口に含んだ。吸いつき、優しく噛み付く。口元を両手で押さえ、私は快楽にあげそうになる声を我慢した。
「強情だねぇ?じゃあこれだと、どう?」
ゆっくりとした動きでカイルが私の太腿を撫で上げる。ショーツを目指し、迷う事なく手が近づいてきた。慌てて両方の太腿を閉じようとしたが、先にカイルの手が秘部へと辿り着いてしまった。軽く指を動かし、彼の指が陰裂を撫でる。既に蜜がドロッと溢れていたソコはもう、太腿をも濡らし、シーツにまで蜜が垂れ落ちていた。
そんな事は触れる前からもう既に知っていたのか、カイルが嬉しそうに笑みを浮かべながら私の背に手を添えて横に寝かしつけてくれる。
「可愛いね、ホント…… イレイラは可愛い」
コロンッと私を転がし、私をうつ伏せにさせる。無防備に晒される私の背やお尻に、カイルが啄む様なキスの雨を降らせてきた。それとともにショーツへ再び彼の指が触れ、布を避けて陰裂を直接撫でる。蜜の絡む指が肉芽をも撫でつつ、浅く出入りを始めた。クプクプとたつ水音と快楽に体が跳ねる。体が淫靡に震えるたびに胸の尖りがシーツに擦れてちょっと気持ちいい。浅い呼吸を繰り返しながら、勝手に腰が卑猥な動きをしてしまう。
「はぁはぁ…… んんっ」
浅い箇所の撫でる指に刺激に物足りなさを感じ、自分から彼の指がより深く入り込んでしまうようにと動いてしまった。膣をも蠢かせ、ググッとナカへ指を引き込む。
「あぁぁぁっ!」
自ら引き入れておきながら快楽に声をあげた。それと共にくる、快楽の波。大きなそれに一気に引っ張られ、私は簡単に絶頂を受け入れてしまった。
ビクビクと震える肩と収縮する膣内。全身からブワッと汗が溢れ、自らの体を濡らす。
くぷっと音を立て、カイルが私のナカから指を引き抜く。その刺激にすらビクッと体が反応してしまった。
興奮し、カイルの呼吸がひどく荒いのが気配でわかる。
しっかりと着込んでいる司祭服を、彼が裂き捨ててしまいそうな勢いで全て脱ぐ。そして私の腰を掴み、己の方へ引っ張った。
動物の交尾の様な体勢をさせられた事に、私は羞恥の声をあげる。
「いやっ!——こ…… んなっ」
「どうして?絶対に気持ちいいよ?」
「は、はずか…… しぃ…… ですぅ…… 」
恥ずかしさから瞳に涙が溢れ、今にもこぼれそうだ。
カイルの剛直がお尻に当たり、彼がソレを私の体で挟む様にして擦り付けてきた。体格差のせいで膝が浮き、体勢が不安定だからか少し怖い。
陰裂と肉芽とにカイルのモノが擦れ、蜜が絡まり合いでグチュグチュと音がたつ。
「こんなに濡れているとこのままアッサリ挿入ってしまいそうだね。それとも…… もう欲しい?」
聞かないでと叫びたい。達したばかりの体にはこれ以上は厳しい。でも…… 彼から貰える快楽を深くまで刻み込まれているこの体は残念ながら心に反して正直だった。
秘部をヒクつかせ、彼の切っ先が擦れるたびにナカに欲しいとおねだりしてしまう。
「あはは…… 『欲しい』って言っているね、ココは」
膣内に少しだけカイルの剛直が挿入り、浅瀬を擦る。それを引き込む様に、更に私のナカがビクビクと動いた。ゆっくりと、でも——最奥に彼が挿入ってくる。
「あぁぁぁ…… 」
広がる陰裂にぐっぽりとカイルの剛直が収まっていく。本来なら、この体格差のせいで挿入る筈がないモノが挿入っていく様子を前にして、彼がウットリとした顔をしながら私の肌を撫でた。その表情から目が離せない。だって、本当に幸せそうだったから。
「すごいね、何度見ても。あぁ…… イレイラと一つになれるなんて」
奥まで到達したモノを引き出し、また突き上げる。普段と違う位置への刺激が、ゆるい動きでも心地いい。
「んあぁっ!んんっ!」
奥を、もっと奥をと動くカイルが快楽を求める。段々と動かす速度が早くなり、肌のぶつかり合う音が蜜音と共に部屋に響く。
「気持ちいいんだ?ねぇ…… こんな首輪なんか着けて、しかも獣みたいな格好なのに君まで腰が動いているよ?」
言われるまで気が付かなかった。でもそんな事どうでもいい。
もっと、もっと欲しいと体が揺れる。体位を変えさせられ、カイルの剛直が挿入ったままなのに横向きにさせられた。片脚を持ち上げられ、また彼が背面近くから突き上げてくる。体の下を通り、私の前に伸ばす手に胸を揉まれ、尖りを摘まれた。
カイルの荒い呼吸音が頭上から降り、絶頂が近づく。
「いい、いいよ…… 本当に、君は最高だ」
その言葉には答えられなかった。もう意味の無い音しか口から出てこない。貪欲に求める気持ちが、動きが止まらない。互いに快楽をただ無心で求める。
——思考が真っ白になる瞬間が、目前だ。
体が震え、私はシーツにしがみ付いた。
「イッていいんだよ?」
そうカイルが囁き、私の耳を指先でそっと撫でられた瞬間、思考が一気に溶けた。
同時に最奥に感じる彼の剛直が質量を増して弾ける感覚が全身に走る。体の奥がとても熱い。ビクビクッと彼のモノが膣内で震え、膣壁が彼が与えた白濁を逃すまいとでも言いたげにぎゅっと締まった。
「…… 参ったな、こんなに早く持ってかれるなんて」
力が入らず、もう体力の限界である私の背後でカイルがため息をついた。
「でも、気持ちよかったからいいか」
私の脚をカイルがそっと下ろして、私の頭を優しく撫でる。満足げに私の肌の上を彼の手が滑っていると、首に着けられていた首輪が砂の城が崩れるかの様に形を失い、消えていく。その様子を見て私は『具現化していたカイルの嫉妬心が、消えていったみたいだな』と、ちょっと思った。
だが、その後も夫婦の営みは続きに続き、翌朝になってやっと解放されるという予想通りの展開になり、私は太陽の下であくびを咬み殺す事となる。
——そして思った。『サビィルとのおふざけは当分控えよう』と。嫉妬心をありのままぶつけられるのは…… しばらく勘弁して欲しいから。
【番外編・② 完結】