テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1,692
第3話無意識
あの事件以来、俺は琉生を避けるようになった
別に嫌いになったわけじゃない
でも、あのままの距離でいたらいつかこの距離を間違えてしまいそうで
壊してしまいそうで、傍にいられなかった
なんて自分勝手な行動だろう、と自分自身を非難する
時間的に毎朝校門の前で琉生と会う
だから俺はいつもより早く家を出た
琉生に会った時、理性の糸を切らないでいられるか、不安だ
俺は恋愛初心者ではないのに、まるで初恋のように、こんなにも初心でいる
だからこそ、冷静さが消えないか心配なのだ
そうこうしているうちに、校門前についた
誰もいない桜木が枯れた道のはずなのに、
そこには琉生がいた
「あれ?清水?」
昇降口に入る寸前のところで俺の方を向く
「なんで今日はこんなに早いんだ?」
痛い所を突いてくる
(お前に会った時、怖ぇからだよ)
なんて口が裂けても言えない
『そっちこそ、どうしてこの時間に?』
質問に質問を返す
「僕は委員会の活動があるからだよ」
琉生はたしか風紀委員だったな…、と思い出す
『風紀委員様は大変だな』
皮肉っぽく言う
「なんだよ様付けってw」
琉生がくすくすと笑う
その笑顔が眩しすぎて、見ていられない
壊したらどうしようって、その輝きを穢したりしたらどうしようって、いつも心の何処かで思ってる
でもそれと同じくらい、壊したいって、その身をこの腕の中に収めておきたいって思ってる
矛盾すぎて笑えてくる
「清水は?」
先ほどの質問をされる
『…まあ気分だよ』
言い訳が思いつかなかった
仕方なしに、気分と抽象的な事を言う
「なんだよそれ、w」
苦笑い
つられて俺も苦笑い
こんな日々がずっと続けばいいなって思う
朝琉生を避けようとしていたことさえ忘れて、いつものように接してしまった
気づいた時には帰り際
「ほら、早く行かないと電車来ちゃうよ?」
琉生はきょとんとした顔で、昇降口に立っている
『あ、ああ今行く』
ぎこちなく返事
意識しないとなれば全然余裕なのに、何故か顔を見るたびに顔が熱くなる
…いや、もしかしたら__…
と、琉生の唇に目をやる
カアァァと、一気に赤面してしまったことが容易にわかった
『っ…、』
(マジでやべぇ…)
心の中では思っていてもいざ避けるとなると心が痛む
そのまま何もできずに琉生の隣を歩く
「清水、どうしたんだ?」
「今日ちょっと様子が変だぞ…?」
指摘されて、心臓がはねる
『何が?』
嘘を貼り付けた顔で微笑む
「い、いや…なんでもないならいいよ」
その表情に驚いたのか、戸惑いの声と共に言葉を放った
(あぶねぇ…)
琉生に見られないように、駅まで続くフェンスの方を向く
茜色の空が綺麗な琉生の横顔を照らす
その美しさに息を呑む
本能が壊れかける
本当にやばい
なんとか理性を保ったまま、駅のホームで待つ
「清水、さっきのこと本当に何でもないの…?」
じろじろと、疑いのまなざしを向けてくる
その可愛さに負けて、口を開いてしまわないか心配だ
『本当に何もないよ、』
漫画なら汗マークが付いているような状況だ
俺は明日の方を向き、それに対して俺からじっと目を逸らさない琉生
そんなにじろじろ見ないでほしい…
そんな目で見られたら、あんなことやこんなことを想像してしまう
あられやしない姿を妄想してしまう
(……うん、これはこれで美味しい)
なんて自分が想像したことに対し、感想を言う
ポジティブな思考でまだ自分が耐えられることを知った
限界が来ることがもしあれば、その時は自制なんか効かないだろう
「本当に…?」
さっきよりも疑っているように見える
『はぁ…本当だよ』
『信じてくれ…』
少し呆れ顔で言ったからか、琉生は少しおろおろとした表情で「ごめん、…信じるよ」と一言
その後はやけに電車が来るのが遅く感じた
静かなホームに二人きり
何か起こる__わけもなく、そのまま電車に乗った
意外にもこの時間は混んでいる
だから毎日座席の取り合いが始まる
俺等はそこに混ざれるほど元気ではないので、立ったまま揺れに耐える
「本当にこの時間の電車って混んでるよね…」
「丁度学生の帰宅ラッシュと被るからかな…?」
琉生ざぼそっと言う
『そうかもな』
つられて返事
次のホームに止まった時、大量の人が流れ込んできた
『うわっ、!』
ぎゅうぎゅうに押されて、扉付近に立っていた俺等は身動き一つ取れない状況に
『人すげぇな…、琉生大丈夫か?』
何気なく琉生の方を見る
すると、押された反動か琉生が俺の腕の中にいた
俺はと言うと、扉に壁ドンするような形で琉生を間に入れている
(……まあ、琉生からしたら転ぶ心配も押される心配もないわけだが…)
それにしても近い…
距離ゼロ
この満員電車の中で、大きな揺れが襲いかかってくる
『ぅわっ!』
ぐらっと揺れる
すると、揺れた腕に少しばかりのぬくもり
顔を定位置に戻すと、腕にしがみついた琉生
「…倒れちゃうでしょ、」
俯いて言う
(…何この可愛いの)
『なに、心配してくれてんの?』
にやにやと意地悪く笑う
「なっ、!ちがうし…」
一瞬上げた赤ら顔は、すぐに戻され、見えなくなる
『っ、そうかよ、』
やばい、やばい
理性が欲に呑まれる
この手の中の物をぐちゃぐちゃに壊してやりたいって、思ってしまう
この関係がもどかしくて、意地悪で、俺にとっての冷静だ
だからこの距離感を間違えてはいけない
(わかっ、てる…のに、)
わかってる、わかってるよ
大丈夫、きっと
まだ抑えられる
だから、少しくらいは許してよ
ぐいっと琉生の頭を自分の肩に乗せる
さっきまで淋しくて、冷たかった肩が段々と暖かくなっていく
「…!?」
少しフリーズした様子で、驚き始める
『もう少し、このままで』
耳元で囁く
『駄目?』
意地悪なことを聞く
すると、負けたかのように大人しくなり、ふるふると首を振る
(はあぁぁ…)
大きな吐息を心の中で漏らす
昨日から、溜息ばかりだ
こいつに振り回されてばっかりだ
避けようとして、近づいて
矛盾ばかりのこの恋
知らないことだらけのこの気持ち
もう少し、もう少しだけ
こいつに恋しててもいいかな
[まもなく光ヶ丘です]
[お出口は右側です]
[手を離してお待ちください]
ホームに電車が止まると同時にするりと腕から抜けていく琉生
まってと、口にしたい
離れてほしくないと、伝えたい
が、ぐっと堪える
「ま、また明日……、//」
ホーム人の流れに逆らって、電車の中にいる俺に言う
少し俯き顔で、照れているのか耳が赤い
『…おう、』
(こっちまで照れちまうだろ…、//)
素っ気ない事を言っただろうか
でも許してほしい
これは俺の照れ隠しなのだ
少しずつ走り出す電車の中で、ホームでしゃがみ込む、耳の赤い琉生が見えた
次回第4話⇒文化祭
コメント
33件
雪が綺麗と笑うのはキミがいい〜