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25話 魔王グッズ
広場の隅で
魔王グッズ市が開かれていた
ふっくらは丸い体を揺らしながら
わくわくした様子で棚をのぞき込む
短い脚が左右に落ち着かず
腹は興奮でふよっと前へ突き出ている
「見て琶!ほら!
魔王のキーホルダー!
魔王のぬいぐるみ!
魔王の……よくわからない棒!!」
琶が隣に立つ
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼が影を落とし
爪先が淡々と棚の端に触れた
ふっくらは目をきらきらさせる
「かわいい〜……
このぬいぐるみとか、
ちょっと本物よりやさしい顔……」
琶
「……比較対象を間違えるな」
ふっくらは困るほど迷っていた
ぬいぐるみを手に取る
戻す
キーホルダーを取る
戻す
棒は持ち方すらわからずすぐ戻す
「どうしよ〜〜〜!
全部ほしいけど……
全部こわい気もする〜〜!!」
琶は無言で棚をひと通り見て
キーホルダーを一つ選んでいた
ふっくら
「えっ!?
琶だけ!?!?
わたし迷ってるのに!!
なんでその即決!?」
琶
「……選ぶ必要がなかった」
ふっくら
「どういう意味!?
どういう意味なのそれ!?」
琶が購入したキーホルダーを
ふっくらはのぞき込む
魔王を模した小さな金属……ではなく
鉄鋼の飾りがついている
ふっくらはじっと見る
「なんか……
目が、動いた気が……」
琶
「気のせいだ」
(気のせいではない)
ふっくらは再びグッズ棚へ向き直る
「わー!!
このステッカーかわい……
いやかわいくはない……
たぶんかわいさを装ってる……
だまされるところだった……」
ふっくらは迷い続けたが
結局何も買わなかった
「今日は見るだけにする……
心の準備が……丸に追いついてない……」
琶は軽くうなずき
キーホルダーを袋ごと持ち上げる
帰る途中
ふっくらはぽつりと言う
「……ねぇ琶。
あのキーホルダー、
買ってよかったやつ?」
琶
「……ふっくらよりは似合う」
ふっくら
「わたし基準!?
似合う似合わないって何!?」
歩きながら
琶の持つ袋の中で
キーホルダーの鉄鋼部分が
かすかに鳴った気がした
ふっくらは気づかず
丸い体を揺らして歩いていった