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からくり時計
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#王子
すっこ
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雨の降る夜だった。人間のふりをして暮らす吸血鬼、ジユンは、人間の血を飲まずに生きる方法を探していた。
人間の街に紛れ込んで、もう何十年も経つ。
黒い傘。冷たい指先。誰にも見せない鋭い牙。
そして、人間よりもずっと長い時間を生きてきた、空っぽの心。
「……つまんないな」
ジユンは濡れた前髪をかき上げ、路地裏の壁にもたれた。
人間はすぐに死ぬ。
どれだけ大切に思っても、どれだけ愛しても、いつか必ず自分を置いていく。
だからジユンは、誰とも深く関わらないと決めていた。
その夜までは。
「……あの、すみません」
小さな声がした。
振り向くと、街灯の下にひとりの少女が立っていた。
白いワンピース。雨に濡れた髪。手には、折りたたみ式の白い杖。
少女は不安そうに顔を上げていた。
「駅に行きたいんですけど……道がわからなくなっちゃって」
ジユンは一瞬、言葉を失った。
少女の瞳は、こちらを向いているのに、何も映していなかった。
盲目なのだ。
「……君、ひとり?」
「はい。サクラっていいます」
彼女は、見えないはずなのに、なぜか安心したように微笑んだ。
「あなたは?」
「……ジユン」
「ジユンさん。助けてくれますか?」
普通の人間なら、こんな夜に見知らぬ男を警戒する。
けれどサクラは、彼の手が差し出されるのを静かに待っていた。
ジユンは迷った。
自分の手は、死人のように冷たい。
心臓だって、人間のようには動かない。
それでも。
「……こっち」
彼は、そっと彼女の手を取った。
「手、冷たいですね」
サクラが小さく笑った。
「そう?」
「はい。でも、嫌じゃないです」
その言葉が、なぜか胸の奥に刺さった。
何百年も忘れていた感覚だった。
誰かに触れられることが、怖くないと思ったのは。
コメント
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雨の夜、冷たい手を持つジユンと盲目のサクラ。静かな出会いがすごく沁みました。「手、冷たいですね」「でも、嫌じゃないです」のやり取り、何百年も誰とも関わらないと決めた彼が"見えない相手"にだからこそ手を差し出せた——その構図がもう切ない。血を飲まずに生きる方法を探す設定も気になります。第1話で二人の距離の予感がちゃんと立ってて、続きが楽しみ🔥